僕の恋人は、今週いっぱいで彼女ではなくなる
僕の恋人は、今週いっぱいで彼女ではなくなる。
そして僕たちの恋人生活も、終わりを告げる。
気がついたら夏はすぐそこだった。
毎朝湿気とたたかう彼女は果てしなく可愛い。
ヘアアイロンで伸ばしたさらさらの髪をきゅっと結んで、僕の待つ玄関へ。
いってきますのキスをした後、彼女はお気に入りの口紅をつける。
そして二人で駅へ向かう。
これが僕たちのルーティンだ。
偶然にも会社の最寄駅が同じで、かれこれ三年一緒に通っている。
出会いは某銀行の面接。
同じグループだった彼女に一目惚れした。
可愛い子だったなぁ、と思いつつ、面接を終える。
駅のホームへ向かうと彼女が立っていて、僕は咄嗟に声をかけた。
「あの…さっき面接で同じグループでしたよね…?」
「あっ、えーっと…そうでしたっけ、すみません…人の顔覚えるの苦手で」
完全に終わったと思った。
あの時の彼女の苦笑いは忘れられない。
「いやいや、いきなり声かけてすみません!…お疲れ様でした!お互い受かると良いですね」
僕は諦めモードで会話を無理やり終わらせた。
タイミングよく電車が来て別の車両に乗る。
家の最寄り駅に着き、いつも通り改札を抜け5番出口へ。
すると後ろから肩を叩かれる。
「駅、同じだったんですね」
彼女だった。
風に揺れる彼女の髪は、まるで綺麗な映画のワンシーンのようで。
僕は運命だと確信した。
「よかったら今からご飯行きませんか!」
ダメ元でご飯に誘ってみる。
彼女は少し悩んだ後、OKをくれた。
「俺、ゆきちゃんに一目惚れした」
緊張と疲れもあって、すぐに酔っ払ったからか、飛び出た本音。
自分の口から出た言葉だと理解して、酔いがさめる。僕は焦って訂正した。
「酔っ払いにこんなこと言われてもって感じやんな!ごめん…聞かんかったことにして!」
彼女はケラケラと笑いながら、
「友達から始めよ」と握手をしてくれた。
多分彼女の前世は女神かなんかだと思う。
それから何回もデートをした。
カラオケや映画館、海に山に川、公園。
お金がなくても楽しい日々だった。
「つ…付き合ってほしいです!」
何ヶ月か経って僕は告白をした。
前日に練習した告白とは全く別物になってしまったけど、
「お願いします」と彼女は手を握ってくれた。
ちなみに某銀行の面接は二人とも最終で落ちて、お互いに慰め合って居酒屋でビールを飲んだ。
あれから就活に苦戦もしたがなんとか決まり、同棲することになった。
彼女は毎分毎秒可愛い。
お風呂にも毎日一緒に入るし、
一緒にパックをしたり、ご飯を作ったり、
突然おちゃらけて踊り出す彼女の動画を撮ったりしている。
キスをして、パジャマを脱がせると今でも顔を隠して恥ずかしがる。
そんな彼女が愛おしくて仕方がない。
今年のゴールデンウィークに夏のボーナスを先取りし、旅行を企画した。
二人で小さな旅館でゆっくりするだけの旅行。
…というのは名目で、実はプロポーズをするための旅行。
けど、告白ですら何ヶ月もかかったビビリの僕がすんなり切り出せるはずもなく、
部屋の露天風呂に浸かりながら他愛もない話をしていた頃、
「ちょっと待ってて」
そそくさとお風呂から出ていく彼女。
戻ってきた彼女は裸のまま僕にこう言った。
「結婚しよう、ずっと幸せにするから」
彼女は、指輪の入ったケースを僕に差し出す。
彼女の言葉とその姿のギャップで大笑いしながら大泣きした。
「お願いします!」
僕も裸のままそう答えた。
やっぱり男前な彼女には敵わない。
人生は計画通りには行かない。けど、とても幸せだった。
次の日の朝、僕からもプロポーズした。
それも朝風呂の最中に。
彼女と二人で2組の婚約指輪を見ながら大笑いした。
これを書いている今も、彼女は楽しそうに歌をうたっている。
もうすぐ彼女と僕は正式に夫婦になる。
頼りない夫を末永くよろしくね。
なるべく長生きして側にいられるように頑張るね。
歳を重ねても、お風呂は毎日一緒に入ろうね。
そして僕たちの恋人生活も、終わりを告げる。
気がついたら夏はすぐそこだった。
毎朝湿気とたたかう彼女は果てしなく可愛い。
ヘアアイロンで伸ばしたさらさらの髪をきゅっと結んで、僕の待つ玄関へ。
いってきますのキスをした後、彼女はお気に入りの口紅をつける。
そして二人で駅へ向かう。
これが僕たちのルーティンだ。
偶然にも会社の最寄駅が同じで、かれこれ三年一緒に通っている。
出会いは某銀行の面接。
同じグループだった彼女に一目惚れした。
可愛い子だったなぁ、と思いつつ、面接を終える。
駅のホームへ向かうと彼女が立っていて、僕は咄嗟に声をかけた。
「あの…さっき面接で同じグループでしたよね…?」
「あっ、えーっと…そうでしたっけ、すみません…人の顔覚えるの苦手で」
完全に終わったと思った。
あの時の彼女の苦笑いは忘れられない。
「いやいや、いきなり声かけてすみません!…お疲れ様でした!お互い受かると良いですね」
僕は諦めモードで会話を無理やり終わらせた。
タイミングよく電車が来て別の車両に乗る。
家の最寄り駅に着き、いつも通り改札を抜け5番出口へ。
すると後ろから肩を叩かれる。
「駅、同じだったんですね」
彼女だった。
風に揺れる彼女の髪は、まるで綺麗な映画のワンシーンのようで。
僕は運命だと確信した。
「よかったら今からご飯行きませんか!」
ダメ元でご飯に誘ってみる。
彼女は少し悩んだ後、OKをくれた。
「俺、ゆきちゃんに一目惚れした」
緊張と疲れもあって、すぐに酔っ払ったからか、飛び出た本音。
自分の口から出た言葉だと理解して、酔いがさめる。僕は焦って訂正した。
「酔っ払いにこんなこと言われてもって感じやんな!ごめん…聞かんかったことにして!」
彼女はケラケラと笑いながら、
「友達から始めよ」と握手をしてくれた。
多分彼女の前世は女神かなんかだと思う。
それから何回もデートをした。
カラオケや映画館、海に山に川、公園。
お金がなくても楽しい日々だった。
「つ…付き合ってほしいです!」
何ヶ月か経って僕は告白をした。
前日に練習した告白とは全く別物になってしまったけど、
「お願いします」と彼女は手を握ってくれた。
ちなみに某銀行の面接は二人とも最終で落ちて、お互いに慰め合って居酒屋でビールを飲んだ。
あれから就活に苦戦もしたがなんとか決まり、同棲することになった。
彼女は毎分毎秒可愛い。
お風呂にも毎日一緒に入るし、
一緒にパックをしたり、ご飯を作ったり、
突然おちゃらけて踊り出す彼女の動画を撮ったりしている。
キスをして、パジャマを脱がせると今でも顔を隠して恥ずかしがる。
そんな彼女が愛おしくて仕方がない。
今年のゴールデンウィークに夏のボーナスを先取りし、旅行を企画した。
二人で小さな旅館でゆっくりするだけの旅行。
…というのは名目で、実はプロポーズをするための旅行。
けど、告白ですら何ヶ月もかかったビビリの僕がすんなり切り出せるはずもなく、
部屋の露天風呂に浸かりながら他愛もない話をしていた頃、
「ちょっと待ってて」
そそくさとお風呂から出ていく彼女。
戻ってきた彼女は裸のまま僕にこう言った。
「結婚しよう、ずっと幸せにするから」
彼女は、指輪の入ったケースを僕に差し出す。
彼女の言葉とその姿のギャップで大笑いしながら大泣きした。
「お願いします!」
僕も裸のままそう答えた。
やっぱり男前な彼女には敵わない。
人生は計画通りには行かない。けど、とても幸せだった。
次の日の朝、僕からもプロポーズした。
それも朝風呂の最中に。
彼女と二人で2組の婚約指輪を見ながら大笑いした。
これを書いている今も、彼女は楽しそうに歌をうたっている。
もうすぐ彼女と僕は正式に夫婦になる。
頼りない夫を末永くよろしくね。
なるべく長生きして側にいられるように頑張るね。
歳を重ねても、お風呂は毎日一緒に入ろうね。