今の彼氏の方が、何倍もいい彼氏なのに。
大学1年生の冬、初めて人を好きになった。
最初はサークルに途中入会してきた彼に私が一目惚れしたことからはじまり、
8ヶ月かけてようやく告白してもらって、付き合うまでにこぎつけた。
彼氏はそれまで何人かいたが、
みんな私が好きになれず別れていた。
初めての大好きな彼氏。
私は歯止めが効かないくらい好きになっていった。
彼は車があったのでデートはほとんど車。
帰りがけに私の家の近くにある人気のない駐車場の、
いつも同じ隅っこに車をとめて、後部座席でキスやハグを繰り返した。
初めてホテルへ行って、初めてセックスするまで3ヶ月。
私たちにとってはあの隅っこがラブホだった。
付き合って3ヶ月たって、初めてセックスをした後から、
私たちの心はすれ違いはじめた。
私は体を重ねた相手にどんどん想いを募らせ、
会いたくて、好きで、いつでも彼のことを考えていて、
ただ同じように好きを感じたかった。
だけど彼はもともと淡白なのに、
私との関係の慣れというものが拍車をかけるように、
どんどんLINEが返ってくるスピードが遅くなっていった。
「会ってない時は君のこと考えてないかな。
友達と遊んだりしてるし。べつに思い出さない。
特に寂しいとか思わないし。」
付き合い始めたラブラブの時からたびたび聞いていたこのセリフが、いつも私の中にあった。
連絡を取らなければ、
会わなければ、
この人は私への好きという気持ちを忘れてしまう、と、
いつも不安で、寂しくて、
どうしたらいいのかわからなかった。
そんな時期に彼は友達の影響でタバコを吸い始めた。
私は彼が吸っているのを見ると泣きたくなるくらいタバコが嫌いだった。
彼は相変わらず連絡をまともに返してくれなくて、
離れている時は不安だった。
でも会ってセックスしてる時だけは、
ああこの人は私のことがちゃんと好きなんだとわかる。
彼の手が、目が、言葉が、そう言っていた。
その安心感を求めて、私の会いたい気持ちは募るばかりだったけど、
会ってタバコを吸う姿を見ては、心臓がひやっと感じるくらいしんどくなった。
会っていても会っていなくても、しんどくてしんどくて、でも大好きだった。
「もっと大事にしてほしい。
連絡がほしい。」
と電話をかけて泣く私に、
「ごめんね。
頑張ってるんだけどどうしても…」
と謝る彼。
連絡頻度の価値観が合わないだけ、
ただそれだけなのに、
それだけに2人の首はきゅうきゅうに絞められていった。
そんなイザコザを繰り返しながら、付き合ってから8ヶ月たった頃、
お互い限界がきて初めて別れたいと言われた。
私は限界でも別れたくなかった。
でもどうしたらいいかはわからなかった。
その時は彼にも情があったらしく別れられなくて、結局1ヶ月後にお別れをした。
その間に一度だけセックスをした。
ぐちゃぐちゃになる私の頭を撫でながら
かわいい…と彼は言った。
私はその時、まだ大丈夫だ、やり直せるはずと思ったことを覚えている。
それが最後のセックスになった。
私は別れた後も、どうしても彼が好きだったから事あるごとに友達に戻ったふりをして飲みに誘った。
一度もセックスはしていない。
それがけじめだ。
別れてから半年、彼の車で温泉へ行くことになった。
友達として。
かつてキスやハグを繰り返した後部座席を倒して車中泊をした。
ウトウトしている彼が私の頭をギュッとしたとき、
私の鼻が彼の胸ポケットのタバコの箱にコツリとあたった。
私は悲しくて寂しくて、声を殺して泣いた。
隣で寝てもただそれだけ。
それ以上のことはなにもなくて、
終わり、なのだと思った。
その日の夜、私はもう会わないと彼に言った。
わかった、ごめんね。じゃあ、バイバイ。
バイバイ。
初恋が終わった。大学4年生になる頃だった。
あれから1年、一度も連絡をとっていない。
私には告白してくれて付き合った新しい彼氏がいる。
優しくて価値観も合うその人のことをちゃんと好きになって、
人生で二度目の恋をしている。
でもその人を好きになればなるほど、
どうしてか彼のことを思い出す。
幸せで、悩みも浮かばないような夜に、時々、最後のセックスで彼が言ってくれた
かわいい…を思い出して胸がキューッと苦しくなる。
近所の駐車場の、あの隅っこを見る度に寂しくて泣きたくなる。
もしもいま、街で偶然会ったら、姿を見てしまったら、
やっぱり好きだと思っちゃうんだろうか?
初恋は、呪いだと思う。
今の彼氏をもっともっと好きになって、旦那さんになったりして、
それでも人生で1番好きだったのは彼だと、
私は死ぬとき思い出すんだろうか?
一生彼のことを忘れられない弱いわたしでごめんなさい。