僕達のトークルームは1度も動いていない。
一目惚れだった。
高校1年生の時、僕が通っていた塾に彼女は入ってきた。整ってキリッとした眉毛、くっきりとした二重、黒く真っ直ぐで動く度にカーテンのようになびく髪、全てが美しいと思えた。

どうにか付き合ってみたいと思った僕は、デートに誘って必死にアタックした。その甲斐あって彼女と付き合えることが出来たときは幸せだった。映画を見に行って、ごはんを食べに行って、クリスマスにはお互いの初めても捨てた。

しかし高校生の恋愛は何事も早いもので、些細な喧嘩が原因になって4ヶ月という短さで破局してしまった。大半の高校生の恋愛なんてそんなものだろう。

そのあと僕には数人の彼女ができ、彼女にも数人の彼氏ができた。

しかしまぁ女の恋は上書き保存、男の恋は名前をつけて保存とはよく言ったもので、僕はあの子を忘れられず、あの子のは僕の頭の中の1番上にあった。別の彼女が出来たあとも、自分の中で一番好きなのはあの子だったのだと思っていた。

高校を卒業し大学のため上京したのでもう会うこともないだろうと思っていたのだが、成人式の会場で僕は彼女を見つけてしまった。思わず心拍数が上がるのを必死に抑えて声をかけた。4年経って考え方も変わっていたが、お互い恋人もいなかった僕達が元の関係に戻るのにそれほど時間はかからなかった。

2年ほど遠距離恋愛を続け、就職していざ地元に帰り会える頻度が増えると思った2週間後、突然別れを告げられた。好きな人ができたらしい。悔しかった。月に2回ほど夜行バスで会いに行ったあの日々を思い出すと腹が立った。

それから4ヶ月が過ぎ、自分の中でそろそろふっ切れたかなと思っていた時、見ることも無くなっていたLINEのトークルームに通知が1件入った。

「久しぶり、元気?借りてた本を返したいんだけど」

それにまだドキッとしてしまう自分がいた。

「OK、いつがいい」

できるだけ素っ気なく返してやった。

そのあと予定を合わせて二人でよく行ったカフェを待ち合わせ場所にして合流した。酒好きな彼女が一杯だけと言ってきて翌日が休みだったこともあり適当な居酒屋で酒を飲んだ。思わず話し込んでしまい気づけば終電の時間が近くなっていた。僕達は並んで歩いて駅へ向かった。

酔った勢いなのかどうかは分からないが
「やっぱりあなたがいい」
終電を待つホームで彼女がそうつぶやいた。

僕は酔っているんだと自分に言い聞かせ、彼女の手を引き、ホテルへ向かった。
歩いていると、僕の抱いていたその身体を別の男に抱かれたと思うと怒りがわいてきたが、部屋の鍵を抜く頃にはそんなことどうでも良くなっていた。今までで1番求めあっていたんじゃないかと思う。彼女とのセックスは文句なしの満点で、最高に甘かった。

目が覚めてホテルを出た時、彼女は微笑みながら「じゃあね」と言った。僕は少し遅れて「そうだね」と返した。

帰りの電車の中で、僕は2年と4ヶ月の間、抱え続けていた彼女への想いを胸の奥深くにしまった。
もう1番上に居座り続けることもないだろう。

それから半年。風の噂で元カノには新しい彼氏ができたと聞いた。

僕達のトークルームは1度も動いていない。
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