初めて彼と寝た時、彼はゴムを持ってなかった。
初めて彼と寝た時、彼はコンドームを持ってなかった。
「いいから買ってこい。無いならセックス絶対しない」
私は半分怒って、半分笑いながらそう言って、彼をベッドから追い出した。
彼はわかったと言って、近くのコンビニまでコンドームを買いに行ってくれた。
ついでに酔っ払いの私のために、水と、お茶と、ウコンの錠剤も。
結局、その夜彼は中折れしてしまった。酒の飲み過ぎだった。


その後彼と交際を始めて、どうやら長く付き合っていた女の子がピルを飲んでいたことで、お互い合意の上、長くゴムをつけていなかったらしい、ということがわかった。
だから家にゴムがなかったのだと。
正直、性病やら感染症やらがあるので衛生的に考えてもやはりつけた方がいいと思ったけど、私とする時は必ずつけてくれるようになったので、何も言わなかった。

ある時、ふと気になって彼に尋ねた。

「もし子供できたらどうしようとかは考えなかったの?」
「できたらその時結婚すればいいかなって話してた」

彼はいつもの屈託のない表情をしていた。


それから付き合っていくうちに、沢山のことを話した。
彼は子供が好きで、いつか欲しいと思っていること。
結婚したいと考えていること。

子供と結婚。
それは、私が長いこと先延ばしにして考えないようにしていたテーマだった。
どちらも臆病者の私にはひどく恐ろしいものだった。
子供を産むのも怖い。
育てるのはもっと怖い。
結婚して、今までと違う生活になるのが怖い。
自分だけのものだった人生が、そうでなくなることが怖い。

随分前、親元にいた頃、私は両親の望む子供であることを第一目標にして生きていた。
両親が良しとするものを良しとして。
両親が嫌うものを嫌って。
それにうんざりして、自分の人生を自分のためだけに消費し切って適当なところで死んでやろう、と決めたのが21歳の時。

その時から、私は好き勝手に生きてきた。
誰のことも大事に思わなかった。
だから、誰からも大事にされなくても平気、
というよりも「まあそうですよね」と、当然の結果として受けとめられた。
恋人なんていなくても別に困らなかった。
家族なんて尚更だった。


私は、自分の人生が自分だけのものでなくなるのが怖い。

子供が欲しい、という話をされた時、私は自分が情けなくて申し訳なくて恐ろしくてどうしたらいいのか分からなくて、彼の肩でぐすぐすとみっともなく泣いた。

自分が納得できない状況で子供を産むのは不安なこと。
覚悟もなく産んでしまったら、いつか生まれてきた子供に八つ当たりをしてしまいそうで怖いこと。
それをした自分をきっと一生許せないであろうこと。
こんなふうに考えてしまう自分が情けないこと。
せめて結婚してからがいい。でも、怖いのも本当だということ。

それから、彼はあまり子供の話をしなくなった。


少し前、セックスが終わって彼がコンドームを片付けて2人で裸になって抱き合ったとき。
彼のものが私に少しだけ触れて、彼は慌てて身をひいた。
「あぶないあぶない」と彼は小さく言う。
「どうしたの」と惚けた頭で聞くと、
「だって、こういうので子供できたら大変だから」
「ちゃんと二人で決めたいから」
と、彼は屈託のない表情で返した。

泣きそうになった。
当たり前に私のことを尊重してくれるこの人が、とてもとても好きだ。

この人の望むことをしてあげたいと思ってしまう自分がいる。
子供が欲しいわけじゃないけれど、この人が望むなら、と考えてしまう自分がいる。

まだ答えは出ていない。
私は今年30歳になる。
残された時間は、そんなに長くない。
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