友達ならさよならもないけど、それは嫌なんでしょう?
「角煮作ってよ。濃いーやつ」

初めて会ったときはこんな風になるなんて思ってなかった。

知り合って仲良くなってすぐ、自粛期間。
外に遊びにも行けなくなって、家で会うようになった。

ただテレビを見て一緒にご飯を作って食べる。
それだけで楽しかった。

触れられることはなかった。
付き合う前の男女が密室ですることなんて、と思っていた私は戸惑った。


その後、何回目かのお家デート。
酔っ払った二人の距離感は曖昧になっていた。

「今日泊まっていっていい?」

狭い私のシングルベットに背の大きなあなたと私。

必然的にくっつくしかなく、求めあうしかなく、所詮私たちは男と女なんだなと思った。

それと同時にやっぱり女として見られていたんだなと安心した。


次の日の朝、起きても隣にあなたがいた。
眠るときより近く、もっとそばに。

その日から週末は私の家に来てご飯を食べて泊まることが当たり前になった。

家だけじゃなく、自粛が空けてからは
一緒にIKEAにもデートに行ったし、
ドライブデートで海にも行った。

「おはよう」「仕事おわった」「今から帰る」「おやすみ」
毎日毎日途絶えることなく連絡が来た。

付き合っているのかと思ったし、
付き合えるとも思っていた。

でも「好き」とも「付き合おう」とも言われていない。
それが答えだってことは、本当は分かっていたけど。

そんな関係がもどかしくて私はあなたに何度も聞いた。
「どう思ってるの?」
「もう友達ではいられないよ。友達にはご飯作らないし家にも泊めない。こんな風に触れたりしない。
好きじゃないとこんなに会わないよ、少なくとも私は」

「そうだね。一緒にいて楽しいよ。また来週も会えると思ってるし、
角煮も作ってもらいたいなと思ってる。
作ってよ、いつものやつ」


夏になり、お家時間も減り、
あなたと会う時間も少しずつ減っていった。

毎週会ってたから寂しくて寂しくて仕方なかったけど、
そうじゃないふりをした。

その間も毎日毎日連絡がきた。
朝も昼も夜も。

付き合わないならこのまま連絡を取っていても、会っていても辛くなるのは自分の方だ。

こんなこと初めから分かっていたけど、まだ引き返せる。まだ間に合う。

それからあなたも仕事が忙しくなって、
会おうと言うこともなく、私が誘っても疲れていて会えない日が続いた。

私が切り出した。

「もう終わりにしよう。付き合わないなら会うのも連絡取るのも」

会ったら言えないかもしれないから、電話で。
泣きながら、自分の心を守るためだと思って。

それが最後の会話。あなたも泣いてたね。

「楽しくて、ずっとごまかしてきた。
好きだと伝えてくれてたのに曖昧にしてごめん。
やっぱり今は彼女に構う余裕がない。
友達と遊ぶのも楽しいし仕事も忙しい。
このままこの生活がなんとなく続けば良いと思っていたけど、
それは俺のわがままだってわかってるよ。

友達ならさよならもないけどそれは嫌なんでしょう?」

私は初めて会った日から、
友達と思ったことは一度もなかったよ。

友達にはキスしたりあんな風に触れたりはしないよ。
そんなこともわかんないのか、馬鹿。


電話を切ってから永遠に泣いた。
次の日仕事だったけどそんなことも考えられないくらい。
ご飯も食べずにひたすら泣いた。


あやうく好きになるところだった。
引き返せなくなる前に断ち切って良かった。
そう思うのに涙は止まらなかった。
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