大切なものは失ってから気付く、なんて、失ってからじゃ遅いのに
共通の友達がやっているバーに、週末自然と集まる常連のひとりが彼だった。
一緒に飲んで、朝方彼の家に帰る。私と彼の関係はそんな曖昧なものだった。
次の日が仕事の私を、休みでも文句一つ言わず一緒に早起きして、職場まで送ってくれる優しい彼が人として好きだった。
今日も寝不足だね、なんて笑う時間が好きだった。
一緒にいて楽しいし落ち着くし、顔がタイプだし。
彼の隣はいつも居心地が良かった。ただ、それだけ。
だから自然な流れで一線を越えた夜も、セフレに降格した、なんて落ち込まずにいられた。
ある時から彼の好意には薄々気付いていた。
かっこよくて社交的な彼はどうせ遊んでる、そう思っていた私は、結婚願望のある彼に
「今は彼氏いらないんだよね」
「結婚には興味ないんだよね」
なんて遠回しに彼の好意を拒否してしまった。
だけど優しい彼の真っ直ぐな言葉や行動で、私の適当な気持ちが恋心に変わり始めるのに時間はかからなかった。
だけど、クリスマスが近づいてきた頃。
イブは彼を含めた何人かで集まってパーティーしようと言っていたのに、彼は別の予定が入ったからその会に来ないかもしれない、と耳にした。
イブに入る予定って何?違和感を感じて、胸騒ぎがした。
違和感で終わってほしかった。
「あっちは本気で好きだったよ。でも彼氏いらないって言ったでしょ?だから諦めるって。今他に気になる人がいるらしいよ。イブはその人と会うって」
友達から電話越しに聞いたとき、殴られたような衝撃が走った。
大切なものは失ってから気付く、なんてよくできた言葉だ。
失ってからじゃ遅いのに。
私は彼が好きだった。
すごくすごく、どうしようもないくらい。
なんで気付かなかったんだろう。
付き合わなくてもまだ一緒にいれるだろうなんて、どうして自惚れてたんだろう。
先に好きになった彼と、後から好きになった私。
そんなのずるい。後から好きになった方が取り残されるに決まってるじゃないか。
一緒にいてほしいと泣きじゃくる私に、彼の気持ちは揺れなかった。
私とは友達でいたい、今付き合いたい人がいる、としっかり線を引いてきた。
あんなに一緒にいたのに、幸せだったのに、なんでそんなにすぐに切り替えられるの。
「かっこいいから、どうせ遊んでるんだもんね」
「遊んでないよ、家に来るのも君だけだよ」
違う、私のせいだ。
何度も繰り返した会話を思い出す。
なんで信じなかったんだろう。
なんでもっと彼を見なかったんだろう。
彼は最初から私のことを見てくれていたのに。
きっと私が変に意地を張って返してしまった合鍵は、他の女の人に渡されるのだろう。
私が着てた彼のパジャマを、他の女の人が着るのは時間の問題なのだろう。
他にいい人が現れるよとか、時間が解決してくれるよとか、そんなの分かってる。
分かってるけど、他にいい人なんか一生現れなくていいから、私は彼がいい。
大好きでした。今まで好きになった誰よりも。
一緒にいてくれてありがとう。
伝えられずに、彼は私の隣からいなくなってしまった。
一緒に飲んで、朝方彼の家に帰る。私と彼の関係はそんな曖昧なものだった。
次の日が仕事の私を、休みでも文句一つ言わず一緒に早起きして、職場まで送ってくれる優しい彼が人として好きだった。
今日も寝不足だね、なんて笑う時間が好きだった。
一緒にいて楽しいし落ち着くし、顔がタイプだし。
彼の隣はいつも居心地が良かった。ただ、それだけ。
だから自然な流れで一線を越えた夜も、セフレに降格した、なんて落ち込まずにいられた。
ある時から彼の好意には薄々気付いていた。
かっこよくて社交的な彼はどうせ遊んでる、そう思っていた私は、結婚願望のある彼に
「今は彼氏いらないんだよね」
「結婚には興味ないんだよね」
なんて遠回しに彼の好意を拒否してしまった。
だけど優しい彼の真っ直ぐな言葉や行動で、私の適当な気持ちが恋心に変わり始めるのに時間はかからなかった。
だけど、クリスマスが近づいてきた頃。
イブは彼を含めた何人かで集まってパーティーしようと言っていたのに、彼は別の予定が入ったからその会に来ないかもしれない、と耳にした。
イブに入る予定って何?違和感を感じて、胸騒ぎがした。
違和感で終わってほしかった。
「あっちは本気で好きだったよ。でも彼氏いらないって言ったでしょ?だから諦めるって。今他に気になる人がいるらしいよ。イブはその人と会うって」
友達から電話越しに聞いたとき、殴られたような衝撃が走った。
大切なものは失ってから気付く、なんてよくできた言葉だ。
失ってからじゃ遅いのに。
私は彼が好きだった。
すごくすごく、どうしようもないくらい。
なんで気付かなかったんだろう。
付き合わなくてもまだ一緒にいれるだろうなんて、どうして自惚れてたんだろう。
先に好きになった彼と、後から好きになった私。
そんなのずるい。後から好きになった方が取り残されるに決まってるじゃないか。
一緒にいてほしいと泣きじゃくる私に、彼の気持ちは揺れなかった。
私とは友達でいたい、今付き合いたい人がいる、としっかり線を引いてきた。
あんなに一緒にいたのに、幸せだったのに、なんでそんなにすぐに切り替えられるの。
「かっこいいから、どうせ遊んでるんだもんね」
「遊んでないよ、家に来るのも君だけだよ」
違う、私のせいだ。
何度も繰り返した会話を思い出す。
なんで信じなかったんだろう。
なんでもっと彼を見なかったんだろう。
彼は最初から私のことを見てくれていたのに。
きっと私が変に意地を張って返してしまった合鍵は、他の女の人に渡されるのだろう。
私が着てた彼のパジャマを、他の女の人が着るのは時間の問題なのだろう。
他にいい人が現れるよとか、時間が解決してくれるよとか、そんなの分かってる。
分かってるけど、他にいい人なんか一生現れなくていいから、私は彼がいい。
大好きでした。今まで好きになった誰よりも。
一緒にいてくれてありがとう。
伝えられずに、彼は私の隣からいなくなってしまった。