彼女は絶対に家には来ない。跡は残さない。体にも、匂いも。
⚠この純猥談は不倫表現を含みます。
明け方がわからないというより、日の光が入ってこないのでわからない、という感じだ。

僕は不毛な関係性に溺れてこんな話を書いてしまうような、
(非常にチープで、実際まったくもって真っ当ではない)恋愛をしている。

彼女とは二度一緒に夜明けを迎えたけれども、その二度とも都内のいわゆるラブホテルだ。
明け方がわからない部屋。

カーテンを開けて、おはようとか言えない部屋で、こそこそお笑い番組なんか見て、成城石井で買ったワインなんか持ってきて一緒に買ったしゃらくさいアラカルトつまんでおいしいねとか、たいして詳しくないワインの話をしてみたりする。
彼女は子供みたいにくしゃと笑うし、笑い声がかわいいので聴いている。
ワインの向こう側に、彼女の足が並んでいて、膝小僧が見える。
彼女の足の爪が行儀良く並んでいて、僕はマニキュアをあげようかなとか考えていた。

ワイン美味しいねえ、これ買って正解だね、と言う彼女の言葉に、うん、うん、そうだねと相槌を打つ。
彼女は酒好きで、僕もお酒が好きだからよく飲みに行った。
コロナ禍のなかでもこうやって酒を買ってどこかで飲むことを楽しみにするような二人だ。
学生みたいだなと僕は思った。学生の頃はこんなことしたことがないけれど。


彼女には夫がいて、夫とは喧嘩もないけれど特別愛し合ってもいないという。
仲が悪いとか、うまくいってないとか嘘をつかれるよりはマシで、ある意味狡猾な言い分だ。
レスなの、と悪びれずにいう。しかも彼女が避けているらしい。
ひどいな、と僕は言った。
同時にどうして僕のは断らないのと聞いた。
彼女は好きだから、とまた悪びれずに言った。
それで嬉しくなってしまう僕はおかしい。
好きだからという明確な言葉に僕はそれならいいやと言ってしまう。
それならいいってどういうことだろう。よくないのに。

僕は彼女の人生においてたぶんただの通過点でしかなくて、
だけど僕のなかではもう彼女を通過点にできなくなってしまっていて、
身体を繋げるたびに彼女が好き、と囁くので、
僕はどうやって逃げ出そうかと考えていた頭が途端に馬鹿になってしまう。
みっともなく、俺も、と言って、ごまかしてしまう。
ゴムに吐き出す瞬間に、男はIQが著しく低くなるという記事を読んだことがあるが、まさしくその通りだ。

女の子は、女の人は、彼女はこうはならないのかもしれない。ずるいな。

明け方がわかればいいのになと思う。

先に起きて珈琲とか淹れて、彼女を起こして、余裕の顔を見せてやりたい。
俺のとこに逃げてきちゃおうって思えばいい。
なんだか無性に悲しくなって、彼女の首筋で息を吸い込んで、その匂いでくらくらした。
(ものすごく彼女の匂いが好きなんだけど、それを言うと、女の子みたいだねと言われるので、)シーツの間の生ぬるい空気を静かに吸いこむ。

これを抱きしめて家で寝たいんじゃあ、と彼女の腰を抱っこしてじゃれつくと、楽しそうに笑うけど、彼女は絶対に家には来ない。跡は残さない。体にも、匂いも。

ずるい大人だなというと、そうよ、と笑って、そうじゃなきゃ好きにはならないでしょう、と返される。
まるで僕が悪者のようだけど、浅慮な僕はあまりにも単純だし、実際そうかもしれないので、そうかな、と返した。
彼女がまた少年みたいに笑う。
なんにも勝てないね、ひとつも君には勝てない。


いつか明け方の見えるホテルに泊まろうね、というと、それはいいねと彼女は笑った。
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