お父さん、あのね、
⚠この純猥談は不倫表現を含みます。
お父さん、あのね。私好きな人が出来たんだ。


お父さんは、私が生まれてすぐお母さんとは別の女の人と出ていった。
だから、顔も声も何も知らない。好きでもないし、恨んでもない。興味もない。

中学生の頃はみんなが普通に与えられている父親からの愛情を羨ましく思った時もあった。自分は欠陥品なんじゃないかと苦しんだこともあった。
今はそんな感情を抱くこともない。


ただ、底知れない寂しさを埋められぬまま23歳になった。

初めて寝た男は、ネットで知り合った9つ上の人だった。
何も知らない私は、されるがままに身を委ねていたけれど、肌と肌とが擦れる感覚が妙に心地よかったことだけはよく覚えている。

可愛いね、と頭を撫でられることが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
男の人ってこんなにも温かいものなのかと感じた。

ただ、1度終わってしまえば幼い私のことなど気にもとめず、その人はいなくなった。

たくさん泣いた。
すぐに代わりを作って、そしてまた泣く。何回繰り返したことだろう。
抱かれている時だけ、寂しさを埋めることが出来た。ただ1人でいる事が怖くて涙を流した。
今考えれば、好きな人なんて1人もいなかった。

こんなことはやめようと何度も思ったけれど、やめられなかった。


そんな私にも好きな人が出来た。
後輩からも上司からも信頼されている素敵な人。

私と同じ部署で係長をしている彼は、穏やかながら的確なアドバイスをくれる。特別かっこいい訳ではないが、そんな姿にすぐに惹かれていった。


入社して初めての会社での打ち上げ。
雰囲気に流され少し飲みすぎた私を、彼は家まで送ってくれた。

タクシーの中、私は彼にもたれ掛かる。酔いに任せ少し大胆になっていたと思う。彼もそんな私を受け入れる。
今夜はこのまま一緒にいたい、そう思った。彼もきっと同じことを思ったのだろう。私の手を握り、指を絡めた。少し汗ばんだ手に力が入る。

マンションの最寄りまで着き、タクシーを停める。2人で降り、手を繋いだまま部屋の鍵を開けた。


狭い玄関で彼は私を抱き締める。

「可愛い。君が入社した時から思ってた」
「嬉しいです」

彼の顔を見上げる。
そっとキスをしようとした、その瞬間に彼のスマホが鳴る。

彼は構わず続けようとするが、あまりにも長く流れる着信に胸騒ぎがした。

「あの、気にせず出てください」

彼はスマホを一瞬見て

「大丈夫」

画面には彼と同じ苗字の女性の名前とウエディングドレス姿のアイコンが表示されていたのが見えた。

きっと大切な人だろう。

彼としてしまったらこの人は悲しむだろう。

本当はこのまま抱かれたかったけれど、身体をよじって腕から逃げた。

「お互い少し酔っちゃいましたね。明日からもお仕事頑張りましょう。」

少し驚いた顔をしている彼を部屋から出しながら言う。

「俺、君のこと好きなんだけど」

「私も好きですよ、上司として」


嘘、男として好き。

でも、お父さんのように誰かを傷付ける恋愛はしたくなかった。

だから、必死に私の中の何かを守った。
彼は諦めたようにその場を去る。1人きりになった玄関で泣いた。


あのね、お父さん。私好きな人が出来たんだ。
お父さんにそっくりな人。

お父さんのことは好きでもないし恨んでもない、そんなのも嘘。

ずっと恋しいし、ずっと嫌い。
無意識にずっとお父さんを求め探していたんだろう。


でも、お父さんみたいには絶対ならない。

この恋がどんなに苦しくても1人で乗り越えるから。
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