曖昧で無責任で、甘ったるい関係に浸っていただけ
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
「私、彼氏とヨリを戻すことになるかもしれない」

週末、いつものように僕の家に来て、ベッドで並んで映画を観ているときに彼女は言った。

「えっそうなの?」

彼氏というのは、ずっと遠距離で、おそらく1年前に別れたと思われる男のことだろう。

思われる、というのは、それを明確に彼女の口から聞いたわけではないからで、正確には今この場で、別れていたことを知った。
同時に、その男とヨリを戻すかもしれないことも。


僕と彼女との付き合いは4年近く前に遡る。

当時大学生だった僕らは、酔った勢いというありきたりな理由で初めて身体を重ねた。

当時から彼女には恋人がいたけれど、彼女は男の僕からみても決していい彼氏とは言えないその恋人に振り回されては、僕に話を聞いてとすがってきた。
僕も恋人と別れたばかりで色々なことが上手くいかない気がして、メンタルが疲弊したときにはいつも彼女に連絡をした。
僕らは似たもの同士で、お互いの良き理解者であると同時に、身体を重ねることでお互いの満たされない何かを埋めようとしていたのかもしれない。

でも、他の身体だけの関係の人とは違って、彼女との行為は僕を満たしてくれる気がしたし、僕らはただのセフレではなく「行為もする友達」だった。


僕らの関係は社会人になっても続いていた。

そんな彼女が冬のある日、

「今度こそ彼氏と決着をつけてくる。次に会ったときに報告するね」

とだけ宣言して、遠距離の彼氏のところへ会いに行った。

何の決着をつけるんだろうなと思いながら、頑張ってね、と伝えたその1週間後、彼女と会うことになった。
例の彼氏とのことについて話してくれるのかと思ったけど、彼女はそれについては何も言わなかった。だから僕もそれ以上は聞かなかった。
何かあったんだろうけど、彼女が話したいと思えるまで待とう、と。


代わりに、僕らは毎週末を一緒に過ごすようになった。

一緒にいるときの僕らは、ほとんど恋人同士のようだったと思う。
出かけるときは手を繋いだし、寝るときは彼女を抱きしめた。ワンルームの狭い部屋にいても不満がないし、妙に潔癖症なところも同じだし。
何よりずっと一緒にいることで見えてくる様々な彼女がとても可愛かった。

一緒にいればいるほど、彼女に惹かれていくのが自分でもわかった。

肌を合わせている間だけは素直になれる気がして、僕らの行為は今までとは比べ物にならないほど甘くなった。彼女が好きなことはなんでもしてあげたかったし、抱きしめあって果てるときはいつもキスをした。

付き合えてしまうな、という思いが何度も頭をよぎったけれど、「友達」だからうまくいっているのかもしれないし、下手なことを言い出して今の心地よい関係が壊れるのも嫌だった。
これだけ僕と会っているなら、決着をつけると言った恋人とは多分別れたのだろうと思ってはいたけれど、彼女の口から話を聞くまで何も言い出せなかった。


この関係がずっと続くわけではないことくらい、頭のどこかではわかっていた。それでもこの名前のない曖昧な関係を手放したくなかったし、何故か彼女はどこにもいかないと勝手に思い込んでいた。それなのに。


「それで、君は幸せなの?」

思わず聞いた。だって、その男と付き合っていた頃の君はあまり幸せそうではなかったから。

「そんなのわかんないよ」

少し怒ったように彼女は言った。

「でも、彼、東京に帰ってくるんだって。だから少ししたら同棲するのかもしれない。」

ああそうか。それでヨリを戻すなのか。

そして彼女は少し間を置いてから、

「君が付き合ってくれたらよかったのにな」

と冗談めかして笑った。

「でも私たちって似たものどうしだからさ、きっとお互い、付き合えちゃうなと思いつつ、何の責任も縛りもない関係に甘えてたんだよね」

彼女は、僕が思っていたことと同じ言葉を口にした。
似たもの同士だから、同じことを思って、でも同じように考えて、その先には進めなかった。

だけどなんで彼氏と別れたって言ってくれなかったんだよ。
なんで僕はそれを聞けなかったんだよ。いくらでも機会はあったじゃないか。
なんで、なんで、なんで。

いや、結局僕に、勇気も責任もなかっただけだ。
彼女の恋人について聞けなかったのは、別れたと言われてしまったら、今の関係が変わってしまいそうな気がしたから。
彼女の言う通り、僕らは曖昧で無責任で、甘ったるい関係に浸っていただけなのだ。


今から、じゃあ僕と付き合おうよ、なんて言ってももう遅い。

僕は黙って、彼女の頬に手を添えてキスをした。彼女は躊躇いがちに目を伏せ、口を開いて舌を絡めた。
そうして僕らは、いつになく優しく、丁寧に、そして激しく求めあった。
彼女を大切に扱いたかったし、同時にめちゃくちゃにもしたかった。

彼女は何度も絶頂に達して、お互いの汗と涙でぐちゃぐちゃになりながら、初めて、やっと、すきだよ、と言った。
彼女も、私もすきだった、と言った。


翌朝、彼女はじゃあね、といつも通りに僕の家を後にした。
僕も、ばいばい、といつも通りに見送った。


別に彼女と縁が切れた訳ではない。また共通の友達を含めてご飯を食べるくらいはするのだろう。だけど、たぶん彼女と身体を重ねることは、きっともうない。

もし僕らがあと一歩、いや、半歩づつでも踏み出していたら、違う未来があったのだろうか。

きっと僕はこれから先、ずっとそれを考えてしまうんだろう。
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