きっと私なんかと練習しなくても君は上手くいくから
少し前のこと、私にはセフレがいた。
今の彼氏の友達で、彼氏よりも長い2年近くの付き合いだった。

休みがあれば会って行為をする。
口数が少ない彼とは本当に、「それだけ」の関係だった。
いつしかそれが嫌になった私は、彼を切った。

「私は付き合ってる人としたい」

無駄な抵抗だよね。
けれどこうすることでしか私の気持ちは報われなかった。
1ヶ月、2ヶ月、半年と時は流れて行った。

そんな彼が突然帰ってきた。

インスタのフォローリクエストの欄に見覚えのあるアイコンがあって、その時の私は素直に何があったんだろうと聞きたくて承認してしまった。

しばらくすると私の上げていたストーリーに反応してきた。

「久しぶりなんだし話そうよ」


なんか変な気持ちだった。
話を聞いていると彼にも彼女がいるそうだ。
6ヶ月、とだいぶ経ってきたので気持ちはだいぶ落ち着いてきたと言っていた。

この日はいつもより話が進んだ。
なんだか知らない彼を見ているようだった。いつも話さないこともたくさん話した。
なんだかもう普通の友達になれそうで嬉しかった。

「彼女がグイグイ来てくれなくて」
「最近は1人でしてることが多くて」

嫌な予感がした。
まさかお互い彼氏彼女がいるのに、私に頼ろうなんてしないよね?
私のことまだそういう目で見てるはずないよね?
いや、そんなはずない。彼を信じたい。


「また練習させてくれる?」

予感は的中。一気に熱が冷めていくようだった。
彼女がいるにも関わらず平静を装い、あくまでも友達という関係を守りつつ、こんなことを言う人がいるなんて。
変に真面目な部分がある私はもう彼を信用できなくなってしまった。

そういうの無理だからと言い会話を切る。
彼はまだ話したそうな感じがあったが、今関わっても自分が下がるだけだと思った。
意地でも練習台にはなりたくなかった。

それでも気持ちが収まらない私は最後に彼にこう言い残した。

「勇気を出して彼女に本当の気持ちを伝えれば、きっと私なんかと練習しなくても君は上手くいくから」

ありきたりな言葉だ。
けれど彼には必要だと思った。勇気がなくて、自信がなくて、また私を頼ってきた彼に。

君は大丈夫だよ。
その勇気の矛先が私に向かなくても、君が元気で幸せならそれでいいんだよ。
もう気持ちはすっきりしていた。
これでもう気にせず生きていける。


よく頑張ったね、私。
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