高速バスは走り始める。私はまた田舎へと帰る。
⚠この純猥談は浮気表現を含みます。
天気予報は昨日まで雨だったのに、デート当日、今日は嘘のように快晴だ。
高速バスに2時間揺られて到着した博多駅。
週末ということもあって人が多く、湿気を含んだ外気で体感温度は高い。荷物になるし傘持ってこなければよかったな。

今日は遠距離中の彼と二ヶ月ぶりのデートだ。
私が住んでいる田舎町では浮くようなお洒落をしてきて、可愛くなるために都会の美容院を予約し、集合時間の6時間前には博多に着いた。
自分でも自覚するほど浮かれていた。

でも別にいいじゃん。だって大好きな人との久しぶりのデートだもん。このくらい張り切らないと、この日のために頑張っていた意味無くなるもん。


そしてついに大好きな彼との待ち合わせの時間になった。
暑かったから汗をかいてメイクも髪も少し崩れてしまったが、彼の顔を見るとそんな事どうでも良くなるくらい嬉しくて、楽しくて。
遠距離恋愛の彼と過ごす時間は、会えない時間の分だけ楽しくて愛おしくて、充実していた。

「見て、綺麗だよ」
中洲の川に反射する街の光は今でも鮮明に記憶に残っている。
初めての浴衣デート、会えない時間の分だけたくさん撮った写真、繋いだ手の温もり。
重い荷物を当たり前に持ってくれるし、数えきれない程「可愛い」「愛してるよ」と伝えてくれる。
大事にしてくれる分、もっと私も彼のことを大事にしようと思った。


デートの最終日、彼を送る為に福岡空港へ向かった。
まだ少し時間があったからスターバックスでお茶をし時間を潰していた。
「荷物預けてくるから10分くらい待ってて」
「わかった、気をつけてね。寂しくない?」
「寂しい。けどすぐに戻ってくる」

そんな何気ない会話をして彼は席を離れた。
撮り溜めた写真を見返そうと自分のスマホを見ていると、一件の通知が私の幸せな気分を一気に不穏のどん底へと突き落とした。


「今Aくんと一緒にいますか?今日帰ってくると思ってたんですが時間が分からなくて。ケーキとご飯作って家で待っているので、聞いていただけると嬉しいです」


知らない女から私宛にインスタのDM。
手が震えて吐き気がする。
なのに何も考えられない。
怖い。気持ち悪い。
誰?

彼が戻ってくるまでの間のことは覚えていない。
ただ早くこの事実を共有したくて、戻って来た瞬間この事を伝えた。
「ねえ、どういうこと?」
彼は焦ったような、悟ったような、そんな感じで
「もう一泊できる?預けた荷物返してもらってくる」
そう言った。
その言葉だけで大体のことを察して何も喋れなくなった。


急いで取ったホテルへ移動して伝えられた事実は次のような事だった。

遠距離で寂しくなって魔がさしてTinderで出会った女(D子)と、出会った初日に体の関係を持ち、そのままセフレになった。
D子には彼女がいる事は伝えていなかったが、バレてしまった。
D子に「遠くの彼女より近くの私で良くない?」と言われていたが、曖昧に言葉を濁し続けてセフレの関係を続けていた。
私と会っている間、彼はD子に返信しなかった為、不安になったD子が彼女である私のインスタのアカウントを探してメッセージを送ってきた。


ショックだった。言葉は出てこないのに涙だけが出てくる。死にたい。
つい2時間前まで大好きで愛おしくて楽しかったから、感情が混濁して自分の考えもよくわからない。

その夜は沢山話した。沢山怒って、沢山泣いた。
気がつけば朝の4時だった。
話の収集もつかなければ、これからどうするのかも決められなかったから今日はとりあえず休もう。

そんなことを思いながら何故か体を重ねていた。体が許していた。
でも「好き」という2文字だけは口から出なかった。
D子ともこんな感じに彼に抱かれて、彼の好きな台詞を最中に言わせていたのかな。
寝る時にはもう何も考えられなかった。


次の日、それでも彼を許そうと決心がついた。

「信じてるから、もうしないでね。好きだよ」

彼に伝えた言葉はきっと自分自身を洗脳するように言い聞かせるように言っていたのだと思う。


お互い帰る時間が夜だったので、それまで一緒にいて一緒に街を歩いた。
でも何か違和感が付き纏う。

合わせられない目、虚無感、惨めさ。
昨日までの一緒に居られる嬉しさとか高揚した気分は全く無かった。

どうしようもなく涙が溢れた。
やっぱり、このまま付き合うなんて無理だった。
彼のことも、D子のことも、この事を流そうとした自分のことも許せなかった。


時間がすぎるのはかなり早く感じた。
帰りの時間まで、彼は私に沢山の言葉を伝えて来た。

どれだけ私のことが好きとか、自分を変えるとか、チャンスが欲しい、とか。
正直何度も揺らいだ。初めて見る彼の涙に情けをかけそうになった。

でも、許してしまうと自分も彼もダメになってしまうような気がした。
別れる時にもこんな人なのに好きすぎて別れたくない自分がいたのにも驚いた。
だけど、それ以外に私たちに道は無かったと思う。


泣きすぎて腫れた目はもうとっくに乾いてしまった。
脳内の中洲の夜景はモノクロームに変わってしまった。
余計な荷物だと感じていた傘が、変わらず今もここにあるということにさえ、今は安心感を得ている。

私の初めてを捧げた貴方を愛していました。
貴方と過ごした半年間は、小さな私の大恋愛でした。


高速バスは走り始める。私はまた田舎へと帰る。
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