「あなたとはいつか別れる、価値観が違う」
掃除も苦手だった。料理もほとんどできなかった。
でも彼女が求めるから、
彼女が喜んでくれるようにぜんぶ頑張ってきた。
「今日もうちに来て」
仕事の終わりも早く、友人も少ない彼女は
そうやって毎日僕を家に呼んだ。
僕は自宅で夕食をつくり、彼女の家に持っていくために買ったタッパーに料理を詰め、残っている仕事とともに彼女の家に向かう。
仕事を終え、一緒にご飯を食べて、
彼女がシャワーを浴びている間に洗い物と部屋の掃除を済ませる。
彼女の髪をドライヤーで乾かし、自分もシャワーを浴びる。
電気を消してくたくたになるまで抱き合ったあとは
彼女のシングルベッドの1/3を使って寝る。
朝起きたら始業に間に合うように彼女の家を出る。
そして「今日もうちに来て」と言われる。
そんな彼女は僕に対して「あなたとはいつか別れる、価値観が違う」と言う。
僕はそれが不安で仕方なくて「今日もうちに来て」に応えてしまう。
『そんな彼女、別れちゃいなよ』とみんなに言われたけど
これはこれで楽しかったし幸せだった。
「もうあなたとは付き合えない。好きだよ。ごめんね」
終わりは突然。付き合ってわずか3ヶ月だった。
自分勝手だ、なんていう怒りの気持ちよりも
まだ付き合ったばかりじゃん、という悲しい気持ちよりも
「やっと終わった」という、ほっとした気持ちのほうが大きかった。
それで気づいた。無理して付き合っていたのかもしれない、と。
いまはもう、毎晩自宅にいる。
自宅でご飯を食べ、自宅でシャワーを浴びる。
「恥ずかしい」と言いながらも「一緒に浴びたほうが早いよ」なんて笑った彼女はもういない。
髪を乾かしてほしそうに、僕のところに来る彼女ももういない。
付き合う前のように自宅で仕事をして、たまには友だちとお酒を飲んだりする。
たった3ヶ月付き合っただけの彼女のことなんて、忘れるのは簡単だと思っていた。
付き合う前の自分の暮らしになんとか慣れた頃、
ドライヤーをしまおうとして気づく。
コードの巻き方が彼女の家の巻き方に変わっていた。
そういえば前に「あなたのドライヤー、これどうやって巻いてるの」なんて言われて
彼女の家では、彼女がしていた巻き方をしていたんだっけ。
彼女が喜ぶように、掃除もしてきた。料理も勉強した。
ドライヤーのコードの巻き方だって、彼女に合わせてきた。
でもそれを喜んでくれる彼女はもういない。
残ったのはきちんと拭かれたキッチンと、少しも減っていない調味料と、
綺麗にコードを巻かれたドライヤー。
巻かれるコードに潜む彼女の面影。
たった3ヶ月だったけど、2人で一緒にいた時間は確かにそこにあったんだね。
引きずってるなんて思いたくないけど、いまだにコードの巻き方は戻せていない。
だって戻したら、本当に忘れてしまいそうだから。
でも彼女が求めるから、
彼女が喜んでくれるようにぜんぶ頑張ってきた。
「今日もうちに来て」
仕事の終わりも早く、友人も少ない彼女は
そうやって毎日僕を家に呼んだ。
僕は自宅で夕食をつくり、彼女の家に持っていくために買ったタッパーに料理を詰め、残っている仕事とともに彼女の家に向かう。
仕事を終え、一緒にご飯を食べて、
彼女がシャワーを浴びている間に洗い物と部屋の掃除を済ませる。
彼女の髪をドライヤーで乾かし、自分もシャワーを浴びる。
電気を消してくたくたになるまで抱き合ったあとは
彼女のシングルベッドの1/3を使って寝る。
朝起きたら始業に間に合うように彼女の家を出る。
そして「今日もうちに来て」と言われる。
そんな彼女は僕に対して「あなたとはいつか別れる、価値観が違う」と言う。
僕はそれが不安で仕方なくて「今日もうちに来て」に応えてしまう。
『そんな彼女、別れちゃいなよ』とみんなに言われたけど
これはこれで楽しかったし幸せだった。
「もうあなたとは付き合えない。好きだよ。ごめんね」
終わりは突然。付き合ってわずか3ヶ月だった。
自分勝手だ、なんていう怒りの気持ちよりも
まだ付き合ったばかりじゃん、という悲しい気持ちよりも
「やっと終わった」という、ほっとした気持ちのほうが大きかった。
それで気づいた。無理して付き合っていたのかもしれない、と。
いまはもう、毎晩自宅にいる。
自宅でご飯を食べ、自宅でシャワーを浴びる。
「恥ずかしい」と言いながらも「一緒に浴びたほうが早いよ」なんて笑った彼女はもういない。
髪を乾かしてほしそうに、僕のところに来る彼女ももういない。
付き合う前のように自宅で仕事をして、たまには友だちとお酒を飲んだりする。
たった3ヶ月付き合っただけの彼女のことなんて、忘れるのは簡単だと思っていた。
付き合う前の自分の暮らしになんとか慣れた頃、
ドライヤーをしまおうとして気づく。
コードの巻き方が彼女の家の巻き方に変わっていた。
そういえば前に「あなたのドライヤー、これどうやって巻いてるの」なんて言われて
彼女の家では、彼女がしていた巻き方をしていたんだっけ。
彼女が喜ぶように、掃除もしてきた。料理も勉強した。
ドライヤーのコードの巻き方だって、彼女に合わせてきた。
でもそれを喜んでくれる彼女はもういない。
残ったのはきちんと拭かれたキッチンと、少しも減っていない調味料と、
綺麗にコードを巻かれたドライヤー。
巻かれるコードに潜む彼女の面影。
たった3ヶ月だったけど、2人で一緒にいた時間は確かにそこにあったんだね。
引きずってるなんて思いたくないけど、いまだにコードの巻き方は戻せていない。
だって戻したら、本当に忘れてしまいそうだから。