「君みたいな人だったら、付き合うのも悪くないんだろうな。」
「君みたいな人だったら、付き合うのも悪くないんだろうな。」
予約してくれたおしゃれなレストランで、少し酔った彼がしみじみと言った。今更。

彼と出会ったのは大学のサークルだった。趣味があった私たちはすぐに意気投合して、すぐにふたりで遊びに行く仲になった。
デートはすごく楽しくて、初めて手を繋いだときはドキドキがとまらなかった。
彼の素直に感情を表現するところが好きだった。

ある日のサークル終わり、彼が私の家に来ることになった。一緒に映画を見る約束をしたのだ。
みんなにバレないように、少し離れたところで待ち合わせをして、私の家に向かった。
手料理を美味しいって嬉しそうに食べてくれて、ゆっくりふたりで映画を観た。恋人気分だった。

「終電何時に出たら間に合う?」
彼が聞く、帰したくなくてわざと10分遅い時間を伝えた。

案の定、「終電乗り遅れちゃった」と彼は私の家に戻ってきた。
シャワーを浴びて、電気を消した。
「友達」だったから、私はベッド、彼は布団に寝そべった。
でも、もちろん全然寝付けない。
冷蔵庫の稼働音だけが静かな部屋に響いてた。

「好き」思わず口に出していた。

恐る恐る彼の反応を伺うと、
困惑した顔をして「ごめん」と一言だけ呟いた。

あっけない。涙がぽろぽろと溢れ出る。
彼は静かに「こっちにおいで」と言った。
「今晩だけ」と彼は私のことをぎゅっと抱きしめてキスをして、頭を撫でた。
好きでもないならそんなことしないでと思ったものの、彼の腕の中は心地よくていつの間にか眠りについていた。


そのあとも何回か私たちは「友達」としてふたりで遊びに行った。
機会を伺って何回か気持ちを伝えてはみたものの、彼が首を縦に振ることはなかった。

そして、秋が来た頃、唐突に彼からブロックされた。

あまりにも呆気ない終わりで逆に諦めがついた。
これでもう実らない想いに惨めになることもないと安堵感すら覚えた。


季節は巡り、夏が来た。私には新しく彼氏ができていて、喧嘩しながらも仲良くやっていた。そんなある日だった、彼から唐突に連絡が来た。

「あのときはごめん。良かったらまた友達になってほしい。」

自分勝手だなと思いつつも、また彼から連絡が来たことが嬉しかった。
忘れたつもりだったけど、やっぱり忘れられなかったのだ。

それから、また彼と「友達」としてたまに会うようになった。
カラオケに行って、ごはんに行って、解散する。健全な友人関係。
もはや恋心はなかったけれど、この安定した関係の居心地が良かった。


気づいたら、私も彼も大学を卒業して社会人になっていた。

社会人として、毎日仕事に追われる日々を過ごすうち、彼とはなんとなく連絡を取らなくなっていた。
彼からは何回も遊びに誘われたけれど、気乗りしなくて断っていたため、次に会ったのは前に会ってから1年も経った時だった。

久しぶりに会う彼はなんだか別人みたいでなんとなく緊張した。
なんだか出会いたての頃に戻ったような、そんな感覚に陥った。

ただし、当時とは立場が逆転している。
彼の態度や言葉の節々から私を好きな気持ちが伝わってくるのに、どうしても彼をまた好きにはなれなかった。今の関係が壊れるのも嫌だった。
ましてや、私にはすごく大事にしてくれる彼氏がいる。
彼氏を裏切りたくはなかった。

「君みたいな人だったら、付き合うのも悪くないんだろうな。」
予約してくれたおしゃれなレストランで、少し酔った彼がしみじみと言った。

「きっと素敵な人が見つかるよ。私も素敵な人と付き合えてすごく幸せだから。」

笑って答える。
彼が少し傷ついた顔をしていて、胸が痛んだ。
でもどうしても聞きたくなかったのだ。決定的な言葉を。
もし聞いてしまうと私の中の大好きだったあの時の彼が、あの時の私たちがいなくなってしまう気がした。

あの瞬間はもう戻ってこないのだ。
私たちは大人になってしまった。
本来もっと早くに終わるはずだった、私たちの時間。
居心地が良くてついつい長居してしまったけれど、
私たちは前に進まないといけない。

いつまでもあの時の記憶の中に閉じこもっていたらだめなのだ。


帰り際、「またね」という彼。
私は笑って手を振る。
電車の中でスマホを開くと、彼からお礼のメッセージが入っていた。
スタンプを押す。既読がついてメッセージが終了した。

私はその指で彼をブロックした。

さよなら、あの時のふたり。
さよなら、あの時の気持ち。

大好きだったよ。
またねって言えなくてごめんね。
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