202号室にはもう来ない。
本当に私はバカだなと呆れたけど、
気が付いたら急いでシャワーを浴びていた。
去年どうしようもなく好きだった男タカハシから一年ぶりに連絡が来た。
1ヶ月前酔って連絡した朝、自分を恨みながらラインを非表示にして削除したばかりだった。
何度も連絡を無視されてもう私には会うつもりがないのだと思っていた、タカハシ。
タカハシに会うためにつけていた香水も無くなりそうだった。懐かしい匂いを振りまいて出かけた。
部屋番号を忘れている自分に驚いた。
202号室はなぜか懐かしいにおいがしなかった。
どこかに名残はあるけれど一年で柔軟剤もボディソープも何もかも、変わってしまったのだろう。
久しぶりのタカハシは太ってお腹が少し出てた。
「ムラムラしてるから来ない方が良いかも」
は来て欲しいに聞こえたし、タカハシにとって私がムラムラしてないと連絡しないような相手だということはわかっていた。
タカハシには何度もあったけど、1度しか抱かれたことがない。
深夜1時近くだった。
ムラムラした男に会いに来た自分が淫乱で笑えた。
一年ぶりの、大好きだったタカハシ。
生ぬるい唾液の混じったキスはなぜかハムの味がして困惑した。
「そんなに俺と会いたかったの?」
「こんなにえっちだったっけ?」
最大出力の電マを本気で嫌がっている私にも気付かないで、
自分はよがる。
ねえこれちゃんと、洗ってるの?
「ホラ、ここすごくなってるよ」
「1人でしたりするの?教えて、興奮する」
「セフレって言葉に最近、すげえ興奮するんだよね」
獣みたいな喘ぎ声で腰を振るタカハシを見上げながら、
何となくおっさんくさくて心の中で泣いた。
わたしが記憶していたタカハシは、
もっと優しくて、聞くのも話すのも得意で。
映画が好きで、余裕に見せるのが上手で。
俺追いかけられるの好きだよ、って言っちゃうような
好きでいていいよって、わたしの気持ちを踏みにじるような
年はあまり変わらないのに私のことを酷く子供に見ている
そういう男だった。
ああ、そういう男だったんだった。
どんどん冷めていく気持ちとは裏腹に、私の体は火照っていた。
タカハシの体温を全身で感じながら、暖房の風が私たちを気持ち悪く暖めた。
汗をかいていた。
あつくてたまらなかった。
あの頃より確実に太った背中をきつく握りながら目をつぶって抱かれた。
わたしにはゴムをつけてくれないところも、
だらしない唇も、変わってはいなかった。
明らかに欲情しているタカハシの目を見れなかった。
そういえばコイツはらんぼうなセックスが好きだった。
ぐちゃぐちゃのキスで唾液を飲まされた。
もちろんわたしの下着など見てもくれなかった。
邪魔な物であるかのように扱った。
このレースの下着、超可愛いんですけど。
可愛いわたしのことも、きっと見てはいなかっただろう。
ああもう、大丈夫だ。
これでもう、酔っ払って美化されたタカハシを思い出すこともないだろう。
一年前タカハシが好きだったなと、きちんとはっきり覚えている。
その気持ちは化石になって、あの時と同じ柔軟剤や香水に、あの頃よく聴いていたビッケブランカに、あの日一緒に見た映画にきちんと宿っている。
高くて綺麗な鼻筋と長くて白い指。
わたしと違って話すのが上手だった。
美化された思い出に水を差すような、クズでダメな男だった。
帰り道は小雨が降っていて小走りで帰った。
202号室には、もう来ない。
気が付いたら急いでシャワーを浴びていた。
去年どうしようもなく好きだった男タカハシから一年ぶりに連絡が来た。
1ヶ月前酔って連絡した朝、自分を恨みながらラインを非表示にして削除したばかりだった。
何度も連絡を無視されてもう私には会うつもりがないのだと思っていた、タカハシ。
タカハシに会うためにつけていた香水も無くなりそうだった。懐かしい匂いを振りまいて出かけた。
部屋番号を忘れている自分に驚いた。
202号室はなぜか懐かしいにおいがしなかった。
どこかに名残はあるけれど一年で柔軟剤もボディソープも何もかも、変わってしまったのだろう。
久しぶりのタカハシは太ってお腹が少し出てた。
「ムラムラしてるから来ない方が良いかも」
は来て欲しいに聞こえたし、タカハシにとって私がムラムラしてないと連絡しないような相手だということはわかっていた。
タカハシには何度もあったけど、1度しか抱かれたことがない。
深夜1時近くだった。
ムラムラした男に会いに来た自分が淫乱で笑えた。
一年ぶりの、大好きだったタカハシ。
生ぬるい唾液の混じったキスはなぜかハムの味がして困惑した。
「そんなに俺と会いたかったの?」
「こんなにえっちだったっけ?」
最大出力の電マを本気で嫌がっている私にも気付かないで、
自分はよがる。
ねえこれちゃんと、洗ってるの?
「ホラ、ここすごくなってるよ」
「1人でしたりするの?教えて、興奮する」
「セフレって言葉に最近、すげえ興奮するんだよね」
獣みたいな喘ぎ声で腰を振るタカハシを見上げながら、
何となくおっさんくさくて心の中で泣いた。
わたしが記憶していたタカハシは、
もっと優しくて、聞くのも話すのも得意で。
映画が好きで、余裕に見せるのが上手で。
俺追いかけられるの好きだよ、って言っちゃうような
好きでいていいよって、わたしの気持ちを踏みにじるような
年はあまり変わらないのに私のことを酷く子供に見ている
そういう男だった。
ああ、そういう男だったんだった。
どんどん冷めていく気持ちとは裏腹に、私の体は火照っていた。
タカハシの体温を全身で感じながら、暖房の風が私たちを気持ち悪く暖めた。
汗をかいていた。
あつくてたまらなかった。
あの頃より確実に太った背中をきつく握りながら目をつぶって抱かれた。
わたしにはゴムをつけてくれないところも、
だらしない唇も、変わってはいなかった。
明らかに欲情しているタカハシの目を見れなかった。
そういえばコイツはらんぼうなセックスが好きだった。
ぐちゃぐちゃのキスで唾液を飲まされた。
もちろんわたしの下着など見てもくれなかった。
邪魔な物であるかのように扱った。
このレースの下着、超可愛いんですけど。
可愛いわたしのことも、きっと見てはいなかっただろう。
ああもう、大丈夫だ。
これでもう、酔っ払って美化されたタカハシを思い出すこともないだろう。
一年前タカハシが好きだったなと、きちんとはっきり覚えている。
その気持ちは化石になって、あの時と同じ柔軟剤や香水に、あの頃よく聴いていたビッケブランカに、あの日一緒に見た映画にきちんと宿っている。
高くて綺麗な鼻筋と長くて白い指。
わたしと違って話すのが上手だった。
美化された思い出に水を差すような、クズでダメな男だった。
帰り道は小雨が降っていて小走りで帰った。
202号室には、もう来ない。