時間が全て解決してくれるなんて嘘っぱちだ
最初の第一印象は、無し寄りの有りだった。
特にタイプではなかったけれど、待ち合わせ場所に腰掛けた彼女の姿を、昨日のことのように思い出せる。

きっかけはよくある友人の彼女の紹介だった。
「今彼女いないんでしょ?連絡だけでも。」
友人の彼女にそんな風に背中を押されて渋々連絡を取り始め、会ってもいないのに通話時間が2時間越えた頃にはもう好きになりかけていたのかもしれない。


当時の僕は大学の留年が確定したダメ学生で、彼女は1つ年下の社会人だった。
「初めての食事は絶対個室!」という友人から授かったありがたい教えを胸に居酒屋を選んだ店はえらく狭い個室で、妙に距離が近くなってしまった。
お互い平常心ではいられなくなったことを覚えている。

その後というと、酒に酔ったいい感じの男女がたどる道は決まっている。

当時貧乏学生だった僕は彼女にホテル代の一部を借りた。
情けなくて、穴があったら入りたい衝動を抱えながら彼女の穴へと潜り込んだ。


そこからというもの、健全なお付き合いを2年程続けた。

夏生まれのお互いを祝いあったり、クリスマスを2人で過ごし、なばなの里でイルミネーションを見て、彼女と過ごす将来を考え、そんな未来にも満足していた。
映画デートを終えた後にエンドロールで好きな芸能人を聞かれて、宮崎あおいと答えたら彼女はえらく不機嫌になっていた。理由を聞いたら「私と全然タイプ違うくない!?」と怒っていたっけな。
お互いの両親にも挨拶を済ませていたし、留年ダメ大学生の僕に至っては彼女が仕事へ行くのを見送ってから、彼女の母親と遅めの朝ごはんを一緒に食べるような仲になっていた。


別れのきっかけなんてものは正直もう覚えていない。
僕が彼女に隠れてクラブで踊り明かしていたかもしれないし、就活をほっぽり出して友人と飲み明かしていたことが原因だったかもしれない。

ただ僕はいつまでも子供のままで、早く母親になりたがっていた彼女との溝が確かにあったんだろう。


別れてから半年は紆余曲折、世の中の大抵のカップルがそうであるように、
「もう一度やり直そう、僕が(私が)悪かった」
というようなやり取りをお互いに何度も何度もした。
その度に、隠しきれない未練と情が右往左往した。

結局、彼女と僕の人生はそれから2度と交わることは無かった。


風の便りに、2年前彼女が結婚したと聞いた。
友人から送られてきたSNSのスクショ画面には、彼女の好きだった青い色のドレスととびきりの笑顔が映っていた。


恋愛において「時間が全てを解決してくれる」なんて言葉がある。
ある意味で真理だが、ある意味で嘘っぱちだ。

僕は8年以上前に別れた彼女をいまだに引きずっている。
我ながら女々しいと思う。
彼女と別れてからそれなりに恋愛もしたし、恋人も出来た。
それでも、ふと1人になった時。
年の瀬や誕生日、自分の人生を振り返る時にはいつも彼女がいる。

もし、彼女と今でも付き合っていたなら。
もし、彼女と今でも一緒に居たなら。


僕は願う、彼女と僕の人生が二度と交わることが無いことを。
そして彼女が穏やかで幸せであることを。


「久しぶり、元気してる?」

2年前に届いたSMS。電話番号で送り主が誰か分かってしまう。お互い連絡先を消したはずなのに。
返信しないままの彼女からの最後のメッセージを、今日も胸にかかえて眠る。
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