一際白い肌も、小さな体も何でも持っているのに、私の全てだった彼まで貴女は。
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
小説みたいな展開だ、って1番初めに浮かんだ感想はそれだった。
ここ数ヶ月に渡り、彼が他の女の子に好意を向けている可能性に不安を抱えていた私はその事を信頼していた親友に相談した。
そしたら、相談相手に選んだ彼女は一呼吸置いて、「ごめん」とだけ残して俯いた。
21年生きた人生で1番の恋はここで閉ざされた。
ありきたりなカフェ、窓際の席、アイスミルクティーをストローで掻き回してカラカラと氷の崩れる音が静かな店内に流れるクラシックと調和する。
こんな展開を目の前にして、ショックよりも、悲しみよりも先にそんなことを考えていた自分が情けないとまで感じている。
親友の艶やかな黒髪が机に付いて、大きな瞳は潤んで宝石みたいだった。
一際白い肌も、小さな体も、ああ何でも持っているのに、私の全てだった彼まで貴女は。
彼は大学で目立つ部類の人間では無く、私の友人の中に彼の名前を知る人は一人もいなかった。けれど私が知る彼は、目立つ部類では無いとはいえ、陰気な人間でもなかったのだ。誰とでも仲良くできるけれど誰とも仲良くない。誰とでも一緒にいれるけれど誰とも一緒にいない。俗に言う一匹狼のような姿に憧れた。
私はなんとなく周りに流されてそれとなく派手に生きてきた。本当は誰よりも弱気で陰湿な性格を隠して周りに合わせて髪を明るく染めて大股開いて机に座って、そうじゃないと、仲間はずれにされるって本気で思ってたから。
だから、そんなこと気にもしない彼が気になって仕方なかったのだ。今まで私は人より多く恋愛経験を積んできたつもりだったが、彼の存在はその全てが馬鹿らしくなるほどキラキラ輝いて見せて、私を虜にさせた。彼は特別なんだ、わたしのなかで、いちばん!
けれど、違ったみたい。
(あー、思ってたより普通だった。)
人生最大の恋愛と、その破滅を目前にして、何故か被害者ぶり啜り泣く女を冷ややかに見下げながらそれしか思いつかなかったのだ。
彼は特別だと思ってた。普通の人とは少し違うと。
誰よりも聡明で儚く美しく。だから彼と少しでも気持ちを共有したくて興味も無い文学を目が乾くまで読んで必死に持てる最大限の語彙を使って綺麗な感想を添えて返した。
彼に似合う女性であるために、明るく染めた髪を暗くして、なるべく清楚に、綺麗に。
私がこれからやっと私であるように生きていけるのだと思うほどの恋だったから。彼に出会ったことは人生の起点で、出会うべくして出会って、彼の存在が私を変えてくれて、それだけ彼は特別で、誰よりも。
でもそうではなかった。この彼も、他の有象無象と同じように簡単に私より可愛く小柄で透明な女に靡いてしまうのだ。
彼女である私に息を吐くようにかわいいよ、好きだよ、と述べてみせるのに、その裏側では他の女に熱を上げていたなんて。私とはもう幾月も致していないのに、この馬鹿な女には情を注いでいたなんて。
それまで親友だった肉の塊は人の形をした化け物かなにかなのだと悟った。
私は彼の話を幾度となく彼女に話し、笑い、泣き、その度彼女は決まって「お似合いだよ、応援してるよ」と。笑顔で告げながらそんなことひとつも思っていなかった。全て虚像だったのだ。
親友も恋人もなにもかもを失った夏の日、わたしもこのまま氷みたいに溶けて無くなってしまえたら、どれほどよかったか。
未だそれ以上口を開かない女を前に、私も何も言えずに口の中だけがただ乾いて机の端に置かれたやけに小洒落たピッチャーにまで手をつけていた。
この感情をどう表現して良いのか分からなかったから。
彼に教えてもらった何十冊の本にも当てはまらなかった。
憎悪でも、後悔でも、悲しみでも、呆れでもない。ただもやもやした塊がわたしの呼吸と涙をも堰き止めていた。
彼から何か連絡がきていたが、この事を彼に詰め寄る気力さえなくそのまま机の下でそっと彼の連絡先を消去した。
漫画みたいな大恋愛は小説みたいに幕を閉じた。
周囲の視線を感じながら、なんだか私が悪者みたいだな、周りの客から私どんな風に見えてるんだろう、なんて。人の目を気にする癖はいつまでも変わらないまま。
まあ、この黒髪も、そろそろ飽きてきたところだったから。
「もういいよ」
いつかこの気持ちが文に出来たら、許してあげる。
ここ数ヶ月に渡り、彼が他の女の子に好意を向けている可能性に不安を抱えていた私はその事を信頼していた親友に相談した。
そしたら、相談相手に選んだ彼女は一呼吸置いて、「ごめん」とだけ残して俯いた。
21年生きた人生で1番の恋はここで閉ざされた。
ありきたりなカフェ、窓際の席、アイスミルクティーをストローで掻き回してカラカラと氷の崩れる音が静かな店内に流れるクラシックと調和する。
こんな展開を目の前にして、ショックよりも、悲しみよりも先にそんなことを考えていた自分が情けないとまで感じている。
親友の艶やかな黒髪が机に付いて、大きな瞳は潤んで宝石みたいだった。
一際白い肌も、小さな体も、ああ何でも持っているのに、私の全てだった彼まで貴女は。
彼は大学で目立つ部類の人間では無く、私の友人の中に彼の名前を知る人は一人もいなかった。けれど私が知る彼は、目立つ部類では無いとはいえ、陰気な人間でもなかったのだ。誰とでも仲良くできるけれど誰とも仲良くない。誰とでも一緒にいれるけれど誰とも一緒にいない。俗に言う一匹狼のような姿に憧れた。
私はなんとなく周りに流されてそれとなく派手に生きてきた。本当は誰よりも弱気で陰湿な性格を隠して周りに合わせて髪を明るく染めて大股開いて机に座って、そうじゃないと、仲間はずれにされるって本気で思ってたから。
だから、そんなこと気にもしない彼が気になって仕方なかったのだ。今まで私は人より多く恋愛経験を積んできたつもりだったが、彼の存在はその全てが馬鹿らしくなるほどキラキラ輝いて見せて、私を虜にさせた。彼は特別なんだ、わたしのなかで、いちばん!
けれど、違ったみたい。
(あー、思ってたより普通だった。)
人生最大の恋愛と、その破滅を目前にして、何故か被害者ぶり啜り泣く女を冷ややかに見下げながらそれしか思いつかなかったのだ。
彼は特別だと思ってた。普通の人とは少し違うと。
誰よりも聡明で儚く美しく。だから彼と少しでも気持ちを共有したくて興味も無い文学を目が乾くまで読んで必死に持てる最大限の語彙を使って綺麗な感想を添えて返した。
彼に似合う女性であるために、明るく染めた髪を暗くして、なるべく清楚に、綺麗に。
私がこれからやっと私であるように生きていけるのだと思うほどの恋だったから。彼に出会ったことは人生の起点で、出会うべくして出会って、彼の存在が私を変えてくれて、それだけ彼は特別で、誰よりも。
でもそうではなかった。この彼も、他の有象無象と同じように簡単に私より可愛く小柄で透明な女に靡いてしまうのだ。
彼女である私に息を吐くようにかわいいよ、好きだよ、と述べてみせるのに、その裏側では他の女に熱を上げていたなんて。私とはもう幾月も致していないのに、この馬鹿な女には情を注いでいたなんて。
それまで親友だった肉の塊は人の形をした化け物かなにかなのだと悟った。
私は彼の話を幾度となく彼女に話し、笑い、泣き、その度彼女は決まって「お似合いだよ、応援してるよ」と。笑顔で告げながらそんなことひとつも思っていなかった。全て虚像だったのだ。
親友も恋人もなにもかもを失った夏の日、わたしもこのまま氷みたいに溶けて無くなってしまえたら、どれほどよかったか。
未だそれ以上口を開かない女を前に、私も何も言えずに口の中だけがただ乾いて机の端に置かれたやけに小洒落たピッチャーにまで手をつけていた。
この感情をどう表現して良いのか分からなかったから。
彼に教えてもらった何十冊の本にも当てはまらなかった。
憎悪でも、後悔でも、悲しみでも、呆れでもない。ただもやもやした塊がわたしの呼吸と涙をも堰き止めていた。
彼から何か連絡がきていたが、この事を彼に詰め寄る気力さえなくそのまま机の下でそっと彼の連絡先を消去した。
漫画みたいな大恋愛は小説みたいに幕を閉じた。
周囲の視線を感じながら、なんだか私が悪者みたいだな、周りの客から私どんな風に見えてるんだろう、なんて。人の目を気にする癖はいつまでも変わらないまま。
まあ、この黒髪も、そろそろ飽きてきたところだったから。
「もういいよ」
いつかこの気持ちが文に出来たら、許してあげる。