私は行為中に服を脱がない。相手に嫌われたくないから。
私は行為中に服を脱がない。

醜い自分の身体をさらけ出したくないから。
相手に嫌われたくないから。

私は、背骨が湾曲してしまう病気を持っている。
特別命に関わるものでは無いが、外見にかなり影響が出る。
医師曰く、手術が必要な程曲がっている訳では無いため、大きな傷を伴う手術はメリットが少ないという。
しかし、肩の高さ、バストの位置や大きさ、骨盤の歪みなど、背骨が真っ直ぐでないというだけで全てがちぐはぐなのだ。

気にしすぎだ、と言われたら確かにそうなのかもしれない。
でも、どうしても自分の身体が好きになれない。
修学旅行や合宿みたいな泊まりのイベントは本当に地獄だった。大浴場に入らなきゃ行けない時は、何かと理由をつけて皆とは別に入っていた。毎回だもん、明らかに怪しいよね、分かってる。周りからの視線も地獄だった。
けれど、裸を見られて馬鹿にされるよりはマシだった。

服を着ればまだ誤魔化せても、脱いだら誤魔化せない。きっと、これを見たら誰もが幻滅するだろう。彼氏が出来た時も、この壁は大きかった。でも、好きな人とは繋がりたかった。そんな我儘から、服を着たままするという結論に至った。

代わりにテクニックは磨いたつもりだ。自分の身体で他の子を越えられない代わりに、相手を気持ちよくさせることに重点を置いた。痛くないか、どこが気持ちいか、どうされると嬉しいかなど、色々聞いて経験を積み重ねていった。

だが、当然怪しまれる。
「なんで脱いでくれないの?」「もしかして僕とするの嫌?」色んな憶測が立てられて相手を不安にさせてしまう。中には、キレて無理やり脱がそうとしてきた人もいた。

勇気をだして理由を伝えたこともある。
返ってくる答えは皆同じ「なんだ、そんなこと気にしないよ」

そんな訳ないよ、興味本位でしょ?
言う程大したことないだろって思ってるでしょ?
「萎える」とか言われたら立ち直れないんだけど、本当に責任とってくれるの?
信じられなかった。


23歳の春、就職してある程度貯金を蓄えていた私は、美容整形外科に来ていた。
やっぱり、ずっとこのままは嫌だった。
手術費用約200万円。少しでもマシにするために。マイナスからゼロになるために。
もちろん一括では払えないから、半分を頭金で、残りの半分を医療ローンで支払うことにした。

とっても痛かった。手術中は眠っていたから分からなかったけど、傷口付近は痣だらけ。ダウンタイムってやつだ。
いつも家から駅まで10分の道のりは20分かかり、浮腫と痛みで膝が90度より先に曲がらない生活が1ヶ月続いた。

痛みと痣がだいぶ引いてきた頃、学生時代の同級生から数年ぶりに連絡が来た。
まだ行為を経験する前、そこまで自分の体型を気にしていなかった頃に出会った人だ。
実は、私のファーストキスの相手でもある。
彼とは恋仲を噂されていたものの、付き合ってはいなかった。些細なことで喧嘩をし、そのまま学校を卒業した。

お互い相手がいなかった私たちは、あっという間に遊ぶ約束を取り付けた。
数年ぶりに見た彼は、昔とそんなに変わらなかった。少し声が低くなったかな?というくらい。
ランチや買い物を楽しんだ後、彼の家に泊まることになった。

しまったと思った。
これは、そういう流れだよね、と。

分かってはいたが、どうしても緊張してしまう。
いくら手術したとはいえ、23年間固めてきた性格はすぐには変わらない。
申し訳ないけど、することになったらちゃんと断ろう。

でも、彼は優しい人だった。
「やめて」と言えば本当にやめてくれる人だった。
ごめんねと謝って、背を向けて寝る誠実な人。

この人ならもしかしたら、と思い、今度は自分から誘ってみてしまった。
一瞬戸惑っていたが、優しく受け入れてくれた。

事が進むと、また「ごめんね」と謝られた。
何に謝られてるのか分からず不思議そうな顔をする私に対し、
「小さいでしょ、ごめんね」と申し訳なさそうに呟いた。
全く気にしていなかった私は「そんな事ないよ」と言いそうになったのを飲み込んだ。

彼は学校でも目立つタイプで、集合写真では1番前で寝そべるタイプのお調子者。
おまけに運動神経も良く、スポーツ推薦で大学へ行った程だった。
だから、てっきり自分に自信があるのかと思っていた。
そんな人でも自分に自信が無いことなんてあるんだ。

私と同じなんだな。
いつまでも意地を張り続ける自分がなんだか恥ずかしく思えた。
私もこうしていれば良かったのかな、なんて思いながら「そう?」とだけ言って続きをした。

この人なら大丈夫、と彼の手を私の前空きボタンの前まで誘導した。
多分、緊張で震えていたと思う。彼は優しくボタンを外してくれた。

背中に手が回る。
私は、初めて人前で服を脱いだ。

彼は、まるで全て見透かしているかのように
何も言わずに抱きしめてくれた。

結局最後まではしなかった。でも満足だった。
処女ではないはずなのに、全てが新鮮な感覚だった。
多分彼はここまで深く考えていないと思う。それが逆によかった。

終わった後彼に背を向けて、こっそり泣いた。


きっと、私はまだ気にせず服を脱ぐことなんてできない。
でも、少しだけ、殻にヒビを入れることが出来た気がした。
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