「またね」と言えなくなってしまった
ちょっと生意気な年下の男の子。それが最初の印象だった。
共通の知り合いもいたし、仲良くなるのに時間はかからなかった。
ほんとに仲のいい先輩と後輩という関係で、連絡はとっていたけど内容は薄いものだった。
それから、たまたまあったりはしていたものの連絡はいつの間にか途切れていった。
1年がたった頃、彼から連絡が来た。
内容は覚えていない。その日から毎日連絡を取っていた。
「おはよう」「今から仕事行ってくるね」「おやすみ」
彼と連絡を取ることが生活の一部になった。
このまま付き合ったりするのかな。
なんとなくそう思うことが増え、期待してしまっていたのだと思う。
風が冷たくなってきたある日、彼に押し切られてホテルに行った。
結局何もせずに、何もできずに、一緒にベッドで眠った。
彼があまりにもずっと寝ているからすねていたら、「居心地が良すぎるからだ」と反対に怒られ、じゃれあった。
でも付き合うとかではないんだ、そう思いながら帰る準備をしたことを今でも憶えている。
彼の車で送ってもらった。
ホテルを出てからのちょっとぎこちない雰囲気を音楽でごまかしていた。
「またね」「うん、またね」
そういったはずなのに、その日から連絡が目に見えて減っていった。
やっぱり体目的だったか。
そう思ったときには遅くて、もうこのときには好きになってしまっていたんだと思う。
でもそれを認めなかった。認めたくなかった。
それからも連絡はだらだら続けて、会う予定を立てるときだけ盛り上がるというのが定番だった。
結局、ホテルに3回行った。
普段はツンツンしている彼が2人きりになった瞬間甘えてくるのがたまらなく好きだった。
ホテルに行く前に必ずコンビニに寄って、アイスを買う時間が大好きだった。
ここまでくると、この関係は間違いなくセフレで、彼女になれることはないと悟っていた。
でもせめて他の人のものにならないで、と願った。
この関係になって3ヶ月が経った頃、もう終わりにしないといけない、そう思って誘いを全て断った。気を抜いたら会いに行ってしまいそうだったけど、なんとか耐えた。
すると、何日かしてホテルではない、デートの誘いが来た。
いつもは夜に会うけど、この日はめずらしく昼間のお誘いだった。
これで最後にしよう。そう決めて。
おしゃれをして会うことなんかなかったから緊張して、たぶんそれは向こうも同じで、「ニヤニヤするなよ」って笑いあった。
時間はあっという間にすぎたけど、正直楽しいとは感じなかった。感じる余裕がなかった。
最後の彼との時間を噛み締めることで精一杯だったのだと思う。
「今日はありがとう、またね」
そう言って私たちはそれぞれ家に帰った。
いつもなら絶対に振り返らないけど、最後だと思ったらなんか名残惜しくて、ふと振り返った。
その瞬間に色々なことを思い出してしまった。
「まだ起きてる?」っていう彼からのLINE。
バイバイしたあと、ホームで電車を待つ時間。
車でかかっていたC&Kのみかんハート。
体にかすかに残ってるにおい。
息遣いや体温。
いつも一緒に食べてたピノ。
運転してる横顔。
私の名前を呼ぶ声。
最後の「またね」。
やってしまったと思った。好きだなと思った。
そう思ったときにはもう遅くて、駅に着いた頃には泣いていた。
最後と決めたのは自分で、もう傷つきたくないと思ったのも自分。
好きと伝える勇気が欲しかった。嫌われてもいいから、ただ好きだと伝えれば良かった。
それから半年がたった。連絡を全て無視していると、次第に来なくなった。これでよかったんだと思うと同時に少し寂しかった。
失恋は時間が解決してくれるというのは嘘ではないと思う。でも、あれからピノは食べられなくなったし、みかんハートを聴けなくなった。
そしてなにより、「またね」と言えなくなってしまった。
最後の彼の後ろ姿を思い出してしまうから。
共通の知り合いもいたし、仲良くなるのに時間はかからなかった。
ほんとに仲のいい先輩と後輩という関係で、連絡はとっていたけど内容は薄いものだった。
それから、たまたまあったりはしていたものの連絡はいつの間にか途切れていった。
1年がたった頃、彼から連絡が来た。
内容は覚えていない。その日から毎日連絡を取っていた。
「おはよう」「今から仕事行ってくるね」「おやすみ」
彼と連絡を取ることが生活の一部になった。
このまま付き合ったりするのかな。
なんとなくそう思うことが増え、期待してしまっていたのだと思う。
風が冷たくなってきたある日、彼に押し切られてホテルに行った。
結局何もせずに、何もできずに、一緒にベッドで眠った。
彼があまりにもずっと寝ているからすねていたら、「居心地が良すぎるからだ」と反対に怒られ、じゃれあった。
でも付き合うとかではないんだ、そう思いながら帰る準備をしたことを今でも憶えている。
彼の車で送ってもらった。
ホテルを出てからのちょっとぎこちない雰囲気を音楽でごまかしていた。
「またね」「うん、またね」
そういったはずなのに、その日から連絡が目に見えて減っていった。
やっぱり体目的だったか。
そう思ったときには遅くて、もうこのときには好きになってしまっていたんだと思う。
でもそれを認めなかった。認めたくなかった。
それからも連絡はだらだら続けて、会う予定を立てるときだけ盛り上がるというのが定番だった。
結局、ホテルに3回行った。
普段はツンツンしている彼が2人きりになった瞬間甘えてくるのがたまらなく好きだった。
ホテルに行く前に必ずコンビニに寄って、アイスを買う時間が大好きだった。
ここまでくると、この関係は間違いなくセフレで、彼女になれることはないと悟っていた。
でもせめて他の人のものにならないで、と願った。
この関係になって3ヶ月が経った頃、もう終わりにしないといけない、そう思って誘いを全て断った。気を抜いたら会いに行ってしまいそうだったけど、なんとか耐えた。
すると、何日かしてホテルではない、デートの誘いが来た。
いつもは夜に会うけど、この日はめずらしく昼間のお誘いだった。
これで最後にしよう。そう決めて。
おしゃれをして会うことなんかなかったから緊張して、たぶんそれは向こうも同じで、「ニヤニヤするなよ」って笑いあった。
時間はあっという間にすぎたけど、正直楽しいとは感じなかった。感じる余裕がなかった。
最後の彼との時間を噛み締めることで精一杯だったのだと思う。
「今日はありがとう、またね」
そう言って私たちはそれぞれ家に帰った。
いつもなら絶対に振り返らないけど、最後だと思ったらなんか名残惜しくて、ふと振り返った。
その瞬間に色々なことを思い出してしまった。
「まだ起きてる?」っていう彼からのLINE。
バイバイしたあと、ホームで電車を待つ時間。
車でかかっていたC&Kのみかんハート。
体にかすかに残ってるにおい。
息遣いや体温。
いつも一緒に食べてたピノ。
運転してる横顔。
私の名前を呼ぶ声。
最後の「またね」。
やってしまったと思った。好きだなと思った。
そう思ったときにはもう遅くて、駅に着いた頃には泣いていた。
最後と決めたのは自分で、もう傷つきたくないと思ったのも自分。
好きと伝える勇気が欲しかった。嫌われてもいいから、ただ好きだと伝えれば良かった。
それから半年がたった。連絡を全て無視していると、次第に来なくなった。これでよかったんだと思うと同時に少し寂しかった。
失恋は時間が解決してくれるというのは嘘ではないと思う。でも、あれからピノは食べられなくなったし、みかんハートを聴けなくなった。
そしてなにより、「またね」と言えなくなってしまった。
最後の彼の後ろ姿を思い出してしまうから。