忘れたい人と似た人を選んだ彼。忘れたい人と真逆の人を選んだ私。
3年間付き合った彼氏と別れた。
大好きだった。本当に本当に大好きだった。でも同棲していた家を出た時、涙は1粒も出なかった。


「おねーさん、酔ってるの?」

いつの間にか夜の街の真ん中でしゃがみこんでいたわたしに声をかけてきた男の人。

「そうだね。」

名前も知らないその人にそう答えたその日から、馬鹿みたいに色んな人と体を重ねた。
ナンパ、クラブ、出会い系。
馬鹿みたいな男の人の馬鹿みたいな性欲に、「必要とされている」という馬鹿みたいな嬉しさを見出す日々。


そんな生活を1ヶ月ほど続けていた時に彼に出会った。
甘い顔。高い身長。
何より印象的なのは、元彼が大嫌いだったアバクロの香り。

流されるままにホテルに向かった。

彼のセックスはわかりやすく上手で、蕩けるくらい優しかった。
けれどいつもみたいに嬉しくなくて、「 かわいいね。」って耳元で囁かれながら、何故か無性に泣きたかった。

彼と出会ってから、他の人からのセックスの誘いを断るようになった。

恋人同士のようなデートをして隣で寝ているのにキスだけで終わる日。
何度も何度も動物みたいに交わる日。
彼氏彼女の肩書きがない関係に、始まりのない関係に、わたしは酷く安心した。
けれど一方で女の子の「理想の彼氏」を詰め込んだような彼に特定の彼女がいないのが不思議でたまらなかった。


でも、ある日気づいた。

「元カノ、」

2人で歩いてる時、目の前に通りかかった女の子を見て不意に立ち止まった彼。
どうしたのかと尋ねるとそう呟いた。

髪型とお化粧の雰囲気が、少しだけわたしと似てた。

忘れたい人と似た人を選んだ彼。
忘れたい人と真逆の人を選んだ私。

彼とのセックスで泣きたくなるのは、元彼とは正反対すぎるから。
元彼の、ぎこちないくせに「痛くない?」って聞くところが堪らなく愛しかったから。

頭のどこかではわかっていたはずなのに。


「可愛かったね。元カノ。」

「馬鹿にしてる?」

「してないよ。わたしも関係が終わる瞬間の絶望感を味わいたくないからこんなことしてるんだなあって思った。」

「知ってる。もう黙って。」


わたしを快楽に沈める手も、わたしを見るこの優しい目も、元彼が連れて行ってくれなかったようなデートに連れて行ってくれる優しさも、全部彼の元カノのものなのだと思う。

わたしは、彼とは真逆な元彼を思い出しながら今日も彼に会いに行く。

わたしたちの関係には終わりが来ないことを願って。
 ツイートする
純猥談はユーザーのみなさまからのサポートによって運営していきます。
 サポート会員になる
100円からサポートいただけます
おすすめの純猥談
高速バスは走り始める。私はまた田舎へと帰る。
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
冬夏 さんからの純猥談
つづきをよむ >
君を好きな理由が、いつからか君を嫌いな理由になっていた。
しお さんからの純猥談
つづきをよむ >
暑中お見舞い申し上げます
かすみ草 さんからの純猥談
つづきをよむ >