綺麗な顔。だからこいつは今まで許されてきたんだな。
「綺麗だよね」
バイト先に2ヶ月早く居たあなたの容姿に先輩と同僚はそう言った。
イケメンじゃなくて綺麗だと初めて思った、彫刻みたいだね、と。
ふと目をやった店先にすっと立つ君は確かに綺麗で
初日は1時間だけ被ったシフトで、少しだけ会話した。
彼は私の2つ年上で、大学生になったばかりの私からはすごく大人に見えた。
「一緒に帰らない?」
言われたのは3回目か4回目に会った日。
次の日に遊ぶ約束をした。
綺麗な彼の横顔を見ながら「色んな人と遊びに行くんだろうな」としか思わなくて。
だから告白された時は間抜けな反応をしてしまった。
「初めは一目惚れだったけど、留学とか尊敬するし内面も好きになった」
幸せだった。
どこに行く時もずっと手を繋いでいて、見上げて話をする度に、綺麗に笑う彼を見ていた。
付き合って2ヶ月経った時。
彼がふと、インスタのDMで友達と話す私のスマホを覗いてきた。
「誰?友達?」
「うん」
「ちょっと貸して?」
少し触れたあと手に戻ってきた携帯から、男友達の履歴が消えた。
消された、と理解するのに少しかかって
「何で?」
「嫌だから。男女の友情とか無いよ。」
「でも、何も言わずに勝手なことしないで」
今までこんなことは一切なかったから、ただ動揺した。
明らかにその場しのぎでごめんと言った彼が相変わらず綺麗で、
その時はそれが少し嫌だった。
それ以降彼はよく私の携帯を見るようになった。
私は男友達と業務連絡だけしていた。
それすら嫌がる彼に、「俺の携帯見ていいよ」と差し出された画面には
女友達との甘えたやりとり。
なぜ平気で見せられるんだろう。
「高二の時から遊んでて」
「でもあいつは可愛くないから心配しないで」
「この子俺以外に友達いないんだよね、本人も言ってる」
「だから仕方ないじゃん?」
仕方ない?
そんなわけないだろ。
自分だけ棚上げして。
嫉妬して腹が立って、叫び出しそうになるのを必死で抑えた。
私に禁止することを、目の前で平気でする。
「されて嫌なことはしない」
これが本当に理解できない、と言わんばかりに彼の行動の全てが私の心を抉った。
それなのに、私の目が映す彼はずっと綺麗で。
どうして?私は今こんなに醜いのに。
綺麗な顔。
ああ、そうか。
綺麗だからか。
だからこいつは今まで許されてきたんだな。
束縛も
噛み跡も
ゴム無しでしようとした時も
「あの話ね、やっぱり女友達は「それは彼女さん彼くんのこと分かってないね〜」って言ってたよ」とか言ってきた時も。
行為が下手なのも、
全部適当にご機嫌とられてきたんだな。
正してくれる人は居なかったんだな。
みんな綺麗な顔の君の機嫌を損ないたくなくて。
それに寄ってくる女と恋愛してきたから。
可哀想な奴。
いっそのことその綺麗な顔、壊してやろうか。
ここまで思って、涙が出た。
醜い。私。
泣いて擦った目と浮腫んだ顔も、
そんなことを思いつく内面も
全部醜い。
彼だって醜いはずなのに。
なんでお前だけ綺麗なままなんだ。
「もう無理、関わりたくない」
とだけ打って、その日から連絡をやめた。
電話とLINEと、
ストーリーに既読をつけに来る彼の5個目のアカウントをブロックした。
彼の綺麗なままの顔を見ても何も感じなくなった頃、
彼とあの女友達がペアルックをした写真を友達が見つけてきた。
「この2人本当に付き合ってないらしいよ。元彼くんは相変わらず、綺麗だよね。なんで別れちゃったの?」
「綺麗だからだよ」
「えーなにそれ、飽きたとか?」
「どうだろう」
もうどうでもいいけど。
これからもきっと、彼は綺麗なままだ。
バイト先に2ヶ月早く居たあなたの容姿に先輩と同僚はそう言った。
イケメンじゃなくて綺麗だと初めて思った、彫刻みたいだね、と。
ふと目をやった店先にすっと立つ君は確かに綺麗で
初日は1時間だけ被ったシフトで、少しだけ会話した。
彼は私の2つ年上で、大学生になったばかりの私からはすごく大人に見えた。
「一緒に帰らない?」
言われたのは3回目か4回目に会った日。
次の日に遊ぶ約束をした。
綺麗な彼の横顔を見ながら「色んな人と遊びに行くんだろうな」としか思わなくて。
だから告白された時は間抜けな反応をしてしまった。
「初めは一目惚れだったけど、留学とか尊敬するし内面も好きになった」
幸せだった。
どこに行く時もずっと手を繋いでいて、見上げて話をする度に、綺麗に笑う彼を見ていた。
付き合って2ヶ月経った時。
彼がふと、インスタのDMで友達と話す私のスマホを覗いてきた。
「誰?友達?」
「うん」
「ちょっと貸して?」
少し触れたあと手に戻ってきた携帯から、男友達の履歴が消えた。
消された、と理解するのに少しかかって
「何で?」
「嫌だから。男女の友情とか無いよ。」
「でも、何も言わずに勝手なことしないで」
今までこんなことは一切なかったから、ただ動揺した。
明らかにその場しのぎでごめんと言った彼が相変わらず綺麗で、
その時はそれが少し嫌だった。
それ以降彼はよく私の携帯を見るようになった。
私は男友達と業務連絡だけしていた。
それすら嫌がる彼に、「俺の携帯見ていいよ」と差し出された画面には
女友達との甘えたやりとり。
なぜ平気で見せられるんだろう。
「高二の時から遊んでて」
「でもあいつは可愛くないから心配しないで」
「この子俺以外に友達いないんだよね、本人も言ってる」
「だから仕方ないじゃん?」
仕方ない?
そんなわけないだろ。
自分だけ棚上げして。
嫉妬して腹が立って、叫び出しそうになるのを必死で抑えた。
私に禁止することを、目の前で平気でする。
「されて嫌なことはしない」
これが本当に理解できない、と言わんばかりに彼の行動の全てが私の心を抉った。
それなのに、私の目が映す彼はずっと綺麗で。
どうして?私は今こんなに醜いのに。
綺麗な顔。
ああ、そうか。
綺麗だからか。
だからこいつは今まで許されてきたんだな。
束縛も
噛み跡も
ゴム無しでしようとした時も
「あの話ね、やっぱり女友達は「それは彼女さん彼くんのこと分かってないね〜」って言ってたよ」とか言ってきた時も。
行為が下手なのも、
全部適当にご機嫌とられてきたんだな。
正してくれる人は居なかったんだな。
みんな綺麗な顔の君の機嫌を損ないたくなくて。
それに寄ってくる女と恋愛してきたから。
可哀想な奴。
いっそのことその綺麗な顔、壊してやろうか。
ここまで思って、涙が出た。
醜い。私。
泣いて擦った目と浮腫んだ顔も、
そんなことを思いつく内面も
全部醜い。
彼だって醜いはずなのに。
なんでお前だけ綺麗なままなんだ。
「もう無理、関わりたくない」
とだけ打って、その日から連絡をやめた。
電話とLINEと、
ストーリーに既読をつけに来る彼の5個目のアカウントをブロックした。
彼の綺麗なままの顔を見ても何も感じなくなった頃、
彼とあの女友達がペアルックをした写真を友達が見つけてきた。
「この2人本当に付き合ってないらしいよ。元彼くんは相変わらず、綺麗だよね。なんで別れちゃったの?」
「綺麗だからだよ」
「えーなにそれ、飽きたとか?」
「どうだろう」
もうどうでもいいけど。
これからもきっと、彼は綺麗なままだ。