もしあの子が彼女だったら、こんな簡単に触らないんでしょ?
私には同級生の彼氏がいる。

中学校も一緒だったから、話したことはなくとも昔から彼の存在は知っていた。
「クラスの美人な女の子に何度も告白しては振られてるらしい。」そんな噂が面識のなかった私にまで飛んできたから、第一印象は可哀想な人という感じだった。
二人が話しているのを覗いたことがあったけれど、その子に思わせぶりな態度を取られて振り回されているようで、なんだか見ていられなかった。


初めてちゃんと話をしたのは高校に上がって部活が一緒だった時。
最初は話している最中も、全然こっちを見てくれなくて、なんとなく悲しかった。
あの美人な女の子に彼氏ができたとか、そんな噂が流れてきていた時期だったと思う。
彼は「あいつのことはもう嫌いだよ」とぼやいていたけど、あの子のことをわざわざ名前呼びから苗字呼びに変えている当たりが、なんだかわざとらしいな、なんて思った。
私にも可能性あるのかな、なんてらしくないことを考えたりもしたけど、彼があの子を忘れる日なんてきっと訪れないだろうなと思っていた。

それなのに、彼のあの笑顔を正面で見つめているのはあの子じゃなくて私に変わっていた。
2、3年も片思いを拗らせているような彼だから、最初は勘違いだと思っていたけど、表情をコロコロ変えるわかりやすい人だから、周りの人もその変化にすぐに気づいた。
放課後決まって部活に行くか聞かれるし、気恥ずかしくなるほど可愛いと言われた。

気づけば冬休みは付き合ってもいないのに3回もデートの約束を取り付けて、3日目の帰り際には告白されていた。自分が彼の彼女になるなんて考えても見なかった。
でもうっすら、私は傷ついた心の緩衝材でしかないんだろうなと思っていた。


彼氏は私が想像していたよりも何倍ものハイペースで私をリードして、夏休み最初のデートの帰り道には町外れのホテルの前にいた。
今まで何度もここでやめようと思って、言おうと思って、なのに流されて。その繰り返しでここまで来てしまった。
責任持てる高校卒業まで待ってほしいって話もしたのにね。
挿れないなら行ってもいいよって言ったのも、女の子がそういう場についてくための体裁だと思われちゃったのかな。

結局、私が痛かったから挿れることはほとんどなかったけど、家に着いた私は喪失感と漠然とした不安で押し潰されそうになった。


最中に彼の手を握ったときに、私の小指だけが間接照明の反射でキラキラ光る。

付き合って間もない頃、私の誕生日に横浜まで連れ出してくれて、夜の観覧車に揺られてた時に、ピンキーリングをプレゼントしてくれた。
だけど私の指にはサイズがまるで合わなくて。
あの子ならこのサイズは緩いくらいだよねって思って悲しくなるけど、それよりも落ち込む彼になんだか申し訳ない気持ちになった。
夜景を一緒に見ながら、「ありがとう、ネックレスにできるから全然嬉しいよ」って私も目一杯の気持ちを伝える。

観覧車がゆっくりと落ちていく時には言葉が尽きてきた。

「嫌だったら良いんだけど、キスしても良いかな」

付き合って間もないころは、何かする時に決まって前置きを付けてくれていた。
私にはこれが堪らなく愛おしくて、大好きだった。
壊れやすい宝石みたいに扱われているようで、大切にしてもらえてると実感できるから。

なのに、最近の私は彼の押しに負けて落ちるようにどんどんリミッターが外れていってる。
美人なあの子に声をかける時みたいに、もっと大切に扱ってよと言いたくなったけど、流されている私にこんなことを言う権利なんてない。

彼と付き合って半年経っていても、まだあの美人なあの子が私の脳裏をよぎる。
私はあの子とは対照的で、白い肌も華奢な体も持ち合わせてない。
私が日焼け止めをこんなにも頑張って塗り直す理由を彼にはまだ話せてないし、隠れてこんなことを考えていることもきっと知らない。
あの子みたいに高嶺で、脆くて、簡単に触れてはいけないんだって思ってほしかった。
流れ流された私たちの関係こそ、なんだか脆くて、触れられないものになってきている気がする。
私の心とは裏腹に、あの子よりもっと近づきたくて、もっと知りたいと思って、自分を安売りしてしまった。

彼に合わせて飲めるようになったブラックのアイスコーヒーを飲みながら、
遠回しに伝えてきた、ホテルへの誘いの返事を考えている。
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