「元彼より気持ちいい?」なんて聞かないで
「元彼より気持ちいい?」

そんなこと、今日会ったばっかのあなたが聞いてくるなよ、と思う。

「んー、そんなこと聞かないで」
「わかんない」

嘘がつけないわたしは、そんな風にしか答えられなかった。


本気で好きって思う相手とのセックス。
今日会ったばかりの相手との穴を埋めるようなセックス。
同じ気持ちよさなわけないじゃん。

本気で好きだから、気持ちいいんだよ。


相手が果てた後、わたしは泣いた。
バレないように、見えないように。

「元彼より気持ちいい?」
そんなこと聞いてくるから。
どんなにわたしが本気で元彼を好きで、どんなに元彼とのセックスが気持ちよかったか、どんなに元彼とのセックスが幸せだったかを思い出しちゃったじゃんか。


今日会ったその人にタクシー代をもらい帰路に着くタクシーの中、わたしは元彼との思い出に泣いた。


2週間前に別れたけれど、わたしは今も彼が好き。
だけど、好きだからこそ、もう元彼とはセックスをしない。

いつになったら、大好きだった元彼以外の男と身体を重ねても、泣かずに済むのだろう。
胸に残る、元彼への「好き」に、胸が苦しくならずに済むのだろう。 

彼と別れてからというもの、他の男と身体を重ねる度に、わたしは泣いている。
相手が果てた後に、自然と涙が溢れてきてしまうのだ。
もちろん、相手には気づかれないように。


男の穴は男で埋めろとか言うけど、わたしにはただ、元彼への「好き」を思い出して辛いだけだ。
穴なんて埋まらない。

わたしは今日も1人孤独に、喘いだ後に涙を流す。
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