「ずっと俺の自慢の彼女でいて。俺の自慢の奥さんになって。」
本当はしまっておきたかったのに、よくわからないタイミングであの人の声が聞こえる。
くだらないと思っていたバラエティを見ている時。
行きたいねと話した場所が誰かのインスタに載った時。
二人で観たかった映画がレンタルされ始めた時。

本当はあのお笑い芸人は好きじゃなかった。
私がちっとも面白いとは思えなかった漫才を、「ねえ見て面白いから」って嬉しそうに勧めてくるあなたの顔が見たくて、「なんか最近面白い動画ないの?」って聞いた。

あの映画は、あの時の二人として観たかったんだ。
まったく趣味は合わないけど、下手くそで純粋なラブストーリーの洋画は、私の事を愛おしそうに見るあの目に映したかったんだ。

私たちは「付き合う」という言葉で繋がっていたこともあった。
彼は「ずっと俺の自慢の彼女でいて」って言ってたけど、どこが「自慢」だったんだろう。
すぐに要らなくなったくせに。

「もし5年後も俺のこと好きでいてくれたら、結婚しよう。それで俺の自慢の奥さんになって」

そんなこと言ってたあなたの方が、先に好きじゃなくなったくせに。
本当にどうでもいいけど、その言葉が現実になる日の私も見てみたかったのに。


私があの人の「何か」であれた時間は短かったと思う。
あなたの恋人じゃなくなったけれど友達でもない私たちの関係を、「セフレ」とは言いたくなかった。
だけど、出会った春も、喧嘩ばかりしていた夏も、同じ布団に入る理由ができ始める秋も、ひとつ歳を取る冬も、あの人との繋がりはいつも心じゃなくて身体だったような気がする。

最初のうちは鬱陶しいぐらいキスをして、ベッドに押し倒されるその流れにすらドキドキしていた。
静かに時間をかけてベッドに沈んでいく自分たちが好きだった。
腰に手を回されて、もうひとつの手は顔に添えられていて。
ひとつひとつの動作も、音の無い部屋に響き渡る唇が触れ合う音も、今思い出すとなんだか恥ずかしい。

「胸攻められるの好き?」

分かってるくせにニヤニヤしながら聞いておいて、私の返事を待たずに手を伸ばす。
片手で先端を弄りながら一方は舌で転がされて、膝で一番弱いところを押される。

「もうこんなに濡らしてる」

まだ5分と経っていないのに、息遣いが荒くなる私を見て笑うあなたが好きだった。
毎回同じ流れで次の展開が読めるようになっても、そのルーティンすら大好きなあなたの一部だから、ずっとこれだけでいいと思ってた。

「俺のことだけ考えて」なんて、言われなくても頭にはあなたしかいない。
「二人で気持ちよくなろう」って言ってくるその瞬間は確かに私の中に居るのに、
少し身体を離すとその隙間にいつも誰かが入ってくる。


携帯なんて見るんじゃなかった。
信じられなかった私が馬鹿だけど、
他の子との約束も、
他の子に送っていた好きという言葉も、
誰かの横で笑っているあなたの写真も、見るんじゃなかった。

私が気付いていないと思って、「お前だけだよ」って囁かれるたびに、いつこの関係を終わらせようかと考えた。
大事にされていないけど、大事にしたかった。
離れた方がいいと分かっていても離れられない私の気持ちだけは、守りたかった。

好きなままではいけない人を好きで居続ける私は悲劇のヒロインでありたかったんだろう。
そんな理由を探さないといけないほど好きで仕方なかった。


決定的な別れは何だったか覚えていない。
距離か時間かタイミングか、お互いがもう要らないと思ってしまったんだろう。
ちょっとだけ繋がっていた微かな糸を繋ぎ続けようという気持ちが、消えてしまった。
あなたがいなくなるなら死んでもいいなと思うほど辛かったのに、この人生を終えるときあの人がいない未来なんて要らないと思ったのに。
実際は平気な顔して別の人と付き合って身体を重ねて、「ずっと一緒にいようね」なんて笑ってる。


純粋なんかじゃない。愛なんかでもなかった。
その証拠に、私は今あなたの隣にいない。
それなのに何で思い出してしまうんだろう。

「ずっと俺の自慢の彼女でいて」という彼の言葉を。
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