彼の中の私は「綺麗で純粋なまま」で止まっている
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
思い出は良くも悪くも記憶に残る。
円満に別れた相手や片思いをしていた相手との思い出に関しては、もはや自分の中で知らず知らずのうちに美化してるんじゃないかと思うくらい綺麗に見える。
そのせいで戻りたくなるが、戻った所で成功確率は低い。
1度離れた相手との関係の再構築や復縁の話をする時によく聞くフレーズだ。
でもそんな綺麗だった思い出はちょっとした出来事でいとも容易く汚すことが出来てしまうし、そのつまらない続編も簡単に見ることが出来てしまう。
私が今から語る思い出もその1つだ。
きっかけは成人式。
昔付き合っていた元彼と再会して何となく連絡先を交換して、友達も交えて飲みに行った。
彼と別れてから数年経ってはいるが、久々に話す彼は付き合ってた頃と変わらず真面目で優しい、絵に書いたようないい人だった。私もその変わらなさが嬉しかった。
解散後、酔った勢いで2人でホテルに泊まった。
学生時代、それなりに長く付き合ってはいたが1度も交わった事はなく、健全な関係だった。
むしろ10ヶ月目でやっと手を繋ぐという、今どき小学生でもかけないような時間をかけて進めた関係だった。
彼が昔と変わっていなかったから、一緒に寝ても何も起こらないだろうと言う謎の自信があったし、実際何も起こらなかった。
ただ仰向けに寝転びながら昔を思い出し語り合う。
河原で殴りあって和解する青春漫画のワンシーンのようだなと思った。ベッドじゃなければ気分は主人公だったと思う。
昔の思い出話や今の彼の恋人について、私が最近別れた恋人についてなど1時間ほど話した頃、アルコールの手助けもあって瞼が重くなる。
「俺さ、君のこと本当に好きで大事だったからさ。絶対に汚しちゃいけないと思ってたし今でも思ってる。そういうことしちゃいけない。仲のいい友達に戻れたらそれが一番いい」
そのまま眠りにつこうか悩んでいた私に、彼が真面目な声で話をする。
「あぁ、だからやけに大事にされてたのか」とか「私の事神格化し過ぎじゃないか」とか、思うことは沢山あった。でも睡魔には勝てず、適当な相槌を打って眠りについた。
ここで続編の再生を止めておくべきだったのだが、あの時の私は何故かその続きまで進めてしまった。好奇心に勝てなかったのだ。
それぞれが地元から戻ってから少しして、久々に見た通知。
「3日間くらい彼女が友達と旅行いくんだけど泊まりに来ない?寂しいんだよね」
3秒ほど固まってしまった。
泊まりに誘うの急すぎないかとか第一声がそれなのか。
そもそもそんなタイプの人だったっけとか、色んな事を考えた。
だが、自己肯定感が恐ろしく低い私は他人に求められると行ってしまうのだ。
次の日、後ろめたさを抱えながら彼の住む町へと向かう。
駅まで迎えに来てくれていた彼と一緒に彼の家へ向かう。
ドアを開けて声を失った。
玄関にある女物の靴。
床に散らばる女物の部屋着やメイク道具。
あろうことか彼は彼女と同棲している家に私を呼んだのだ。
この時点で私は激しく後悔していた。帰るなりネカフェに泊まるなりすればよかった。
それでもこの時、求められたことが嬉しかった私はその家に足を踏み入れた。
彼と一緒にご飯を作り、一緒に食事をして、一緒に布団に入った。
部屋を暗くして30分程した頃。
私の中の思い出が泡のように消えていくのを感じた。
後ろから抱きしめてくる彼の腕を解く。
「するの?彼女と寝てるベッドで?私にそういうことしちゃいけないって言ったのに?」
と聞いたのだが、彼は困ったように笑った。
たった一言「ごめん」と誰への謝罪かもわからない言葉を呟いて、私を抱いた。
やけに丁寧な前戯は彼女に仕込まれたものだろうか。
この体位は彼女の好みなのだろうか。
気づいていなかっただけで彼は変わっていたんだな。
抱かれている間、私は壁に飾られたツーショットを眺めながら、ぼんやりとそんなことばかり考えていた。
しばらくして行為が終わり、水を持ってベッドに戻ってきた彼が悪びれる様子もなく
「昔から変わらないね。ずっと綺麗で純粋なまま」と私の頬を撫でる。
その言動が私の何かに触れた。
恐らく、私は変わってしまった彼を知ったのに、彼は変わった私を見ることもなく生きていく。
その事実が不快だったのだと思う。
ねぇ、ちゃんと上書きしてよ。
私、君と別れてから色んな人と付き合ったよ。
一晩の関係も経験したし、セフレがいた事もある。風俗だって始めたの。
だからね、もう何人に抱かれたかもわからないし、私の住む所から君の住む所までの飛行機代も時給で往復出来ちゃうんだ。
今回のでわかったと思うけど、求められたら彼女がいても、彼女と同棲している部屋でも、彼女の物があっても応じることが出来るような女になった。
それでもまだ、昔と変わらず「綺麗で純粋なまま」だって言える?
もう綺麗だった頃の私を私は思い出せないし、私の中に残っていた綺麗だった貴方もこの瞬間泡のように消えてしまった。
どうして貴方だけ、なんて言葉は一切声に出さなかったけれど、いつまでも私を綺麗なものとして見ている彼が急に憎らしく見えた。
思い出の中の私ごと汚れてしまえと思った。
私ですらもう会えない、棄ててしまったいつかの私を見ている彼がとても狡く見えた。
あぁ、これだからやっぱり続編はつまらない。
円満に別れた相手や片思いをしていた相手との思い出に関しては、もはや自分の中で知らず知らずのうちに美化してるんじゃないかと思うくらい綺麗に見える。
そのせいで戻りたくなるが、戻った所で成功確率は低い。
1度離れた相手との関係の再構築や復縁の話をする時によく聞くフレーズだ。
でもそんな綺麗だった思い出はちょっとした出来事でいとも容易く汚すことが出来てしまうし、そのつまらない続編も簡単に見ることが出来てしまう。
私が今から語る思い出もその1つだ。
きっかけは成人式。
昔付き合っていた元彼と再会して何となく連絡先を交換して、友達も交えて飲みに行った。
彼と別れてから数年経ってはいるが、久々に話す彼は付き合ってた頃と変わらず真面目で優しい、絵に書いたようないい人だった。私もその変わらなさが嬉しかった。
解散後、酔った勢いで2人でホテルに泊まった。
学生時代、それなりに長く付き合ってはいたが1度も交わった事はなく、健全な関係だった。
むしろ10ヶ月目でやっと手を繋ぐという、今どき小学生でもかけないような時間をかけて進めた関係だった。
彼が昔と変わっていなかったから、一緒に寝ても何も起こらないだろうと言う謎の自信があったし、実際何も起こらなかった。
ただ仰向けに寝転びながら昔を思い出し語り合う。
河原で殴りあって和解する青春漫画のワンシーンのようだなと思った。ベッドじゃなければ気分は主人公だったと思う。
昔の思い出話や今の彼の恋人について、私が最近別れた恋人についてなど1時間ほど話した頃、アルコールの手助けもあって瞼が重くなる。
「俺さ、君のこと本当に好きで大事だったからさ。絶対に汚しちゃいけないと思ってたし今でも思ってる。そういうことしちゃいけない。仲のいい友達に戻れたらそれが一番いい」
そのまま眠りにつこうか悩んでいた私に、彼が真面目な声で話をする。
「あぁ、だからやけに大事にされてたのか」とか「私の事神格化し過ぎじゃないか」とか、思うことは沢山あった。でも睡魔には勝てず、適当な相槌を打って眠りについた。
ここで続編の再生を止めておくべきだったのだが、あの時の私は何故かその続きまで進めてしまった。好奇心に勝てなかったのだ。
それぞれが地元から戻ってから少しして、久々に見た通知。
「3日間くらい彼女が友達と旅行いくんだけど泊まりに来ない?寂しいんだよね」
3秒ほど固まってしまった。
泊まりに誘うの急すぎないかとか第一声がそれなのか。
そもそもそんなタイプの人だったっけとか、色んな事を考えた。
だが、自己肯定感が恐ろしく低い私は他人に求められると行ってしまうのだ。
次の日、後ろめたさを抱えながら彼の住む町へと向かう。
駅まで迎えに来てくれていた彼と一緒に彼の家へ向かう。
ドアを開けて声を失った。
玄関にある女物の靴。
床に散らばる女物の部屋着やメイク道具。
あろうことか彼は彼女と同棲している家に私を呼んだのだ。
この時点で私は激しく後悔していた。帰るなりネカフェに泊まるなりすればよかった。
それでもこの時、求められたことが嬉しかった私はその家に足を踏み入れた。
彼と一緒にご飯を作り、一緒に食事をして、一緒に布団に入った。
部屋を暗くして30分程した頃。
私の中の思い出が泡のように消えていくのを感じた。
後ろから抱きしめてくる彼の腕を解く。
「するの?彼女と寝てるベッドで?私にそういうことしちゃいけないって言ったのに?」
と聞いたのだが、彼は困ったように笑った。
たった一言「ごめん」と誰への謝罪かもわからない言葉を呟いて、私を抱いた。
やけに丁寧な前戯は彼女に仕込まれたものだろうか。
この体位は彼女の好みなのだろうか。
気づいていなかっただけで彼は変わっていたんだな。
抱かれている間、私は壁に飾られたツーショットを眺めながら、ぼんやりとそんなことばかり考えていた。
しばらくして行為が終わり、水を持ってベッドに戻ってきた彼が悪びれる様子もなく
「昔から変わらないね。ずっと綺麗で純粋なまま」と私の頬を撫でる。
その言動が私の何かに触れた。
恐らく、私は変わってしまった彼を知ったのに、彼は変わった私を見ることもなく生きていく。
その事実が不快だったのだと思う。
ねぇ、ちゃんと上書きしてよ。
私、君と別れてから色んな人と付き合ったよ。
一晩の関係も経験したし、セフレがいた事もある。風俗だって始めたの。
だからね、もう何人に抱かれたかもわからないし、私の住む所から君の住む所までの飛行機代も時給で往復出来ちゃうんだ。
今回のでわかったと思うけど、求められたら彼女がいても、彼女と同棲している部屋でも、彼女の物があっても応じることが出来るような女になった。
それでもまだ、昔と変わらず「綺麗で純粋なまま」だって言える?
もう綺麗だった頃の私を私は思い出せないし、私の中に残っていた綺麗だった貴方もこの瞬間泡のように消えてしまった。
どうして貴方だけ、なんて言葉は一切声に出さなかったけれど、いつまでも私を綺麗なものとして見ている彼が急に憎らしく見えた。
思い出の中の私ごと汚れてしまえと思った。
私ですらもう会えない、棄ててしまったいつかの私を見ている彼がとても狡く見えた。
あぁ、これだからやっぱり続編はつまらない。