彼女が取り込む洗濯物には、男物の下着が干されていた
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
ジュッとマッチに勢いよく火がつく。
もう戻ることはない、小学校の理科室の匂いを彷彿させる。
煙が春風に乗って暗い夜に溶けていく。
手元のケータイの画面が突然光れば、あの子からの通知だった。

「明日彼氏が家遊びに来ることになった。また予定合わせよ。ごめんね。」

返信する気にならなかった。返信したくなかった。少しでも、僕を気にかけてほしくて。


大学の飲み会で出会った彼女。
くだらない集まりに息苦しさを感じて、一服しようと抜け出した時に彼女はついてきた。
「君、何年生?」
「…二年です。」
「へぇ、喫煙所で吸わないの?」
「…まぁ。」

うるさい人だなと思った。
一人になりたかったのに、ましてや一対一だなんて。

「たばこ、どうして吸ってるの?」
「別に、意味なんてないですけど。」
「そっかぁ。」

そわそわして、吸ってる気がしなかった。ほとんど吸ってないたばこを消して、戻ることにした。
すると、彼女は立ち上がった僕の裾を引っ張る。

「あそこ、うるさくて戻りたくないんでしょ。」
「え?」
「私もそうだから、だからもう少しだけ吸っていきなよ。」

もともと一人になりたくてタバコを吸いに来たのに。そう思いながらもあそこにいるよりはマシだなと思って、またタバコに火をつけた。
そこから彼女は自分の話ばかりした。聴いてもないのにベラベラと。
聞くと彼女は俺より二つ年上らしい。
実家で凄く太った猫を飼ってるだとか、好きなおにぎりの具はおかかだとか。
本当にしょうもない話ばかりだった。
けど、たばこを吸いながら聞く話としては悪くなかった。何より、彼女のやさしく透き通るような声が心地よかった。

「歩いてたらりんごが落ちてたの、それも真ん丸の。すごくない?私写真撮っちゃったもん、ほら。」
「もっとまともな話ないんですか?」
「ひどいなぁ、人生トップ3に入るくらいには大きい出来事だったのに。」
「しょうもない人生ですね。」

携帯を見つめながら頬を膨らませる彼女は、あどけない子供の様で愛らしかった。
4本目のたばこを吸いきると、彼女が深く息を吐いた。

「ごめんね、楽しくてたくさん喋っちゃった。先戻るね!みんなに怪しまれちゃうし。」
「はぁ。」
「じゃあね!」

突発的な出会いだった。
変な人だったなぁ、そう思いながら酒の席へと戻った。


後日、最寄駅のコンビニでばったり出会った。
「あれ!?どうしているの!?」
「どうしてって、最寄りなんで。」
「え、私も最寄りここなの!」

子犬のようにはしゃいでいた。この人が自分より年上だということを忘れそうになる。

夜中だったのもあって、家の近くまで送っていった。
自分の家から歩いて20分くらいの場所にあった。
むりやりにLINEを交換させられて、次の予定までたてられた。

家までの道を歩きながら煙草に火をつける。
少しずつ彼女に惹かれていく自分を自覚しながら、空っぽの煙を深く吐いた。


湿っぽい季節がすぎて、心地よい夏前の夜。初めて彼女の家に行った。
手料理を食べて、ゲームをして、中身のない彼女の話を聞いた。

「あれ、タバコ吸わないの?」
「だって先輩吸わないでしょ。別に吸わなくても平気なんで。」
「遠慮しなくていいのに。ベランダなら吸ってもいいよ。」

そう言ってキッチンから空き缶を持ってくると、ベランダに出て手で誘われる。
仕方なくベランダに出て、2人並ぶ。
さっきまで雲で覆われてた空は開ききっていて、大きな月が僕ら2人を照らす。

「あ、匂いついちゃうか」

彼女が取り込む洗濯物には、男物の下着が干されていた。
ちゃんとショックを受けた。
兄弟がいるのかもしれない、そう思いたかった。そう思い込もうとした。

「…彼氏いるんですか。」

我慢できなかった。タバコを持つ右手が震える。

「あぁ、いるよ。いる。」

僕の顔を見ずに、彼女は答えた。
彼女は僕をどう見ていたんだろうか、
ただの男友達?
それとも都合のいい遊び相手?
体の関係もない、不健全な遊びすらしていない。
僕にはそれが唯一の救いで、彼女を諦めきれない一つの理由でもあった。

まだこの気持ちが不完全なうちに離れよう、すぐにそう心に決めた。
このタバコを吸ったら、帰ろう。君に染まらないうちに、すぐに。

もうフィルターのギリギリまで燃えているタバコを深く吸って、煙を吐く。
タバコを空き缶に捨てようとしたその瞬間、彼女の唇が触れた。


彼女のその行動は、僕の心のストッパーを外す決定的なものになった。
触れたい、その顔に、その首に、触れたくて仕方なかった。
気持ちを紛らわすように、タバコの本数は増えていった。
ずっと我慢してたのに。

君がそんな顔で僕を呼ぶから。僕の腕の中で愛おしく鳴くから。

彼女が寝たら、LINEを消して帰ろう。忘れよう。
もう会わないようにしようと思ったのに、すやすやと眠る寝顔を見たら抱きしめられずにはいられなかった。


気付くと、窓の外は明るくなっていた。
腕の中に彼女はいなくて、代わりにトントンと包丁の音がキッチンの方から聞こえてきた。

「お腹空いたでしょ。もう少しでできるから待っててね。」
そう言う彼女はまたまな板に視線を戻す。
アホみたいに嬉しくなった。
まるで自分の彼女になったかのように思えた。

昨日の夜までの罪悪感も、彼女の彼氏に対する後ろめたい気持ちもほとんど無くなっていた。
彼女は驚くほど料理がうまかった。
そして何よりも、ご飯を頬張る顔が愛おしくて仕方なかった。

朝ご飯になるのか、それとも昼ごはんになるのか。
よくわからない時間帯に彼女の手料理を食べて、なし崩すようにもう一度体を重ねた。
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