私を好きでいてくれた彼を、あなたに作り替えようとした
「今日はありがとうございました。また。」

手を振り頭を下げた。彼の家の前。始発まであと30分。


私があなたとそんな関係になったのは5年前。
会社の同僚で歳は彼の方が4つ上だった。
私はかなり太っていて、痩せている彼の隣にはかなり不釣り合いだと思っていた。
だけど、彼の声が、匂いが、背中が、大好きだった。

互いに視力が悪い為、行為中はお互い顔は見えていない。
それにお酒が入っていると彼は必ず翌日「覚えてない。」と言う。
それでいい。
何の記憶も残らなくても私だけ覚えてたらいい。
そういつも言い聞かせながら、彼の家から少し離れた駅へ向かう。
LINEも私が送らなければ来ることはない。既読無視だってある。
会社では話さない。

そんな中、1年前に別支店へ彼が移動になるのをきっかけに彼と体を重ねることもなくなった。
これで良かったんだ、と言い聞かせる。忘れよう。

そこから、マッチングアプリやSNSで知り合った人と数回体を重ねた。
でも、誰としても彼が離れなかった。

好きと言ってくれた人もいて、半年付き合ったこともあった。
彼を忘れられなかったことが、あだになった。

彼氏に同じ匂いの柔軟剤を使わせたりした。
私を好きでいてくれた彼を作り替えようとした。
私は彼氏を彼に置き換えているだけ。最低なやつだ。
彼氏に申し訳なくて、結局別れた。


私はあなたの顔が思い出せない。
私の言動でどんな顔をしているかが怖くて顔は見ていなかったから。
顔はぼんやりしてるのに体は覚えていた。
彼のことを思い出してしまうから、他の人とキスをできなくなってしまった。
彼の声はどんなに離れていてもドキッとしてしまう。
私から消えてくれないあなた。

全然忘れようとしてない自分に腹が立つ。


元旦に、プリンターで印刷された宛名が書いてある年賀状が届く。
もちろん反対には、私に向けたメッセージなんて何も書かれていない。
私の名前がリストの中に紛れ込んでいるからだとしても、毎年届く年賀状が嬉しかった。ドキドキした。 


「今日はありがとうございました。また。」

別れたあとに振り返ると、あなたはいつも私に背中を向けていた。
手を振りかえすことも、私を見送ることも無かった。
私は振り返る。大好きな背中だ。それがまた悔しい。
そして前を向く。
昨晩から付けたままのコンタクトは乾き、目が痛い。
涙が流れる。 

きっとあなたは覚えてないんじゃない。
記憶に刻みたくないだけ。
私はあなたの記憶の負の遺産。

私のフォルダーに残るあなたの後ろ姿。
今日も、あなたと同じ柔軟剤の香りを町で感じては振り返る。
はやくあなたを忘れたい。
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