「未来」を共有することって難しすぎる。


私は、仙台に住む大学3年生。2歳年上で、東京在住の彼氏がいる。
彼氏とは高校の部活で出会い、私が高校を卒業後に付き合い始めた。


私が大学1年の夏、2人で旅行をした。
お互いに初めての恋人で、初めてを捧げあった。
痛い怖いなんて思いが無くなるほど、彼の腕の中は幸せだった。

この人と結婚したい、漠然とそう思った。


私は大学2年生になり、彼は大学4年生になった。

彼の就職先は、都内にのみ支店がある企業に決まった。
大学生活を送った東京で一生生きていくつもり、らしい。

地元に帰ることも、私の住む仙台に転勤することも無い。

何よりも、私に就職先の相談をしたいとは言いつつも、それは決定事項の相談だった。
私からは反対されるなんて夢にも思っていない口ぶりの。

「元々遠距離恋愛だし、俺が社会人になっても変わらないよ。」

そうなのかもしれないけど、そういう事じゃない。

「ずっと大好き。大丈夫だよ。」

違う、そうだけど、そうじゃない。そういう言葉が欲しい訳じゃない。

私が欲しかったのは「ずっと大好き」なんて曖昧な言葉じゃない。
「自分たちの未来の具体的な話」がしたかった。


この会話から1年経った。

私達は相変わらず恋人同士だ。
彼の言った通り、お互い浮気をすることなく、平和に続いている。

彼が長期休みの時には車で仙台に来てくれるし、どんなに忙しくても彼から電話をかけてくれる。
彼は変わらず、私に「大好きだよ」と伝えてくれる。

専門職のため、彼の住む都内にも就職しようと思えば就職できる。

「就職どこでしようかな、都内にしようかな…」

勇気を振り絞って通話で言った。
未来の具体的な話に繋げるために。

「俺の事優先じゃなくてよくない？住みやすさとかもあるだろうし。」

特に躊躇わずに彼はそう答えた。

「ずっと言ってるけど、俺は遠距離でもずっと好きでいるからね。」


彼はずっと変わらない。

「好き」という気持ちを持ち続けてくれる。
「彼氏」で居続けようとしてくれる。
「恋愛」を続けようとしてくれる。

私はずっと変われない。

「好き」という気持ちを持ち続けて、将来の話に繋げられない。
「彼女」じゃなくて「妻」になりたいという話ができない。
「結婚」の話ができない。

優先しなくていいと言った理由も聞けない。
平和に過ごすために。


大学時代の貴重な2年間で彼女を作らず待ってくれた。
学生時代から今も変わらず、マメに連絡をくれる。
彼といるとものすごく安心する。

何よりも、初めての人と結婚できるなんて嬉しすぎる。

考えれば考えるほど、この人と結婚したいという思いが募っていく。
募れば募るほど、未来を共有できなくなっていく。

結婚という言葉が出ない。

重いって思われたくないの。
結婚とか勝手に考えてごめんね。

今日も都内の求人募集を見て、1人で溜息をつく。