再表示されない彼の名前を追いながら、この冬もぼくはひとりぼっちです。
ぼくたちが知り合ったのはちょうど一年ほど前。
ぼくが、2年半付き合った前の彼氏と別れて間もない頃でした。

前の彼氏と別れた原因は向こうの浮気。
「友達を作りたい」という名目のもと、ぼくに内緒で始めたマッチングアプリ。
そこで、他に好きな人ができたらしい。
だから言ったじゃん、ほらね。
アプリがぼくにバレた時、俺のことそんなに信用できないのかって、ぼくを睨みつけながら大声で言ったよね。その結果がこれですか。
友達に言われるまで気が付かなかったけど、これを世間では浮気というらしいです。
別れ話の時は、一粒だけ泣きました。
躁鬱に苦しむ元彼を、実の家族よりもそばで一生懸命支えたのに。
こんなに愛していたのに。
悔しさが先に来ていました。


もう恋愛はこりごりだと思っていました。
でもやっぱり、嫌でも来てしまう冬は肌寒くて。
人肌が恋しいというつもりはなかったけれど、思い切ってアプリを始めました。
この歳になって初めて。しかも、元彼を奪った忌むべき存在であるアプリ。

そこで貴方と出会いました。
顔や体格はタイプど真ん中というわけではなかったけれど、丁寧なメッセージの文面に惹かれました。
話を進める中で、数少ない同じ業界の人間であるということや、学生時代に取得した仕事とは関係のない免許など、驚くほどマイナーな共通点も多くて、もっと知りたいと思うまでに時間はかかりませんでした。
職業柄、なかなか休みは合わず、さらにお互い片道2時間ほどかけて中間地点で会いましたね。
ぼくは、日を重ねるごとに貴方を好きになりました。


貴方が誰かのものになってしまうのが嫌で、貴方の誕生日前日に思い切って人生初めての告白をしました。
OKをもらえた時、貴方と出会う為に元彼と別れたんだと、やっと思えました。
奇跡だと思いました。運命だと思いました。
この人と一生一緒にいたい。と強く思いました。

それからしばらくは、順調に進んでいました。
まだ付き合って間もない頃から、縁のある地に旅行に行ったり、一緒に住む計画を具体的に立てたり。
貴方に抱かれている時は、ぼくなんかがこんなに幸せでいいのかなって、何度も何度も思いました。
幸せの形を確かめるように、貴方を抱き締めて眠りました。

でも、ダメだったみたいです。
僅か一ヶ月半で、振られてしまいました。
最初はぼくを傷付けまいと、理由をはぐらかされていましたが、ちゃんと教えて欲しいとしつこく伝えたところ、ぼくの想いの重さと、ぼくの身体の事でした。
世界で貴方一人にだけ、認めてもらえればそれだけで幸せだったのですが、そううまくはいきませんでした。
貴方を好きだと想う気持ちと、自分ではどうしようもない生まれつきの身体のせいで捨てられてしまったショックは、相当なものだったんだと思います。

またすぐに会えると思っていた貴方に突然振られて、滅多に流さなかった涙が止まらず、仕事も手に付かなくなりました。
双極性感情障害と診断されました。
同じ診断を受けていた前の彼を支えていた時には、絶対にならない自信があったのに。

死にたい一秒一秒と必死に闘いました。
常に布団の中にいて、服薬の為に食物を摂取し、社会に取り残されながら消えたくなる日々。何度も負けそうになりました。
前の彼と貴方のおかげでボロボロになったぼくは、家族と友人達の献身的なケアの末に、約半年ほどで運良く以前と同じような生活を送る事が出来る様になりました。

それでも、未だに脳裏に焼き付いています。

貴方と歩いた夜道も公園も、
貴方と食べた美味しいご飯のお店も、
貴方と見たあの川も大階段のグラフィカルイルミネーションも、
貴方と行きたかった水族館もちょっと背伸びした料亭も、
いつか貴方と一緒に住みたかった土地も、全部全部。

年末のぼくの誕生日のお祝い、年始の挨拶。
一言だけでも連絡が来ないかななんて、どこかで期待してしまっていました。

再表示されない貴方の名前を追いながら、ぼくはこの冬もまた、ひとりぼっちです。
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