私たちはもうすぐ、家族になる。
飼っていたうさぎが死んだ。

泣きながら電話した翌朝、彼は喪服姿でやってきた。

すごくブサイクだけどごめんね、と伝えていたけど、ボサボサの髪にパジャマ姿の私とは違ってさまになっていた。

こんな時でもかっこいいんだな、なんてぼうっとかんがえていると、腫らした目で膝を抱える私を私をぎゅっと抱きしめて、全然ブサイクじゃないよ、と泣きそうな声で言った。

コロナの自粛で会うのは1ヶ月ぶりだった。


彼と付き合い始めてから、飼い始めたうさぎだった。

辛いことも楽しいことも、全部一緒に見ていてくれたこだった。最初はなかなか彼に懐かなかったけれど、半年もすると彼の後をついて歩くようになった。

私たちは三人でよく近所の公園に散歩にも行った。私に似て彼のことが大好きで、自分のものだとマウントを取ったりもした。

セックスをしていると必ずベッドに飛び乗ってきて、邪魔をしてきた。何度おろしても乱入してくるので、へんてこな3Pになってしまって、二人でいつも笑っていた。


私たち二人とずっと一緒だったうさぎは、死んでしまった。

急に、なんの前触れもなく、いってしまった。

あんなにあったかかったのに、
冷たく固くなって、骨になってしまった。

彼に倣って喪服を引っ張り出してきたけど、
とても入りそうになかった。

彼と付き合う前、不健康でひどく痩せていたときに買ったものだった。調子に乗って細いの買いすぎたな、と愚痴ると彼が笑いながら手伝いを買って出る。

「だめだ、ファスナーこれ以上上がらないね」
「これはもう、ジャケット着て誤魔化すしかないかなぁ」
「Sちゃん、ずいぶん健康になったね」

荼毘にふしたあと、いつものようにベッドで二人丸まった。

あんなに泣いたあとなのに、キスをするとドキドキした。
今日はできないと思っていたけど、
どちらからともなく求めていた。

胸に顔を寄せると彼の鼓動が聞こえた。
抱き締めるとあったかかった。
声が、吐息が、彼をありありと感じさせた。

一ヶ月ぶりのセックスは気持ち良かった。
でも、邪魔してくるあのかわいいうさぎは、もういない。

この一瞬さえも当たり前なんかじゃないことを、
私たちは知ってしまった。

「ねぇ、Kくん。ずっと、あったかいままでいてね」

「うん」

「一人で冷たくならないでね。しわしわになって、よぼよぼになるまで、ずっとあったかいままでいてね。私より先に、いかないでね」

「Sちゃんもね。でも、もしSちゃんの最期の時は手を握ってていてあげる。僕も寂しくてすぐ会いに行っちゃうかもしれないけれど」

「ありがとう。でもきっと、ずっと、うんと先の話にしようね」


重ねた唇は、今まででいちばん、しょっぱくてあったかかった。

私たちは、もうすぐ、家族になる。
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