「かわいい」と言ってくれた彼を愛している。アプリとは全然違う見た目だけど
大学1年生の冬。
私はストレスや自分のことでいっぱいいっぱいで、心身ともにボロボロになっていた。
友達に勧められて、マッチングアプリを始めて約2ヶ月がたった頃、一人の男性とマッチした。
25歳。システムエンジニア。写真は俳優さんのようなとても整った顔をしていた。

マッチした直後、「今から会わない?」とメッセージが来た。
夜遅かったため一度は断ったが、「癒してあげるから」という彼からの一言に揺らぎ、準備を始めた。
その時はもう、癒してくれるのなら誰でもよかった。


雨が降っていたが気にならない程度だったので傘を持たず家を出た。
駅に着く頃には雨は本降りになっていたが、傘を買うのも面倒で、送られてきた位置情報を頼りにそのまま彼の家へと向かった。

彼のマンションにつきピンポンを押すと、写真とは違う顔の男性が出てきた。
見た目は全く違ったが、彼はとても優しそうな雰囲気の韓国風のイケメンで、嫌な気にはならなかった。

玄関に入った瞬間に感じるアップルピールの香り。
私の大好きな匂いだった。
玄関に入り靴を脱ごうとすると、彼が「写真は本人じゃないけどいいですか」と言った。
私は気にしてないフリをして「別に大丈夫ですよ」と言ったが、内心どきどきしていた。

家にあがり雨で濡れた髪と服を、彼に借りたタオルで拭いた。
タオルまで大好きな林檎の香りがしていた。
この日から私は雨が嫌ではなくなった気がする。

ベッドに座る彼が「こっち来て」とベッドをたたいた。
わたしは恐る恐る、彼の隣に座った。

そこからは、自分のことを話したり彼の話を聞いたり、他愛ない話をした。
見た目の雰囲気同様にとても優しくて、なにより居心地が良かった。

恋愛のことを聞かれ、私は以前好きだった人の話をした。
私から彼にアプリでいい人がいたかと質問をすると、彼は「いた」と答えた。
どんな人かを聞くと、私のことを指さした。
彼は、私のことがタイプだと言った。

その瞬間、私の鼓動は早送りしたかのようにドクドク動き続けた。
中高で青春なんてことをしてこなかった私には、嬉しすぎる出来事だった。

これが私をその気にさせる嘘だなんて知らなかった。


気が付くと彼は私の後ろにいて、私に優しくハグをしてきた。
彼との距離が近づくほどアップルピールの香りは強くなった。
私をバックハグしている間、彼はずっと「かわいい」と言っていた。

彼が、わたしに聞こえるか聞こえないかくらいの声量で「本当にタイプだから大事にしよう」と呟いた。
私は聞こえてないふりをして「え?」と言ったが、その時の私の顔は、林檎のように真っ赤になっていた。

これがセックスをするための嘘だなんて気付かずにいた。


いきなり彼が部屋の電気を消す。
「チューしよ」と言う。
わたしは恥ずかしがりながらもキスをした。
そして体も簡単に許してしまった。
気持ち良かった。
行為後、私は彼に抱きついて眠りについた。


カーテンから差す太陽の光で目が覚めた。
昨日の雨を忘れるほどの晴天と、隣で寝ている彼のアップルピールの良い香り。
朝の10時。
彼の家を出た。
コートには彼の香りがうっすらと残っていた。
幸せな朝だった。

帰りの電車で彼から「もしまた会ってくれるなら会いたい」とLINEがきた。
電車の中にもかかわらず、私は嬉しくてにやけてしまった。
私はもう彼のことが好きになっていた。
この人と付き合いたいとすら思っていた。
「私も会いたいです」と、返信した。


それから、1,2週間がたった。

連絡してみようと検索したが、彼の名前はもうなかった。
LINEはブロックされていた。
マッチングアプリの方でも、マッチが解除されていた。

そのことが分かった瞬間、私は絶望した。
一晩中、目が腫れるほど泣いた。

褒め言葉も、また会いたいも、あの日の全部が嘘だったんだと、やっと気づけた。
あんな褒め言葉で嬉しがっていた自分が醜かった。
あんな見え透いた安っぽい振る舞い全てを見過ごした自分がダサかった。


甘ったるい林檎の香りを感じる度、今でも彼を思い出す。
きっと、全てが奇麗な嘘だったから。
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