知らねえやつとセックスした後の駅前ガストの辛口チゲとレモンサワーは格別だった。
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
知らねえやつとセックスした後の駅前ガストの辛口チゲとレモンサワーは格別だった。当たり前だ。今日一日おにぎり一個とチーカマしか食べてない。空腹に夜中のチゲとサワーは犯罪級だった。

ガストの生搾りレモンサワーを頼んだことのある人はわかると思うが、生のレモン半個を自分で絞らなければならない。客に投げすぎだすかいらーく。どういうことなんだ一体。とか思いつつも、大人しく一人でレモンを生絞る。

生。そうそう。生だったよなあ、今日のやつ。

人生で忌み嫌っているセックスがある。生ハメセックスと首締めセックスだ。理由、危ないから。時々変な人が「S?M?」と聞いてくることがある。わからない。そんなものはない。言葉責めが始まると、急に置いていかれる。ここはどこだろう?という気持ちになって、性欲処理がおままごとに格下げされてしまう。

「浮気でこんな気持ちよくなっていいの?」

え? と思った。え?これ、浮気なの。

わかっている。自分の行動が世間一般に浮気なのは。でも全然心が付いてこない。私が「浮気だ!」と思うのは、心が浮ついたときだ。他の男を好きになった時初めて罪悪感に苛まれる。自分は性欲が強い。普通の女の人よりは大分ある。でもそれってどうしようもなくないか。食欲旺盛な人間、睡眠欲旺盛な人間がいるのと同じように、性欲旺盛な人間もそりゃいるだろう。食欲旺盛なやつは食べて欲を満たし、睡眠欲旺盛なやつは極限まで惰眠を貪り欲を満たすなら、性欲旺盛なやつはテキトーにいいやつ捕まえてセックスするしかない。いやこれは開き直りか。まあいいか。普段は全然いい。ただもう生理前はほぼモンスターだ。自分で自分が怖い。この前の生理前はトーイックの"イック"が卑猥に聞こえて仕方なかった。モンスターは今日、彼氏とタイミングが合わなくてついにティンダーで都合良いやつをスワイプしてしまったわけだ。知らない駅の見慣れないセブンの前に見知った電子タバコを吸う知らない男が待っていた。

あ、glo

うわ、と思った。元彼も今の彼氏もそうだ。ひえ、とちょっとだけ血の気が引いた。

タバコ吸ってます、と書いてあるやつとは極力会わない。ダサいからだ。それを自己紹介にあたかもアイデンティティかのように書いちゃうその子供っぽさが嫌いだからだ。タバコ吸いません!と書いてある人もあまりスワイプしない。だいたいそういう人の自己紹介文はつまらない。自己紹介ですらスベっている人間が現実で面白いわけがない。だから私はバカの一つ覚えように、それはもう淡々と、自己紹介に情報量の少ない顔が薄めの黒髪をスワイプする。とgloを吸っている。回数を重ねて好みのタイプがだんだん浮き彫りになってきた。黒髪でエロい塩顔の25歳以下。で、数あるタバコの中からなんとなくgloを選ぶような男。

乳首が感じるやつだった。舐めてやったらめちゃくちゃ気持ちよさそうにしていた。そんなに簡単によくなれていいなあ、と思った。私の乳首に自分のを擦り合わせて「これ本当に興奮する」と言っているのを見て、「私は何をさせられているんだろう」と思ってしまった。いつも客観的にセックスを俯瞰してしまう。ちょっと変わったことをされると我に返ってしまう。結局行為中かなりの割合で乳首を舐めさせられた。

小さくてかわいい黒いチワワを飼っていた。まだ5ヶ月なのにめちゃくちゃ躾されていて、ひとつも吠えないしおすわりすらできた。その小さくてかわいいチワワがティッシュで遊んだから、乳首の人は結構大きな声で叱った。そういえば、カナダでホームステイしていた家にも小型犬が二匹いた。無駄吠えをした時にはこんな風に叱られていたっけか。こういうのを見ると絶対に犬なんて飼えないなあと思うのである。叱れない。顔がかわいすぎて、可哀想で叱れない。多分子育てなんかも向いていないんだろう。乳首の人は小さくてかわいいチワワを叱った後に「ほら、凄い落ち込んでる、みて。顔。俺Sやからこういう顔見ると可愛いって思っちゃうんよな」とぽろりと言った。その後に、ちゃんと叱る必要がある時しか叱らんよ、と付け加えた。多分私が「え?」という顔をしていたのだろう。乳首の人は、乳首はもの凄く敏感であったが、その一言から本当にSなんだなあ、と伺えた。

セックスがお上手だった。変わった香水を付けた人だった。舐めてと言われてちんこかと思ったら乳首だったのでつい吹き出してしまったら「してる途中で笑わんで、なんかいや」と言われた。なんか前にも似たようなことを言われたことがあった。

しつこく「また会いたい」とか「またしたい」とか、「定期的に会おう」とか言ってきた。きっと私に彼氏がいるからだ。そういう言葉をテキトーにいなすからだ。そういう言葉にすぐ「うん」と言ってしまえる女は1、2回抱ければ満足なのだ。人のものを自分のものにしたいだけなのである。すぐ手に入ってしまえばきっと用はないのである。

ひっでえ世の中よな〜、としみじみしながらレモンサワーを流し込んだ。なぜか炭酸を想像して注文したが、そういえばサワーって別に炭酸ではない。

セフレなんて作るもんじゃないよなあ、とつくづく思った。会えば会うほど情が移る。なんとなく相手の生活を想像してしまう。何でもない会話を楽しく思う。自分の性格では、定期的に会ってセックスをする人間を好きにならないなんてよほど顔が好みじゃない限りむりだなあ、と思われた。しかもよほど顔が好みじゃないやつとはセックスなんてしないしな。多少リスクはあっても精神的にはワン切りがいい。なんてしょうもないことをまた一つ心に刻んだ冬の夜だった。あーあ。あのチワワ、名前なんだっけ。
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