彼が好きだ。

頼りになるし、かっこいいし、お仕事も出来るし、私のことも愛してくれる。
ハグと軽いキスだけで満たされる。

夜中に手を繋いでスウェットで出かけたり、どっちが奢るのか勝負したり、たまには旅行に行ったり。
冬の金沢も、夏の鎌倉もよかったね。

そんな彼との時間が、一等好きだ。

だからその愛した分だけ、彼が、あの女が憎い。


浮気が初めて分かったのは今年の5月だった。

好きなわけじゃないんだって、
私と違って、小言を言わないから楽らしい。
私のことは好きだけど、たまに会うのが辛くなるらしい。

「それなら、」と、再構築を選んだ。

浮気したのは彼だが、彼を追い詰めたのは私だと思うことにした。
それなら私にも非があると思うことにした。
だから、一等好きだった彼と一緒にいることを選んだ。

これからも一緒に生きていたいことを手紙にしたためて、彼に伝えた。



お互いの気持ちは話し合えたし、
もう、大丈夫だと思ってた。
今はもうすぐ12月、半年で浄化できたと思ってた。うまくやってると思ってた。


そんな彼は私が手紙をしたためた2日後には、いつも通り身体の関係を持っていたようだ。

何も変わっていなかった。

私にいったん距離を置こうって言ったときも、会っていたようだ。


嫌いだ。
ねぇ、私の思い出を汚さないで。
ねぇ、私の好きな人を汚さないで。

LINEで可愛い、と言っている時もあった。
好きだけじゃなくて、可愛いも私だけのものだったのに。

今は、彼をどう信じたらいいのか分からない。

何をしても堂々巡りになってしまうかも、
何をしても私の気持ちは届かないかもと思う。

この先もずっと思い出すだろう。あの血の気が引く感じ。


パチンと泡になって彼の前から消えることが出来たらどんなに楽か、
一等好きな彼との記憶を消すことができたらどんなに楽か

嫌いと、汚さないでと、行かないでが巡る。
私は一等わがままな人間だ。