あれから20年経っても、私のコンプレックスは変わらない
私にはいくつもコンプレックスがある。

まず母。
過保護で過干渉で、お金や行動・時間全てを管理したがる。
そして、私が居ないと生きていけないとまで言う。
私もそれを振りきる勇気がない。だって母が可哀想だから。

母に管理されているからか、青春時代に皆が経験したであろうことを全然経験できなかった。
だからなのか、常識のない人だと思われてしまうことが多い。
カラオケに行ったことがない、マックで買い食いしたことない…
行ったことないところ、食べたことないもの、経験したことがないものが日常にたくさん転がっていた。

メイクもファッションもお金がないとできないし、
門限も厳しければ部活すらまともにできない。恋愛だって難しい。何の経験もなく、ただただ自分に自信のない私がいた。


そんな私が、あなたを好きになる資格なんてないと思った。
私はお客さんで、あなたは店員さん。
マニュアル内の接客で、楽しく過ごせるひと時があるならそれでいいんだと思った。
優しくしてくれるのも私がお客さんだからで、私以外のお客さんにもきっと同じことをしているから。

伯父さんからもらったギターが壊れて困っている話をしたら、じゃあ直してあげるよと言って預かってくれた。

後日直ったから、と呼び出される。
初めて2人きり。
もう認める。私この人のこと好きだ。
好きになる資格ないかもしれない、だけどやっぱり好き。

ただ告白するつもりはなかった。
私はこんなにも非常識で、コンプレックスも多くて、おしゃれもメイクも全然可愛くなくて、自分に自信がなくて…6歳も年上な大人なあなたに、似合うはずがない。
説明しているうちにどんどんと涙が出てきて、自分のこと知ってほしいから話してるのに、惨めで情けなくて、何一ついいところなどないのだと痛感した。
うんうん、ってただ頷いて聞いてくれてた。

「ただ、それでも私あなたのこと…」

びっしょびしょに泣いた不細工な私の顔に、彼はキスをして、一瞬時が止まった。

「初めて会った時から、ずっと気になっていたんだ。好きです。」
と言って、そっと壊れ物を包むように優しく抱きしめてくれた。



あれから20年経っても、私のコンプレックスは変わらない。
相変わらずお金の使い方は下手くそだし、ママ友とのランチの約束すら交わせない。
学校や保育園の先生と話してても、「え?」って顔されるので常識外れなこと言っているのかもしれない。

それでも毎晩21時過ぎには、お皿を洗いながらうんうんと話を聞いてくれるあなたがいる。
20年前よりもぽっちゃりしたお腹で、短く切った髪、疲れた無精髭で。
それでも変わらず
「それが君のいいところで、僕の好きなところ。」
と穏やかに言ってくれる。
それだけで、ああ私があの時感じた何かは間違いなかった、あの時自分に素直になれて本当によかったと思う。

全ての初めてを彼と歩んできて、きっと終わりも彼と過ごすだろう。
彼とたくさん初めてを過ごすための束縛だったのだろうか…そうまとめるには綺麗すぎるかな。
馴れ初めの後、たくさんのことが試練のようにあったけれど、その奇跡の上に今の生活があるんだとしみじみ思う。
子供達には、死んだらパパの骨と混ぜて海に巻いてねってお願いしている。
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