ここだけの秘密。
大学一年の頃、上京したてで初めてサシ飲みに行ったサークルの同期。
初めて会ったときからどこか他の子と違って見えた。
チャラそうなのに、人の話をしっかり聞いてるところとか、
周りに気を遣えるところが大人だなと感じていた。
「ここだけの秘密な」
彼は、「お前には話せるわ」とよく自分の秘密の話を教えてくれた。
なんだか彼の特別になれたような気がして嬉しかった。
サークルの先輩に「こいつ結構可愛いトコあるんすよ」と言って
私のことを見てきた時はこの人が私の彼氏だって言いたいと思ったし、
周りも「お似合いだし、あそこは時間の問題だね」と言ってくれていた。
私がその気になれば、付き合えるかもと思ってた。
正直、調子に乗っていた。
彼の本性がわかったのはその数週間後のことだった。
私とのサシ飲みで聞いた「秘密」をサークルの他の女子数名が知っていた。
彼は誰でもよかったのだ。
寂しがりやでめったに家に帰らない、サシ飲みが好きな男。
絶対好きになったらダメなのに、私は好きになってしまった。
それでも絶対にバレたくなかったから、私はわざと「うちらが付き合うとかありえないよね」と言って、彼は「じゃあ付き合う?」と期待させるようなことを言ってきた。
冗談とはわかっていながらも舞い上がっていた。
「わたしの好きな人はあなただよ」
私の誕生日の前日、帰りの電車でLINEを打った。
心臓がバクバクうるさくて、眠れなかった。
次の日LINEを見ると、
「ありがとう、誕生日おめでとう」というLINEが来てた。
イエスでもノーでもない曖昧な返事。
もしかしたら、なんて思った私がバカだった。
私は彼の言葉に踊らされていただけだった。
それから二週間後、長期休みで私は地元に帰ってきた。
しばらく連絡はとってなかった。
ある朝、彼からLINEが来ていた。
「東京に帰ってきたら、二人で会いたい」
夏が始まる頃、私は東京に帰り、
最寄駅の居酒屋で飲んだ後、缶ビールを二本買って公園に行った。
「俺さ」
缶ビールの蓋を開けながら、彼が静寂を破った。
「お前のことちゃんと好きになれるかわからない。俺、ちゃんと人を好きになったことないんだ」
私が思っていたよりも、彼はかっこよくなかった。
「それでもいいかな」
彼の問いかけに、私は黙って目を瞑った。
唇に温かいものが触れる。
ビールの苦い味。
酔っ払ってはいなかった。
ずっとずっと夢見ていた瞬間。
ベッドに座り、キスをして、当たり前のように行為が始まり、
彼が射精した後、私は泣いた。
泣き顔を見て、「綺麗だな、お前」と彼が言った。
私たちは付き合うことになった。
サークルの同期に発表すると、みんな喜んでくれて、私の気持ちが認められた感じがした。それが一番嬉しかった。
みんなの前でいちゃいちゃしたり、飲み会の時に一緒に帰ったり、たまにちょっと遠くの温泉に行ったり。
付き合い始めは本当に誰もが認めるバカップルだったと思う。
三年生になる前、私のマンションの契約が切れると同時に同棲を始めた。
できない料理の勉強をしてみたり、一緒にDVDを借りに行ったり、映画を見ながらセックスしたり。
私は楽しくて楽しくて、本当にこの関係が一生続けばいいのにと思ってた。
でも、別れは突然だった。
四年生になる前、彼が消えた。
二人で借りたマンションの契約が切れる二日前のことだった。
大学にも居なくて、サークルの同期に聞いても知らないと言う。
これまでの日常のどこがダメだったのか、よくわからなかった。
私は、家を解約して一人暮らしを始めた。
そして三ヶ月が経った。
友達がインスタのDMで送ってきた写真。
彼と知らない女の子の写真。
彼は私と同棲を始めて半年後から、元カノとよく会っていたらしい。
ぽろぽろ落ちる涙と裏腹に、よくある話だな、とどこか他人事のように思ってる自分がいた。
「お前のことちゃんと好きになれるかわからない」
私に教えた秘密を、またもや他の子に教えたのだ。
彼がいつも開けてくれていた缶ビールの蓋を、その日私は上手く開けられなかった。
初めて会ったときからどこか他の子と違って見えた。
チャラそうなのに、人の話をしっかり聞いてるところとか、
周りに気を遣えるところが大人だなと感じていた。
「ここだけの秘密な」
彼は、「お前には話せるわ」とよく自分の秘密の話を教えてくれた。
なんだか彼の特別になれたような気がして嬉しかった。
サークルの先輩に「こいつ結構可愛いトコあるんすよ」と言って
私のことを見てきた時はこの人が私の彼氏だって言いたいと思ったし、
周りも「お似合いだし、あそこは時間の問題だね」と言ってくれていた。
私がその気になれば、付き合えるかもと思ってた。
正直、調子に乗っていた。
彼の本性がわかったのはその数週間後のことだった。
私とのサシ飲みで聞いた「秘密」をサークルの他の女子数名が知っていた。
彼は誰でもよかったのだ。
寂しがりやでめったに家に帰らない、サシ飲みが好きな男。
絶対好きになったらダメなのに、私は好きになってしまった。
それでも絶対にバレたくなかったから、私はわざと「うちらが付き合うとかありえないよね」と言って、彼は「じゃあ付き合う?」と期待させるようなことを言ってきた。
冗談とはわかっていながらも舞い上がっていた。
「わたしの好きな人はあなただよ」
私の誕生日の前日、帰りの電車でLINEを打った。
心臓がバクバクうるさくて、眠れなかった。
次の日LINEを見ると、
「ありがとう、誕生日おめでとう」というLINEが来てた。
イエスでもノーでもない曖昧な返事。
もしかしたら、なんて思った私がバカだった。
私は彼の言葉に踊らされていただけだった。
それから二週間後、長期休みで私は地元に帰ってきた。
しばらく連絡はとってなかった。
ある朝、彼からLINEが来ていた。
「東京に帰ってきたら、二人で会いたい」
夏が始まる頃、私は東京に帰り、
最寄駅の居酒屋で飲んだ後、缶ビールを二本買って公園に行った。
「俺さ」
缶ビールの蓋を開けながら、彼が静寂を破った。
「お前のことちゃんと好きになれるかわからない。俺、ちゃんと人を好きになったことないんだ」
私が思っていたよりも、彼はかっこよくなかった。
「それでもいいかな」
彼の問いかけに、私は黙って目を瞑った。
唇に温かいものが触れる。
ビールの苦い味。
酔っ払ってはいなかった。
ずっとずっと夢見ていた瞬間。
ベッドに座り、キスをして、当たり前のように行為が始まり、
彼が射精した後、私は泣いた。
泣き顔を見て、「綺麗だな、お前」と彼が言った。
私たちは付き合うことになった。
サークルの同期に発表すると、みんな喜んでくれて、私の気持ちが認められた感じがした。それが一番嬉しかった。
みんなの前でいちゃいちゃしたり、飲み会の時に一緒に帰ったり、たまにちょっと遠くの温泉に行ったり。
付き合い始めは本当に誰もが認めるバカップルだったと思う。
三年生になる前、私のマンションの契約が切れると同時に同棲を始めた。
できない料理の勉強をしてみたり、一緒にDVDを借りに行ったり、映画を見ながらセックスしたり。
私は楽しくて楽しくて、本当にこの関係が一生続けばいいのにと思ってた。
でも、別れは突然だった。
四年生になる前、彼が消えた。
二人で借りたマンションの契約が切れる二日前のことだった。
大学にも居なくて、サークルの同期に聞いても知らないと言う。
これまでの日常のどこがダメだったのか、よくわからなかった。
私は、家を解約して一人暮らしを始めた。
そして三ヶ月が経った。
友達がインスタのDMで送ってきた写真。
彼と知らない女の子の写真。
彼は私と同棲を始めて半年後から、元カノとよく会っていたらしい。
ぽろぽろ落ちる涙と裏腹に、よくある話だな、とどこか他人事のように思ってる自分がいた。
「お前のことちゃんと好きになれるかわからない」
私に教えた秘密を、またもや他の子に教えたのだ。
彼がいつも開けてくれていた缶ビールの蓋を、その日私は上手く開けられなかった。