「女の子とお付き合いをしている」「そんな子に育てた覚えはない」
大好きだった、だけど離れた。
一生傍にいると本気で思っていた。悪いのは私。

第一印象は、肌が綺麗な子。
共通の趣味、心地よい会話のテンポ、仲良くなるのに時間は掛からなかった。

同い年とは思えない程、きめ細やかな頬を撫で、ふにゃりと笑う彼女を守ってあげたいと思った。

お揃いの服でデートをして、ショッピングをして、一緒に温泉に入り、同じ布団に入る。
ひとしきりお喋りをして、致した。

「今が1番幸せ」
そう言ってまた可愛い顔で笑った。


「女の子とお付き合いをしている」
そう聞いた母はみるみる血の気が引き、初めて見る顔で吐き捨てた。
「そんな子に育てた覚えはない」
「何のために産んだと思ってるの?」

生まれて初めての母からの強い言葉。
愛する人との関係を拒絶された事。
全てが恐ろしくて、怖くなった。

彼女との将来、2人でウェディングドレスを着て、
ペットを飼って、おばあちゃんになっても
2人で大好きなことについてお喋りする。
思い描いていた未来。幸せなはずの未来。

なんてことない微笑ましい未来はあらゆるタイミングで、事あるごとに否定されるのだろう。
まして、一番近い家族からも。

そんな未来を想像して、私の心は折れてしまった。


「ごめんなさい、別れてほしい」

私は、彼女より世間体を取ってしまった。

告げられた彼女は泣くでもなく、
喚くでも、怒鳴り散らすでもなく、
ただ寂しそうに、ごめんね、と呟いた。

彼女が引越す当日、私は家を空けた。
合わせる顔がない、私が追い出したから。

家に帰ると、がらんとした部屋に手紙が置いてあった。
今までの思い出、今の心境、これからの事、
大好きだった彼女の言葉が綴られていた。
終わりに近づくにつれ、その手紙は私を責めた。
それは彼女が漏らすことのなかった本音だと分かった。

≪君が一生、幸せになりませんように。≫


あなたから貰った言葉は、今も私の胸を締め付けている。
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