私はあなたたちのお母さんじゃない
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
私には彼氏がいる。
歳上の、シングルファザーの彼氏。
付き合った後、事後報告で自分がシングルファザーであることを告げられた。
デートに娘を連れてくることから始まり、私が作ったお弁当を持ってピクニックへも出かけた。
付き合う前はおしゃれなカフェでランチをしたりすることも多かったのに、今ではファミレスだ。
娘は3歳。
私が作ったご飯に箸をつける姿を見たことがない。
「ママのご飯が食べたい。」
唐揚げにポテトサラダ、娘の好きなトマトを並べた食卓で、娘は泣いた。
いやいや、ママは別の男と蒸発したんだよ。
そんな意地悪が口から飛び出しそうになって、慌てて口を固く結んだ。
娘への意地悪じゃない。
私に母親のごとく振る舞うことを期待し、女であることをないがしろにする彼氏へのあてつけだ。
彼氏といると、女であるということを忘れてしまう。
どんな女性であれ、その時期はくる。
私はたまたま早くて、それが自分の遺伝子の入っていない子供がきっかけであっただけだ。
打ち明けられた時、拒絶することもできた。
それでも彼氏のことを受け入れて支えようと決めたのは私なのだから。
もう女は諦めよう。
そう思っていた時に、あの人は目の前に現れた。
あの人は大学生。
私は社会人1年目。
学生と社会人、たった1年の差なのに、あの人がいる世界がとても懐かしく感じる。
あの人が運転する車の隣に乗って、意味もなく夜の道を走った。
あの人は、所帯染みてしまった女を簡単にさらった。
夜中車を走らせながら、いろいろな話をしてくれるあの人。
仲のいい人のこと。
大学のこと。
遊びのこと。
全てがきらきらと輝いていた。
心の中のなにかが、どんどん溢れそうになるほどに。
「私さ、彼氏がいるんだけど。」
海沿いに車を停めた時に、私は彼氏の話をした。
娘がいること。
付き合ってからそれを言われたこと。
彼氏と2人きりでどこかに行くことが難しいこと。
娘に嫌われているかもしれないということ。
作ったお弁当をひっくり返されたこと。
あの人は何も言わず、私の頭を撫でた。
その手は私を女に変えた。
「私、母親みたいなふりしたくない。」
あの人の目は、私の横顔をしっかりととらえていた。
「大丈夫。しっかり女の人だよ。今は母親の顔、してないよ。
きれいだけど寂しがり屋の女の子の顔してる。」
それ以上、何も言わなかった。
相手がいるのに、こうやってこっそり夜中に会ってることも責めなかった。
感情のこもらないキスをした。
お互いのことを好きでも嫌いでもない。
でも私たちはこの瞬間、確かに男女だった。
薄汚い欲望が渦巻く関係性だと言うのが早いのかもしれない。
やっていることは世間から責められ、罵られるべきことなのかもしれない。
でも、そんなの気にしてたら、私は?
私の心は、どこで慰められればいいの?
娘から拒絶され、
彼氏は私に母親としての姿を期待して、
うまくいかないのは自分のせいだと責めて、
別れたいと思っても世間体や娘のことを気にしてしまうような無様で滑稽な女は、
どこで誰に抱きしめられればいいの?
愛がたりないわけじゃない。
欲望が有り余ってる訳でもない。
ただ、大学生のあの人は、私を女に戻した。
夜が明けてしまうまで、私は女だ。
今だけは、あの人といる時だけは、
他の誰でもなく、私は私に従う。
歳上の、シングルファザーの彼氏。
付き合った後、事後報告で自分がシングルファザーであることを告げられた。
デートに娘を連れてくることから始まり、私が作ったお弁当を持ってピクニックへも出かけた。
付き合う前はおしゃれなカフェでランチをしたりすることも多かったのに、今ではファミレスだ。
娘は3歳。
私が作ったご飯に箸をつける姿を見たことがない。
「ママのご飯が食べたい。」
唐揚げにポテトサラダ、娘の好きなトマトを並べた食卓で、娘は泣いた。
いやいや、ママは別の男と蒸発したんだよ。
そんな意地悪が口から飛び出しそうになって、慌てて口を固く結んだ。
娘への意地悪じゃない。
私に母親のごとく振る舞うことを期待し、女であることをないがしろにする彼氏へのあてつけだ。
彼氏といると、女であるということを忘れてしまう。
どんな女性であれ、その時期はくる。
私はたまたま早くて、それが自分の遺伝子の入っていない子供がきっかけであっただけだ。
打ち明けられた時、拒絶することもできた。
それでも彼氏のことを受け入れて支えようと決めたのは私なのだから。
もう女は諦めよう。
そう思っていた時に、あの人は目の前に現れた。
あの人は大学生。
私は社会人1年目。
学生と社会人、たった1年の差なのに、あの人がいる世界がとても懐かしく感じる。
あの人が運転する車の隣に乗って、意味もなく夜の道を走った。
あの人は、所帯染みてしまった女を簡単にさらった。
夜中車を走らせながら、いろいろな話をしてくれるあの人。
仲のいい人のこと。
大学のこと。
遊びのこと。
全てがきらきらと輝いていた。
心の中のなにかが、どんどん溢れそうになるほどに。
「私さ、彼氏がいるんだけど。」
海沿いに車を停めた時に、私は彼氏の話をした。
娘がいること。
付き合ってからそれを言われたこと。
彼氏と2人きりでどこかに行くことが難しいこと。
娘に嫌われているかもしれないということ。
作ったお弁当をひっくり返されたこと。
あの人は何も言わず、私の頭を撫でた。
その手は私を女に変えた。
「私、母親みたいなふりしたくない。」
あの人の目は、私の横顔をしっかりととらえていた。
「大丈夫。しっかり女の人だよ。今は母親の顔、してないよ。
きれいだけど寂しがり屋の女の子の顔してる。」
それ以上、何も言わなかった。
相手がいるのに、こうやってこっそり夜中に会ってることも責めなかった。
感情のこもらないキスをした。
お互いのことを好きでも嫌いでもない。
でも私たちはこの瞬間、確かに男女だった。
薄汚い欲望が渦巻く関係性だと言うのが早いのかもしれない。
やっていることは世間から責められ、罵られるべきことなのかもしれない。
でも、そんなの気にしてたら、私は?
私の心は、どこで慰められればいいの?
娘から拒絶され、
彼氏は私に母親としての姿を期待して、
うまくいかないのは自分のせいだと責めて、
別れたいと思っても世間体や娘のことを気にしてしまうような無様で滑稽な女は、
どこで誰に抱きしめられればいいの?
愛がたりないわけじゃない。
欲望が有り余ってる訳でもない。
ただ、大学生のあの人は、私を女に戻した。
夜が明けてしまうまで、私は女だ。
今だけは、あの人といる時だけは、
他の誰でもなく、私は私に従う。