心が好き。声が好き。顔も好き。身体は、そんなに。
「性格の相性がいいと長続きする」

その通りだと心底思う。現に、僕と彼女は性格の相性がいい。
付き合ってからだいぶ月日が経って、互いにそう確信できるから本物なのだろう。
心が好き。声が好き。顔も好き。身体は、そんなに。

運動は苦手。一緒にランニングしたとき嫌そうな表情をしていたからもう誘わない。
ご飯も食べなかったりする。貧血で生理不順で身体は痩せている。不健康な身体が嫌い。

そんな彼女の手は酷く冷たくて、それが嫌で、温めたくてぎゅっと握りしめる。彼女は幸せそうに握り返してくる。幸せそうな顔を見て、僕も幸せになってしまう。でも、違う、そうじゃない。単なる優しさで温めてあげようとしてるんじゃないんだ。もっと不純なんだよ、汚い感情なんだよ。ごめん。
その言葉を心の内に留め、はにかんで、軽くキスをする。ゆっくり舌を絡めて、頬に口づけをして、抱きしめながら首筋を噛む。その隙に彼女の見えないところで勃起薬を口に含む。以前、初体験で失敗して軽くEDになったときに買った余り。もう治っているけれど、最近になってまた飲み始めた。彼女の体で足りなくなることが怖いから。
なんて最低なんだ。こんな心地じゃ、まだEDだ。


「肉体なんて年がたてば関係なくなる」「長続きするのは心の相性」「相手の体が気になるのは愛していない証拠」「ありのままの彼女を愛してあげて」

うるさい。黙れ。そんなこと分かりきっている。
女性の肉体をとやかく言う男は最低で糞野郎だ。だからこうして苛まれているのだろう。
じゃあいつになったら肉欲が関係なくなるんだ。彼女の体を素直に受け入れられないことが、どうして今彼女を愛していないことになるのか。「愛する」とはなんだ。
とっとと大人になって肉欲がなくなって、早く老いぼれてしわくちゃになった彼女とソファで昼ドラをぼうっと眺める日まで、早送りしてくれないか。

以前に、一緒に運動しようとか、健康であってくれとか言ったことがある。
そのたびに彼女は「私じゃ足りないの?」と当たり前に泣く。彼女が泣いた瞬間に、僕はどうしようもなく彼女が愛おしくなって「ごめんね、俺が悪かった」「好きだよ」と言って抱きしめる。
こんな「好きだよ」を二度と吐きたくない。
しばらく幸せを抱えて、冷えた彼女の手に触れて、また僕は嫌になる。とんだ茶番劇だ。

性格の相性が良ければ、身体は気にしなくていいのだろうか。それを満たしてようやく、心が満たされるんじゃないだろうか。
「心を愛して」「ありのままを愛して」を盾に、努力することを蔑ろにしてないだろうか。
そんなことを考える俺の心が、一番嫌いだ。

今日も僕は彼女の冷たい手を握る。足りない彼女を愛したくて。
 ツイートする
おすすめの純猥談
助演のわたし
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
つづ さんからの純猥談
つづきをよむ >
「今日で最後だから、もう一回だけしよう?」
⚠この純猥談は不倫表現を含みます。
スライム さんからの純猥談
つづきをよむ >
風俗嬢まりんの性愛テクニック講座
平凡妻 さんからの純猥談
つづきをよむ >