どんなに思っても、うまくいかない恋を知りました。
付き合わなければよかった。
体を重ねなければよかった。
キスしなければよかった。
何回も後悔しては、巡っていたあの日々は、今はもう過去のこと。
友達づてに知り合った彼。
彼の家で飲んだときにした忘れ物を返してもらうのを口実に、最寄り駅のファミレスでいろんな話をした。夜が更けて朝になるまで。
こんなに一緒にいて落ち着くと思ったことはなかった。
価値観も合う、考え方も似ているこの人をきっと好きになる、そう思った。
付き合うまでに時間はかからなかった。
一緒に寝たベッドで、はじめてしたキスを思い出す。あんなに気持ちよくてとろけそうなキスははじめてだった。
付き合って1ヶ月。
最初は順調だったけれど、次第にどこかうまくいかなくなっていた。
大好きなのに、一緒にいると苦しい。
小さな不満も大きな愛情も伝えることができなくなってきて、お互いに相手に踏み込むことも踏み込まれることにも怯えていた。
好きでいてほしくて、お互いに遠慮ばかりしていたら、いつの間にか何も言えなくなっていた。
そういうだめなところまで、私たちは似ていた。
だけど行為だけはたくさんした。会うとほぼ、必ず。
身体で触れ合っているときは何も言わなくても気持ちを分かち合えるような気がしていた。今まで付き合ってきた人とは感じなかったような快感が襲ってきて、どうにかなりそうだった。隣で眠る時間が、幸せだった。
それでも、好きな気持ちより苦しさのほうが勝ってしまって、無理矢理にさよならをした。
彼の家を出る前、玄関で私を見つめる視線は何か意味ありげだったけれど、何も聞かなかった。聞けなかった。
切れ長の目が、じっとこちらを見つめる熱っぽい視線が、私は好きだった。
彼が言ったことで覚えているのは「あのファミレスの頃に戻りたい」ということだけ。私も心の底からそう思った。
相手にありのままをさらけだす勇気がなかった私たちは、あまりにも近くにいすぎて疲れてしまった。
大切だからこそ、どこか遠ざけてしまった。考えすぎてしまった。
あの夜のキラキラした気持ちは今はもうどこにもなくて、だから眩しかった。
共通の知り合いとの集まりで久しぶりに彼と再会した日、ふたりで帰り道を歩いた。
「付き合っていた頃を思い出すね」と言う彼に、素直になれない私は「もう忘れたよ」と無愛想に答えてしまった。
嘘。ずっと覚えている。何度も反芻していた。僅かな間、幸せだったときのこと。
なんとなく彼の家に行った。ぎゅっと抱きしめあったら、もう止まらなかった。お酒の力を借りて、キスをして、ざらざらした唇の感触を確かめあった。入れていい?と聞かれてうん、と頷いた。
彼とする久しぶりの行為。待ち望んでいたはずなのに、全然気持ちよくなかった。上になったとき、目を閉じて時間が過ぎるのを待つ彼が視界に入って恥ずかしくなった。
自分が乗った船なのに。責める気持ちが募った。
今までで一番最低な夜だった。
元カレとの行為は、悲しい性欲と過去への執着に満ちた、何のプラスにもならないただのガラクタだった。
あの頃は、純粋にただお互いのことが好きだったから気持ちよかったのだ、と今さら気づいた。
そして今では、もうその気持ちが失われてしまっていることも。
また気軽に遊んだり、話したりするような仲には戻れないことを私は悟った。
その後、私たちは付き合っていた頃にはしなかった喧嘩を、はじめてした。
今まで言えなかったこと、不満をぶちまけ、罵り合い、疲弊した。
そしてようやく、彼と一緒にはいれないと踏ん切りがついた。
しなきゃよかったね、と彼に言われた。
安易な性欲にまかせて、私たちは永友達に戻る機会を、また恋人に戻る機会を永遠に失ったのだ。
お互いを好きな気持ちを、大切にできなかった。
それはあの頃と同じで、私たちは不器用なまま、1年前と何も変わっていなかった。
「私のことすきだった?」
「もちろん」
食い気味に言う彼が昔みたいに愛おしくて、それだけで何もかも報われる気がした。
たとえうまくいかなくても、私と彼が一緒にいる意味はあったのかな。
その言葉を胸に生きていこう。そう決意した。
彼を傷つけたことを、彼に傷つけられたことを、無駄にしないために。
今は大好きな彼氏がいる。
普通に出会って、普通の過程を踏んで付き合い、普通にたまに喧嘩をする。
穏やかな日々の中で、とても大切に、向き合っている。
あの人と一緒にいた頃があんなに苦しかったのが嘘のように、しっくりきている。
それがどこか切なくて、でも前に着実に進んでいると思える。
もう二度と、あの人に会うことはないだろう。このまま何もなかったかのように忘れていくのだろうか。それでもいいと思う。
気が狂いそうなほど、好きでした。愛してました。
どんなに思っても、うまくいかない恋を知りました。
私は幸せになります。君ではない誰かと。
だから君も、私ではない誰かと幸せにになってね。
体を重ねなければよかった。
キスしなければよかった。
何回も後悔しては、巡っていたあの日々は、今はもう過去のこと。
友達づてに知り合った彼。
彼の家で飲んだときにした忘れ物を返してもらうのを口実に、最寄り駅のファミレスでいろんな話をした。夜が更けて朝になるまで。
こんなに一緒にいて落ち着くと思ったことはなかった。
価値観も合う、考え方も似ているこの人をきっと好きになる、そう思った。
付き合うまでに時間はかからなかった。
一緒に寝たベッドで、はじめてしたキスを思い出す。あんなに気持ちよくてとろけそうなキスははじめてだった。
付き合って1ヶ月。
最初は順調だったけれど、次第にどこかうまくいかなくなっていた。
大好きなのに、一緒にいると苦しい。
小さな不満も大きな愛情も伝えることができなくなってきて、お互いに相手に踏み込むことも踏み込まれることにも怯えていた。
好きでいてほしくて、お互いに遠慮ばかりしていたら、いつの間にか何も言えなくなっていた。
そういうだめなところまで、私たちは似ていた。
だけど行為だけはたくさんした。会うとほぼ、必ず。
身体で触れ合っているときは何も言わなくても気持ちを分かち合えるような気がしていた。今まで付き合ってきた人とは感じなかったような快感が襲ってきて、どうにかなりそうだった。隣で眠る時間が、幸せだった。
それでも、好きな気持ちより苦しさのほうが勝ってしまって、無理矢理にさよならをした。
彼の家を出る前、玄関で私を見つめる視線は何か意味ありげだったけれど、何も聞かなかった。聞けなかった。
切れ長の目が、じっとこちらを見つめる熱っぽい視線が、私は好きだった。
彼が言ったことで覚えているのは「あのファミレスの頃に戻りたい」ということだけ。私も心の底からそう思った。
相手にありのままをさらけだす勇気がなかった私たちは、あまりにも近くにいすぎて疲れてしまった。
大切だからこそ、どこか遠ざけてしまった。考えすぎてしまった。
あの夜のキラキラした気持ちは今はもうどこにもなくて、だから眩しかった。
共通の知り合いとの集まりで久しぶりに彼と再会した日、ふたりで帰り道を歩いた。
「付き合っていた頃を思い出すね」と言う彼に、素直になれない私は「もう忘れたよ」と無愛想に答えてしまった。
嘘。ずっと覚えている。何度も反芻していた。僅かな間、幸せだったときのこと。
なんとなく彼の家に行った。ぎゅっと抱きしめあったら、もう止まらなかった。お酒の力を借りて、キスをして、ざらざらした唇の感触を確かめあった。入れていい?と聞かれてうん、と頷いた。
彼とする久しぶりの行為。待ち望んでいたはずなのに、全然気持ちよくなかった。上になったとき、目を閉じて時間が過ぎるのを待つ彼が視界に入って恥ずかしくなった。
自分が乗った船なのに。責める気持ちが募った。
今までで一番最低な夜だった。
元カレとの行為は、悲しい性欲と過去への執着に満ちた、何のプラスにもならないただのガラクタだった。
あの頃は、純粋にただお互いのことが好きだったから気持ちよかったのだ、と今さら気づいた。
そして今では、もうその気持ちが失われてしまっていることも。
また気軽に遊んだり、話したりするような仲には戻れないことを私は悟った。
その後、私たちは付き合っていた頃にはしなかった喧嘩を、はじめてした。
今まで言えなかったこと、不満をぶちまけ、罵り合い、疲弊した。
そしてようやく、彼と一緒にはいれないと踏ん切りがついた。
しなきゃよかったね、と彼に言われた。
安易な性欲にまかせて、私たちは永友達に戻る機会を、また恋人に戻る機会を永遠に失ったのだ。
お互いを好きな気持ちを、大切にできなかった。
それはあの頃と同じで、私たちは不器用なまま、1年前と何も変わっていなかった。
「私のことすきだった?」
「もちろん」
食い気味に言う彼が昔みたいに愛おしくて、それだけで何もかも報われる気がした。
たとえうまくいかなくても、私と彼が一緒にいる意味はあったのかな。
その言葉を胸に生きていこう。そう決意した。
彼を傷つけたことを、彼に傷つけられたことを、無駄にしないために。
今は大好きな彼氏がいる。
普通に出会って、普通の過程を踏んで付き合い、普通にたまに喧嘩をする。
穏やかな日々の中で、とても大切に、向き合っている。
あの人と一緒にいた頃があんなに苦しかったのが嘘のように、しっくりきている。
それがどこか切なくて、でも前に着実に進んでいると思える。
もう二度と、あの人に会うことはないだろう。このまま何もなかったかのように忘れていくのだろうか。それでもいいと思う。
気が狂いそうなほど、好きでした。愛してました。
どんなに思っても、うまくいかない恋を知りました。
私は幸せになります。君ではない誰かと。
だから君も、私ではない誰かと幸せにになってね。