純粋で少年みたいな彼はもうこの世界に居ないってことだけ
私には大好きな人がいた。
とても賢くて、優しくて、面白くて、真面目で、純粋な少年みたいな人だった。

当時、私は23歳で彼は30歳。
歳が7つも離れていたから、向こうは妹のように思っていたのかも知れない。

遊びに誘うのはいつも私からだけど、誘えば色々なところへ連れていってくれた。
その時、手を繋いだり、キスをしたり、下心を出すことは1回もなくて、いつも10時までには家に帰されてた。

春、一緒に桜をみた。
夏、一緒に花火大会へ行った。
秋、一緒に図書館へ行った。
冬、一緒に日帰りで温泉へ行った。

そうして関係は何も進展しないまま、気がつけば彼と出会ってから1年以上過ぎていた。


最後のデートは、花火大会だった。
普段着ないようなオフショルの服を着て、彼のサンダルと似たものを買って、1人でお揃い気分で浮かれてた。
2人で、たこ焼きと唐揚げをシェアして食べた。
それだけですごく美味しく感じた。

花火が始まると彼は静かに花火を見上げていた。
花火を見上げる彼の手を握りたくて、
打ちあがる綺麗な花火じゃなくて彼の手をずっと見ていた。
結局最後まで手を握ることはできなくて、帰りの車で楽しく話をした後そのまま家に帰された。

それからは、彼を遊びに誘っても断られるようになった。
彼女ができたことを察して、私から連絡することは無くなった。
嫌われるくらいならいっそ、このまま会えない方が良いと思った。

その時は悲しかったけど、選ばれないことよりもう会えない悲しさの方が強かった。
どうせ叶わない恋なら、最後に手、握っておけば良かったな。


それから2年くらい経った時、突然彼からLINEがきた。

「元気?久しぶりに会えないかな?」

その時、私は別の人と結婚していた。
かなり悩んだけど、結局この誘いに乗ってしまった。
会ってちょっと話すだけだから大丈夫と自分に言い聞かせ、彼の元へと向かう。


2年ぶりの彼との再会。
全然変わってなくて、2年前と同じように他愛もない冗談を言い合って、笑って、あっという間に時間が過ぎていった。

「実は俺、結婚して子供がいるんだ」

もうすぐ帰る時間という時、
ついに彼は今回の話題の核心について話し始めた。
要約すると「できちゃった結婚した、でも奥さんと上手くいってない」みたいな内容だった。
正直、真面目で純粋だと思っていた彼が、そういう流れで結婚していたということに少なからず驚いた。
私は何も上手いアドバイスなんてできなくて、
少年みたいに丸めた彼の背中をずっと見つめていた。
彼に触れることもできず、なんだか居場所がなかった。

「〇〇はさ、体の関係ってどう思う?」
そんな話題、昔の彼なら出さないのに。

「嫁と相性悪くてさ。他でやろうかなって」
そんなこと、昔の彼ならきっと考えないのに。

「互いに了承してたら、別に悪くないよね」
浮気なんて、昔の彼ならありえないのに。

「あのさ…一緒に不倫しない?」

彼の提案に頭が真っ白になった。

「え?」
「だめ、かな?」

「…考える時間を下さい」


それから家に帰ってしばらく考えてから、彼にLINEした。

「すみません、今日の提案のお返事ですが、私は受け入れられそうにありません。」
「そっか、そうだよね。突然ごめんね。」
「いいえ…」


どこで間違えたんだろう。
何でこんなことになったんだろう。
私が思い出すのはいつも少年みたいに純粋で、真っ白な笑顔の彼だった。

2年で彼が変わってしまったのか、元々そうだったのか。
今となっては分かるはずもなくて、この気持ちをどこへぶつければ良いのかも分からない。

ただ分かるのは、私の中の純粋で少年みたいな彼はもうこの世界に居ないってことだけ。
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