君を好きな理由が、いつからか君を嫌いな理由になっていた。
 君の不器用だけど一生懸命な優しさが好きだった。かっこつけられないださいところが好きだった。正直で嘘をつけない素直な性格が好きだった。君の汚い字が好きだった。君との時間が大好きだった。私を痛いほど愛してくれる君が愛おしかった。


 1年目の記念日に君は金木犀のネックレスをくれた。
「この前出かけた時、これ可愛いって言ってたでしょ?」
「覚えててくれたんだ!嬉しい、ありがとう〜!」
得意げな君が可愛く思えて、いつもより大げさに喜んでみた。私が欲しかったのは金木犀のネックレスの隣にあったリングだったけど、そんなことよりも、この日を楽しみに君がプレゼントを用意してくれていたことがたまらなく幸せだった。
 家に帰って君がくれた手紙を読むと、大きくて汚い字で私への愛の言葉が綴られていた。小学生みたい、と思わず吹き出してしまった。お世辞にも、綺麗な文章とは言えないけれど、一生懸命この手紙を書く君の姿が想像できて心が暖かくなった。

君といる時間が幸せでいつまでも続いて欲しいと願っていた。これからも純粋で真っ直ぐな君でいて欲しいと思っていた。



 私の願った通りに、社会人になっても君は変わらなかった。私のことを一生懸命に愛してくれるところも真っ直ぐな優しさも、不器用なところも、かっこつかないところもすべて。
 裏腹に、私は変わってしまった。仕事が忙しくなると、君に会う時間をもったいないと思った。君がくれる的外れなプレゼントには上手く笑顔でありがとうと言えなくなった。汚い字で書かれた私への愛の言葉を稚拙な文章だと思うようになった。周りの見えない君の優しさが鬱陶しかった。私の気持ちに気づかない君が、私に向ける純粋で屈託のない笑顔や愛情が痛かった。あの頃のようには君を愛せないことが辛かった。

 君を好きな理由が、いつからか君を嫌いな理由になっていた。
 金木犀の香りがすると、今でも君を愛していたあの頃に戻りたくなる。




 君は、不器用で頼りない僕を一生懸命で思いやりのある人間だと言ってくれた。

 君とのデートはだいたい君の好きな場所や行きたい場所に行った。記念日のディナーだって、君が予約したお洒落でドキドキするレストランに行った。僕だって、君のためにかっこいいお店を予約して、君を笑顔にさせたかったけど、僕の選んだお店では君はいつでも無理して笑うから、きっとこの方がいいんだろう。
 1年目記念日に君を思って用意した金木犀のネックレスのプレゼントも君はあまり嬉しくなかったみたいだった。ありがとうとはしゃいでみせてくれたけど、君のことが大好きな僕だから、君が本当に喜んでいないことくらいすぐにわかる。君に喜ぶフリをさせてしまったことはとても申し訳なく感じたけれど、それ以上に、僕を気遣って喜んだみせてくれた君の健気なところが愛おしかった。 
 家に帰って手紙を読んでくれたかなとドキドキしていた。字は汚いし、手紙なんて書いたことはなかったからきっと君は、小学生みたいだと今頃ニヤニヤしながら僕の手紙を読んでいることだろう。それでも、君が好きという気持ちが伝わればそれでよかった。

 「君の真っ直ぐな優しさが好き。不器用でも一生懸命に私を愛してくれるところが好き。」と君がよく言ってくれたから、嫌いだった自分のことが少し好きになった。これからも、君の好きな僕でいたいと思った。この時間がずっと続いてくれたらなんて幸せなんだろうと思っていた。



 社会人になっても相変わらず僕は君のことが大好きだった。仕事が忙しくたって君に会えばすぐに疲れが飛んでいった。
大好きな君のことだから、君が僕と同じ気持ちじゃないことくらいすぐに気づいた。僕が選んだプレゼントでは、前みたいには笑ってくれないし、僕からの愛の言葉を申し訳なさそうな顔をしながら受け取っている君をみて心が痛かった。それに、君の口からは、君と働く、器用で余裕がある同僚の話が多くなってきた。君は気づいてないかも知れないけど、君がその人に惹かれていることくらい気づいていた。
 それでも君のことが好きだったから、君への愛を伝え続けた。

 君が好きと言ってくれた、僕の不器用で一生懸命な性格は、君が僕を嫌いになる理由になってしまったらしい。
 金木犀の香りがすると、今でも君と過ごした幸せな時間に戻りたいと思ってしまう。

















 
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