推される側になった、最初で最後の日
なぜか推される側になった。
とあるYouTuberの街頭インタビュー企画に答えたのがきっかけだった。
別に目立つようなことを言ったわけではない。ましてや特別容姿が良いわけでもない。
どうしてだろうか、正直未だに分からない。
あの子は僕のインスタを特定してきた。ただのYouTubeの街頭インタビューに答えただけの僕の、だ。
気味の悪さと同時に、謎のワクワク感もあり、とりあえず相互フォローになった。
いきなりストーリーに反応がきた。
内容は友達と大勢で遊んだとき、友達が撮っていた僕の動画をストーリーに載せただけ。
中身はもうなんだか覚えていないが、くだらない失敗の瞬間かなにかだったと思う。
「やっぱり喋ってるところが好きです」
どういうことだ。
「ありがとうございます、てか初めまして…ですよね?」
「そうです、〇〇チャンネルに出たことツイッターに載せてたじゃないですか、あそこから特定しちゃいました」
「物好きというか暇なんですか…?」
「タイプすぎました」
...絵に描いたような陰キャの僕がこんなことを言われることがあっていいのか?
正直嘘だと思った。ていうかなんらかの詐欺?
わざわざこんなアカウント作ってイタズラしてくる知り合い?
ただ、そのアカウントは何年も前から日常のちょっとしたことを投稿していて、フォロー欄も地元の友達だけ。ごく少数の人だけが知るもの。
彼女はどうやら東京近郊住みの僕と違って、
かなり人口の少ない街に暮らしているようだ。全く関係がないし、どうやら嘘ではなさそう。
彼女のストーリーで、どうやらパパ活に近いことをしているらしいと知った。
彼氏を作るためにアプリでひたすら会っていると知った。
頭が混乱した。別世界すぎる。
とりあえずなにも見なかったことにした。
ただ、あまりにその子は粘り強かった。
誕生日に、スタバのチケットが届いた。
クリスマスに、アマゾンのギフトカードが届いた。
バレンタインに、熱烈なメッセージが届いた。
一層混乱した。謎がすぎる。
異性としては一切意識できなかった。むしろ怖い。すごく。
『友達に会いに東京に行くんだけど、会えませんか?』
流石に興味が湧いてしまった。一体どんな人間なのか。どんな変な奴なのか。
軽いノリで、良いですよ、なんて言って。
初めて会ったその子は、写真の印象より背が小さかった。
普段インスタに載せている写真より、少しだけメイクが濃かった。
「...実物見てがっかりしてるでしょ」
「いや、東京に来た甲斐がありました」
そんなやり取りも、お世辞でしょう、だなんて流しながら、なんでもない話をした。
彼氏探しのストーリーがなかなかにドラマティックで面白いこと、YouTubeからの特定の経緯。
飲めば飲むほどその子は饒舌になった。楽しそうに話す顔はちょっと可愛かった。
「...やっぱり生で見るともっと刺さる顔してる」
僕も、勢いに任せて酒をかきこんでいた。
そのままホテルに行った。いや、連れて行かれた。
その子は僕の上で腰を振りながら、泣いていた。
「絶対に手が届かないってわかってるから」
「この日だけの思い出だってわかってるから」
彼女は自分に言い聞かせていた。
酔った僕の頭ではどうすれば良いのか、なにが起こっているのかわからなかった。
ひとしきり泣いて落ち着くと、その子はすぐに性欲を取り戻した。
その後も貪るように食われた。
軽く追加でお酒を飲みながら、朝までまた話した。
下らない話。たわいもない話。話は自然と尽きることはなかった。
よぎった。このまま彼氏彼女になる可能性、とか。
始まりは意味不明だけど、これはドラマチックとも言えるんじゃないかと。
こんなドラマみたいなことが今後、普遍的な陰キャの僕におこるのか。
「また会えたら良いですけど、来世でも良いです!」
考えるだけ考えて、結局時間だけが流れて朝になった。
その子は、元気よくそういいながら始発で新幹線に乗りに行った。
この言葉だけ、やけに耳に残った。その子を見送った後、インスタを見た。
Instagram User の表示。
どうやらアカウントごと消したらしい。
僕とのやり取りすべてを消したかったのだろうか。
過去の写真や思い出もすべて消してしまって良かったのだろうか。
勇気を持って高揚感に身を任せたら、くだらないと言わずこの波に飛び乗っていたら。
...そんな奴なら、「YouTuberの街頭インタビューをされる人」ではないのかもしれない。
そんな僕の懺悔。
とあるYouTuberの街頭インタビュー企画に答えたのがきっかけだった。
別に目立つようなことを言ったわけではない。ましてや特別容姿が良いわけでもない。
どうしてだろうか、正直未だに分からない。
あの子は僕のインスタを特定してきた。ただのYouTubeの街頭インタビューに答えただけの僕の、だ。
気味の悪さと同時に、謎のワクワク感もあり、とりあえず相互フォローになった。
いきなりストーリーに反応がきた。
内容は友達と大勢で遊んだとき、友達が撮っていた僕の動画をストーリーに載せただけ。
中身はもうなんだか覚えていないが、くだらない失敗の瞬間かなにかだったと思う。
「やっぱり喋ってるところが好きです」
どういうことだ。
「ありがとうございます、てか初めまして…ですよね?」
「そうです、〇〇チャンネルに出たことツイッターに載せてたじゃないですか、あそこから特定しちゃいました」
「物好きというか暇なんですか…?」
「タイプすぎました」
...絵に描いたような陰キャの僕がこんなことを言われることがあっていいのか?
正直嘘だと思った。ていうかなんらかの詐欺?
わざわざこんなアカウント作ってイタズラしてくる知り合い?
ただ、そのアカウントは何年も前から日常のちょっとしたことを投稿していて、フォロー欄も地元の友達だけ。ごく少数の人だけが知るもの。
彼女はどうやら東京近郊住みの僕と違って、
かなり人口の少ない街に暮らしているようだ。全く関係がないし、どうやら嘘ではなさそう。
彼女のストーリーで、どうやらパパ活に近いことをしているらしいと知った。
彼氏を作るためにアプリでひたすら会っていると知った。
頭が混乱した。別世界すぎる。
とりあえずなにも見なかったことにした。
ただ、あまりにその子は粘り強かった。
誕生日に、スタバのチケットが届いた。
クリスマスに、アマゾンのギフトカードが届いた。
バレンタインに、熱烈なメッセージが届いた。
一層混乱した。謎がすぎる。
異性としては一切意識できなかった。むしろ怖い。すごく。
『友達に会いに東京に行くんだけど、会えませんか?』
流石に興味が湧いてしまった。一体どんな人間なのか。どんな変な奴なのか。
軽いノリで、良いですよ、なんて言って。
初めて会ったその子は、写真の印象より背が小さかった。
普段インスタに載せている写真より、少しだけメイクが濃かった。
「...実物見てがっかりしてるでしょ」
「いや、東京に来た甲斐がありました」
そんなやり取りも、お世辞でしょう、だなんて流しながら、なんでもない話をした。
彼氏探しのストーリーがなかなかにドラマティックで面白いこと、YouTubeからの特定の経緯。
飲めば飲むほどその子は饒舌になった。楽しそうに話す顔はちょっと可愛かった。
「...やっぱり生で見るともっと刺さる顔してる」
僕も、勢いに任せて酒をかきこんでいた。
そのままホテルに行った。いや、連れて行かれた。
その子は僕の上で腰を振りながら、泣いていた。
「絶対に手が届かないってわかってるから」
「この日だけの思い出だってわかってるから」
彼女は自分に言い聞かせていた。
酔った僕の頭ではどうすれば良いのか、なにが起こっているのかわからなかった。
ひとしきり泣いて落ち着くと、その子はすぐに性欲を取り戻した。
その後も貪るように食われた。
軽く追加でお酒を飲みながら、朝までまた話した。
下らない話。たわいもない話。話は自然と尽きることはなかった。
よぎった。このまま彼氏彼女になる可能性、とか。
始まりは意味不明だけど、これはドラマチックとも言えるんじゃないかと。
こんなドラマみたいなことが今後、普遍的な陰キャの僕におこるのか。
「また会えたら良いですけど、来世でも良いです!」
考えるだけ考えて、結局時間だけが流れて朝になった。
その子は、元気よくそういいながら始発で新幹線に乗りに行った。
この言葉だけ、やけに耳に残った。その子を見送った後、インスタを見た。
Instagram User の表示。
どうやらアカウントごと消したらしい。
僕とのやり取りすべてを消したかったのだろうか。
過去の写真や思い出もすべて消してしまって良かったのだろうか。
勇気を持って高揚感に身を任せたら、くだらないと言わずこの波に飛び乗っていたら。
...そんな奴なら、「YouTuberの街頭インタビューをされる人」ではないのかもしれない。
そんな僕の懺悔。