本当はわかっていた。彼の人生に私は必要ないのだと。
季節は夏、私は誕生日を迎えた。
お洒落でカッコいい彼にスマートにエスコートされ、胸が躍るプレゼントを貰う。
綺麗な瞳で見つめられ、告白された。
この人を信じてみよう、そう思った。

はじめて彼に会った時、一人で生きていけそうなのに、何故この人は恋人を探しているのだろう?と思った。
6歳差。まだ学生の私と社会人の彼。その差分をとても大きく感じていた。

一度目の緊急事態宣言が出た頃から、彼は毎週末電話をかけてくるようになった。
まだ社会に出ていない私にはとても大きく感じた。知らない世界のことを教えてもらうのが楽しかった。

はじめは性格や考え方の違いを私は気にしていたが、気づけばいつも彼のことを考えるようになった。
頭の中で二人の共通点を数え、彼の好きなところを挙げ、週末に会えるのを励みに生きた。
彼に似合う女性になろうと努めた。

異性と体を重ねたのは彼がはじめてだった。
今まで付き合った人達はどうしても受けつけなかったが、彼は違った。
その力のある澄んだ瞳で見つめられるだけで、身体が疼いた。
会えない時間や不機嫌な時の彼の冷たさは本当に寂しかったが、だからこそ抱かれる瞬間は心が満たされる。
私は今まで知らなかったその強烈な魅力に惑わされていた。

でも、共通の知人もいない私達はどこまでも他人で。
LINEでしか繋がれないのに、彼の文面はしだいに素っ気なく、返信も気まぐれになっていく。
気づけばLINEの内容は、デートの日時と待ち合わせ場所を決めるだけになった。
離れている時、どこで何をしているのかわからない。
付き合っているはずなのに、気軽に訊ねられる関係性ではない。
会えない日が続いても、寂しいとも言われない。

私があなたを想う十分の一でいい。
会えない時も私のことを考えていて欲しい。
一向に既読のつかないLINEを見つめて、不安で眠れない夜を、何度も泣きながらやり過ごした。

でもそれを彼には打ち明けなかった。
そんなことを言ったら、人に縛られることが嫌いな彼は、すぐに離れていってしまうだろうから。
他に女性がいる気配もないし、私がもっと精神的に自立すればいいだけだ。
そう言い聞かせて、彼の前では物分かりのいい大人の女を演じる。

愛されている実感を渇望しながら、彼がつれない態度をとるほどに歪に執着してしまう自分が惨めだった。


最後に会ったのはクリスマス。
店は2週間も前に彼が予約してくれていた。
今日を一緒に過ごしてくれるなら、私のことを大切にしてくれているのだろう。

その後彼の家で幸せな夜を過ごしたのに、翌朝起きると何かが変わっていた。
目を合わせてくれず、次に会う約束をしようとするとはぐらかされた。
感染者も増えているし、安易に会うのはやめた方がいいよな、と自分の中で結論づけた。
まだ愛があると信じていたかった。


年始の挨拶は送られてこなかった。
本当はわかっていた。彼の人生に私は必要ないのだと。

もう振り回されて傷つきたくない。この執着を手放そうと決めた。

二度目の緊急事態宣言の中、学生の私は相変わらず社会から隔絶されている。

カーテンを閉めた狭いワンルームで、彼を忘れるために机に向かう。
電話をしてくれる相手はもういない。
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