木曜日の夜だけ、君は僕のことを考えてくれる
どんなに忙しくても木曜日の夜は定時で帰ると決めている。
20時には家に帰って部屋を片付ける。
そして21時をすぎた頃、駅で待っている君を迎えにいく。

仕事の愚痴、最近食べた美味しいもの、子どもの頃の夢。
君はお酒を飲むと本当によく喋る。そして一通り喋った後「また喋りすぎた……」と反省して少し落ち込む。
慰めるために頭を撫でると、ゆるゆる笑う。そんな顔されるからこっちの頬も緩んでしまう。


風呂上がりの君からはいつも甘い匂いがする。僕が使っているシャンプーとは違う匂い。トリートメントを持参していると言っていた。
時々「出しすぎた」と言いながら、洗い流さないタイプのトリートメントを僕の頭にもつけてくる。おかげで僕も甘い匂いになるし、起きた時の寝癖がマシになる。

最近、君はこちら側を向いて眠るようになった。はじめの頃はいつも背を向けられていた。君にとって親しい存在になってきたことを実感する。
抱き寄せると胸に顔を埋めてくる。普段見ている姿よりずっと小さく感じる。

背中を撫でるとくすぐったがって逃げようとする。逃がさないよう、抱いている腕に力を込める。すると不満げに鎖骨のあたりを甘噛みしてくる。
そんなことされても煽られるだけなんだけど、といつも思う。
君はわかっているのだろうか。もしかするとわざとなのかもしれない。

触れるたび小さく声を漏らす。
必死にしがみついてくる手、こちらを見つめる切ない目、物欲しげに動く腰。
そのすべてが可愛くてどうしようもない。溶けてしまいそうなほど熱い君をもっと熱くさせたくなる。
僕のことだけ考えていればいい。僕のことしか考えられなくなればいい。
そんな呪いをかけているなんて、君は知らないだろうね。


アラームに起こされても君は全然放してくれない。
寝起きの悪さには少し呆れる。そうはいっても僕も本気で抵抗しない。
だって君が甘えてくるのはこの瞬間しかない。ぎゅーっと効果音が聞こえそうなほど力をこめてしがみついてくる。
そして寝ぼけた声で「いかないで」と言ってくる。これに勝てるヤツはそういないだろう。ずっとこうしていたいといつも思う。


何事もなかったかのように駅で別れる。
「いってらっしゃい」と言って小さく手を振る君。いってきます、と答える僕。

君と過ごせる時間は一週間のうち一晩だけ。週末はどこにいってなにをするのだろうか。誰と会ってどんなふうに笑うのだろうか。
他の曜日は、僕以外の家にいくのだろうか。僕は君のことをよく知らない。
僕たちは恋人同士ではないから。


以前告白はしたけど、答えは曖昧なままになっている。
だから君から見た今の僕は、お酒を奢って、丁寧に抱いて、面倒なことは言わないヤツ。
いわゆる都合のいい存在だという自覚はある。でも今はそれでも構わないと思っている。


『来週、また行ってもいい?』

金曜日の朝、このメッセージが届くうちは都合のいい僕のままでいい。
でもできれば、呪いがはやく効いてくれるといいな。
 ツイートする
おすすめの純猥談
助演のわたし
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
つづ さんからの純猥談
つづきをよむ >
「今日で最後だから、もう一回だけしよう?」
⚠この純猥談は不倫表現を含みます。
スライム さんからの純猥談
つづきをよむ >
風俗嬢まりんの性愛テクニック講座
平凡妻 さんからの純猥談
つづきをよむ >