彼女が風呂に入っている時に、彼女のスマホが鳴った。ラインの音だった。
彼女はマッチングアプリで出会った人だった。
僕はマッチングアプリでワンナイトを繰り返す、いわゆるヤリモクだった。
そんな中で出会った彼女に最初から特別なにかを感じたわけではなかった。
マッチ後すぐに彼女から電話しようと言われ、ラインを交換した。僕の目的からしたら願ったり叶ったりだった。
電話を始めてすぐ、彼女の綺麗な声と可愛い笑い方に魅了された。そして気づいたら6時間を超える長電話をしていた。
こんな長電話は人生初の経験で、今まで会った人とは少し違うかもなあなんて思っていた。
その時に今度会おうと約束し、飲みに行くことになった。

数件ハシゴしたところで、お酒は強いと豪語していた彼女が寝不足のせいか、かなり酔ってしまった。
そんな彼女を見て、長電話の時の淡い感情なんて遠い昔のように、するするとホテルに連れて行ってしまった。その後セックスしたことにも何も感じていなかった。
朝方ホテルから駅に向かう途中で「これから家に帰るの?」と聞くと、「今日はこのまま出かけるんだ」と言われた。
からかい半分で「ひとり?誰かと?」と聞くと「男友達と」と答えた。
いつもなら流して終わるのに、「その人ともヤッたの?」と言わなくてもいいことを言ってしまった。
あ、やばいと思ったが彼女は笑いながら「秘密。君が知らないとこなんていくらでもあるよ」なんて茶化してきた。
その時僕は自分が嫉妬してるのと同時に、彼女に惹かれている自分にようやく気づいた。

今までの人はセックス後には連絡を取らないままサヨナラしていたのだが、彼女とは頻繁に連絡を取るようになった。だんだんと彼女の知らないところを知っていくうちに、好きだという気持ちは確信になって、そして彼女もなんとなくだが僕を好きでいてくれてる気がした。
彼女には好きな曲があって、それをライン電話の発信音にしていた。夏の恋の思い出を歌にした流行りの曲だった。彼女に電話をかける度に流れてくるその曲が僕も大好きになっていた。
そして2人で旅行に行くまでにこぎつけた。夏も涼しくなってきた時期の事だった。僕はその旅行の終わりに告白することを心に決めていた。

旅行はとても楽しくてあっという間に過ぎた。
レンタカーで運転中にも彼女の好きな曲を流した。まるで僕らのテーマソングのようだった。
最後の夜、翌朝飛行機に乗る前に告白するつもりだったので、出来レースだろうと思ってはいたが緊張し始めていた。
彼女が風呂に入っている時に、彼女のスマホがなった。ラインの音だった。
なんのことは無い。いつもなら気にもしなかった。でも、このときは画面を見てしまった。

男の名前があった。
いや、男友達多いって言ってたから。

もう一度鳴った。
「返事無いけどどうした」

見なきゃいい。ってか見たらダメだろ。
俺だって見られるの嫌だろ。

下に他の人からのラインもあった。
「今度の合コンだけど、」

ほら、見てもいいことない。
そう思った時にはもうラインを開いていた。


そこには彼女が旅行直前までその男と寝泊まりしていたことが書かれていた。
しかもその関係はずっと長く続いているみたいだった。
彼女が風呂から戻ってきても見てしまったとは言い出せず、罪悪感と、落胆と、愛情と、憎悪とでその日は眠れなかった。

お互い帰宅した後に、ラインを見てしまったことを謝った。彼女はもちろん怒った。そして、見た理由を聞かれた時に、「好きだったから」と告白した。
「アプリから始まったし、一線超えてからの恋愛だったけど本当に大好きだった。」
意を決しての告白は、本来の目的とは程遠い言い訳となって消えた。

その後喧嘩別れするのではなくて、たくさん話し合って和解した。彼女は男に捨てられた過去から、一人の男に絞って恋愛するのが難しかったようだった。
そして、彼女は男遊びを辞めて僕はマッチングアプリを辞めた。
その後お互いに好きではあったが、女々しい僕はラインの一件の踏ん切りが付けられず、結局付き合うことはなかった。以降一線を超えることは無かった。

今でも時々彼女の好きな曲を聴く。色々あったけど楽しかった日々を思い出す。でももう笑顔も声も鮮明には思い出せない。
追いつけないとこまで来ちゃったな、なんて詩的なことを思ってこんな文章書く始末じゃあ、「まだ女々しいね」なんて彼女に笑われそうだ。
 ツイートする
純猥談はユーザーのみなさまからのサポートによって運営していきます。
 サポート会員になる
100円からサポートいただけます
おすすめの純猥談
出会って10年目、夫の不倫に気付いてしまった。
⚠この純猥談は不倫表現を含みます。
桜坂 さんからの純猥談
つづきをよむ >
腰を振りながら、私の名前を初めて呼んだ
京子 さんからの純猥談
つづきをよむ >
8年目の関係は一回の欲望で崩れ散った。
はる さんからの純猥談
つづきをよむ >