セフレと認定された私が、彼と会える場所は一つだけ
いつも誰かを追う度に、勘違いをしてきた。
出会い系で仲良くなった彼とも、同じ誤ちを繰り返した。

出会い系で仲良くなった彼は、初めて会う私に対してすごく優しかった。
車で遠くまで連れて行ってくれたし、ご飯の時に私の分のお代を渡すと、すごく感謝をしてくれる。
そんな彼にすぐに惹かれた。

私は、今までちゃんとした恋愛をしてこなかったせいで、異性との関わり方に歪みがあった。
キスもセックスも初めては恋人じゃなかったし、求められればそれが愛だと思い込んでいた。

彼に対しても同様で、遠出のデートを終えた後はホテルへ向かい、体を重ねることになった。
その時は、またセフレ止まりなんだろうなと感じていた。
間違いだと分かっていても、自分でこの承認欲求を止めることができなかった。

でも、彼はとても大事に私を抱いてくれた。
色んなところにキスをしては、時間をかけて愛撫をし、「こんなこと、彼女にしかしたことない」と言い、私を全力で求めてくれた。
最後には思いっきり抱きしめて「大好きだよ」と言い、微笑んでくれた。

行為中に好きだと言われたのは初めてだった。
疑似恋愛でも、好きだと言われることがこんなにも幸せなんだと、初めて気づいた。
「私も大好き」と言って、抱きしめ返した。


「次も会いたい」と彼に言ってくれて、その時の私は、初めての経験に心が浮かれていたんだと思う。
インスタの検索画面を開き、おすすめデートスポットを探す。
次はここに行きたいな、これ食べてみたいなと、保存マークを押していつでも彼に見せられるようにしておいた。


久しぶりの彼との電話。
彼から「この日空いてる?」と聞かれる。すぐに予定を確認して返事した。

「全然空いてる!どこ行きたい?」
「ん?どこ行きたいってオススメあるの?」

その返事を待ってましたと言わんばかりに、私はインスタの保存した投稿を見返す。
「えっとね、今送るからちょっと待ってね!」
彼はどんな所が好きなんだろう。
水族館?食べ歩きとかかな?彼からの返事が待ちきれなくて仕方なかった。

「いいホテルでも見つけたの?」

彼からそう言われた瞬間、物凄い恥ずかしさが込み上げてきて、返事を返すのを躊躇った。
あ、違う。何期待してるんだろ。
保存欄に入れたオシャレなご飯屋さんも、景色が綺麗なあの場所も、行かないんだ。
行けないんだ。

「好き」だと言われたのを真に受けて、浮かれていた。
セフレと認定された私が、彼と会える場所は一つだけという事に気づかず。
恥ずかしさのあまりに動悸が起こる。
もう話せないと思い、眠たくなったと誤魔化して電話を切る。
今まで勘違いをする事はあったが、こんなに苦しいことはなかった。


人のせいにしてはいけないのは分かってる。
でももう自分の非が分からない。

メイクだって練習してるし、筋トレも頑張ってるし、オシャレだっていっぱい研究してる。
初対面の人は誰だって1度は容姿を褒めてくれるし、
周りに気配りもできるように心掛けて、優しいねって言われることも多くなった。
でも、どうしても誤ってしまう。


彼とはもうそれ以降連絡を取る頻度が減ってしまったが、それでも彼のことが気になってしまい、私は告白をした。
すると彼は「好きだけど付き合いたいと思わない」と言った。

やっぱり、とは思ったけど、じゃあ「彼女にしかしない」とか「大好きだよ」も「また会いたい」も、言わないで欲しかった。
私じゃないなら、最初から期待させないで欲しかった。

一体何回勘違いを繰り返せば、信じられる人と出会えるんだろ。
幸せになれるんだろ。
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