「いちばんの、最高の親友」
⚠この純猥談は不倫表現を含みます。
彼と出会ったのは、大学に入学した春のオリエンテーションだった。

わたしと彼が近付いたきっかけは、なんの変哲もないものだった。人見知りゆえに誰とも話すことができず、輪の中に入れずにいるわたしに、彼が声をかけたのだ。
わたしと彼の共通点は意外と多く、仲良くなるのに時間は掛からなかった。

彼には高校時代から付き合っている遠距離の彼女がいた。
彼女のことを話す彼の顔がとても幸せそうで、彼に欲情なんてとてもできなかった。

わたしと彼の関係は何度も噂になった。
そりゃそうだ。

彼の隣で講義を受け、お互い予定がなければ一緒にどちらかの家に帰った。付き合ってないと否定すればするほどわたしたちの関係は疑われたけど、彼はわたしに手を出すことは一切なかった。

「いちばんの、最高の親友」

彼はわたしにも、周囲にもよく言っていた。

夏だというのにしゃぶしゃぶがしたいと言うので、彼の家に行った。今日は電気代なんて気にしないと言うので、エアコンの温度を馬鹿みたいに下げた。翌日は朝から必修の講義があるから、いつもみたいに同じベッドで寝た。

冷えた部屋のせいで、いつもよりも深く彼の匂いを感じながら、わたしたちは必ず背を向けて、触れ合わないようにしていた。

「彼女に振られそう」

微睡んでいたわたしに、彼の声が響いた。
彼は誰にも弱さを見せることができないでいた。

わたしは男の人に依存して生きていたけど、彼は誰にも依存をせず、むしろ踏み込ませないパーソナリティを持っていた。
わたしがいちばん近い距離にいたと自負していたが、それでも見えない壁を感じていた。
人一倍、誰かに傷付かれることを恐れていた彼は、男の人に泣かされ泣かせるわたしのことを羨ましいと言った。


彼女と別れた彼とわたしは、デートをするようになった。
お互いに洋服を選んで、カフェに入って、たまに美味しいと評判のディナーに足を運んだ。

「付き合いたくはないけど、結婚する相手ならとても相性がいいと思う」

何度も2人で言い合った。
冗談ぽく、でも本気を含ませて。


大学を卒業する頃、彼が照れながらわたしのゼミの後輩を紹介してほしいと頼んできた。

あ、いやだな。

そう思ったけれど、断る理由を持ち合わせていなかった。

そのまま彼は後輩と付き合うことになった。
わたしも将来を見据える人がいたから、もうふたりで会うのはなしだね、と言った。実際、ふたりで会うことはかなり減っていて、就活やら卒論やら国家試験やらとらに、大学生活の集大成を奪われていた。


卒業式の日、久しぶりに会った彼はとてもかっこよくなっていた。就活をする彼のスーツ姿に慣れていたはずだったけど、この姿を忘れたくなくて、記念だと言ってはたくさん写真を撮った。
彼女になった後輩が、なぜか率先してたくさんわたしたちふたりの写真を撮ってくれた。

美人で、細くて、頭も良い可愛い後輩に優しい顔をする彼を見たくなかったけれど、穴が空くんじゃないかと思うほど見つめた。夏に遠距離の彼女と別れてから、誰とも付き合わなかった彼が選んだ後輩が受け取る幸せが羨ましかった。


社会人になって2年目の春に、わたしたちはそれぞれ結婚をした。


その冬にわたしは過労で精神を病んだ。

数少ない友達には黙っていたが、なんとなく、彼には伝えた。

結婚式以来の彼は、少し疲れたような顔でわたしの家に来た。
必ず夫が家にいる日に彼は来て、2時間ほどおしゃべりをした。

いつも彼は「もう無理はするな」とわたしに言った。
もうって何だよと返せるようになった頃、少し高い焼肉を食べに行こうと誘われた。彼がよく来ると言う焼肉屋は、肉が盛られたお皿に必ず一輪の花があった。

奥さんとよく来るかと聞いたら、仲良くなりたい女性と来るのだと悪戯に笑った。なんでわたしを今まで連れてこなかったのかと問うと、なぜか真面目な顔をした。

「存在が大きすぎた」
「いつも触れたいと思ってた」
「離れるのが怖かったから、そばにいられる方法がこれしかなかった」
「本当はすごく好きだった」

ごめん、と言いながらも出てくる言葉に、わたしはどうすればいいのか分からなくて笑ってしまった。

どうでもいいと思った。
彼に、女性とよく行く場所に連れて行ってほしいと伝えた。

綺麗なホテルで、何をするわけでもなく、手を握って彼の気持ちを聞いていた。でもやっぱりどこかどうでもよくなってしまって、キスをねだった。キスだけで馬鹿みたいに濡れたわたしに、彼は興奮したようだった。

彼は優しく、でも激しくわたしを抱いた。
今までに感じたことのない気持ち良さにわたしは何度も声をあげたし、初めて触れる彼の身体がすごく心地良くて何度も何度も抱きついた。

身体を密着させ、キスしながら、体位を変え交わった。
気付いたらわたしの声は枯れてて、彼も汗だくだった。

こんなにはしたなくて欲望に溺れた彼を初めて見たことに震えた。わたしが見ていた彼はどこにもいなくて、悲しくて嬉しくて涙が出た。

一緒にお風呂に入り、そのまました。
湯気がわたしたちを包んでいて、のぼせた頭で、このまま彼だけを見ていたいと思った。


こんなにも熱い湯船の中で、彼の手はとても冷たかった。


そんな彼はもうすぐ父になる。
あたたかい手のひらで包まれる子どもを待ちわびながら、春を待つのだと思う。
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