#生まれてきてくれてありがとう #奥さんは世界一
10年前からずっと、彼のことが好きだった。
正直他に男なんていくらでもいるし、それなりに彼氏もできた。だけどやっぱり、私には彼しかいなかった。
彼は元々地元の友達だった。
クラス会の時、大勢の中にいると1人になりがちな私を心配し、声を掛けてくれたのがきっかけで仲良くなった。
彼のおかげで女友達もたくさん出来た。
だけど、何かが足りない気がしていた。
私には彼が足りないんだ、彼ともっと親しくなりたいんだと気付いた時、彼のことが好きになっているんだと自覚した。
彼はとにかくモテるタイプで、彼女が途切れることはなかった。
それに比べ冴えないタイプだった私になんて、見向きもしてくれなかった。
何度もアタックしたが、その度に玉砕。
「乃木坂にいそうなタイプが好き」と彼の好みを聞いて、変わってやろうと決意した。
ダイエットに励み、勉学に励み、メイクも勉強し、人見知り克服のために生徒会なんかもやってみて。
それなりにモテる女には成長した。手応えはバッチリだ。
迎えた成人式。彼と5年振りに会える日。
どんな素敵な男性になっているだろう。そんな彼に見合うくらい私も変わった。
もしかしたら、私に振り向いてくれるかも。そんなはやる気持ちを抑えながら同窓会の会場へ向かった。
「久しぶり」
ずっと待ちわびていた声が聞こえた。好きだった彼がそこにいた。
しばらく他愛ない話をしていると、不意に「俺実はさ、3月に結婚するんだわ」と彼が言葉をこぼした。
え?結婚?耳を疑った。
だって高校を卒業してそんなに時間も経ってないのに。彼は男子校に進学したはずなのに。一体いつ女性と出会うタイミングがあったんだろう。
「いやあ、実はさ、付き合ってる彼女がいて。妊娠してることが分かってさ。あいつだよ」
そう言って連れてきた彼女は、同じ中学の同級生だった。
とても乃木坂にいそうなタイプではない子だった。
呆然とする私に気付かず、彼は照れくさそうにペラペラと馴れ初めを話した。
中学の頃はそんなに仲がいいわけではなかったが、高校が近く最寄り駅でバッタリ再会したこと。
お互い男子校と女子校で出会いもなかったことから付き合うことになったこと。
付き合ってからもう3年ほどになること。
ああ、そうなんだ。
私が自分磨きにせっせと励んでいたとき、既に彼らはずっと2人で体を交わせて、愛を育んでたんだ。
「え、おめでとう、よかったじゃん」
自分の気持ちを押し殺して、必死に言葉を振り絞った。
あれから数ヶ月が経った。
同窓会の後、SNSで作ったばかりの彼のアカウントを見つけた。
最初の投稿には、「#生まれてきてくれてありがとう #奥さんは世界一」のハッシュタグがついていた。
拝啓 好きな人。
いや、正確には「好きだった人」だろう。10年分の恋には、もう終止符を打ったから。
どうぞ末永く、奥さんとお幸せに。
正直他に男なんていくらでもいるし、それなりに彼氏もできた。だけどやっぱり、私には彼しかいなかった。
彼は元々地元の友達だった。
クラス会の時、大勢の中にいると1人になりがちな私を心配し、声を掛けてくれたのがきっかけで仲良くなった。
彼のおかげで女友達もたくさん出来た。
だけど、何かが足りない気がしていた。
私には彼が足りないんだ、彼ともっと親しくなりたいんだと気付いた時、彼のことが好きになっているんだと自覚した。
彼はとにかくモテるタイプで、彼女が途切れることはなかった。
それに比べ冴えないタイプだった私になんて、見向きもしてくれなかった。
何度もアタックしたが、その度に玉砕。
「乃木坂にいそうなタイプが好き」と彼の好みを聞いて、変わってやろうと決意した。
ダイエットに励み、勉学に励み、メイクも勉強し、人見知り克服のために生徒会なんかもやってみて。
それなりにモテる女には成長した。手応えはバッチリだ。
迎えた成人式。彼と5年振りに会える日。
どんな素敵な男性になっているだろう。そんな彼に見合うくらい私も変わった。
もしかしたら、私に振り向いてくれるかも。そんなはやる気持ちを抑えながら同窓会の会場へ向かった。
「久しぶり」
ずっと待ちわびていた声が聞こえた。好きだった彼がそこにいた。
しばらく他愛ない話をしていると、不意に「俺実はさ、3月に結婚するんだわ」と彼が言葉をこぼした。
え?結婚?耳を疑った。
だって高校を卒業してそんなに時間も経ってないのに。彼は男子校に進学したはずなのに。一体いつ女性と出会うタイミングがあったんだろう。
「いやあ、実はさ、付き合ってる彼女がいて。妊娠してることが分かってさ。あいつだよ」
そう言って連れてきた彼女は、同じ中学の同級生だった。
とても乃木坂にいそうなタイプではない子だった。
呆然とする私に気付かず、彼は照れくさそうにペラペラと馴れ初めを話した。
中学の頃はそんなに仲がいいわけではなかったが、高校が近く最寄り駅でバッタリ再会したこと。
お互い男子校と女子校で出会いもなかったことから付き合うことになったこと。
付き合ってからもう3年ほどになること。
ああ、そうなんだ。
私が自分磨きにせっせと励んでいたとき、既に彼らはずっと2人で体を交わせて、愛を育んでたんだ。
「え、おめでとう、よかったじゃん」
自分の気持ちを押し殺して、必死に言葉を振り絞った。
あれから数ヶ月が経った。
同窓会の後、SNSで作ったばかりの彼のアカウントを見つけた。
最初の投稿には、「#生まれてきてくれてありがとう #奥さんは世界一」のハッシュタグがついていた。
拝啓 好きな人。
いや、正確には「好きだった人」だろう。10年分の恋には、もう終止符を打ったから。
どうぞ末永く、奥さんとお幸せに。