「東京に就職するまでの半年間だけなら、付き合ってもいいよ」
「私が東京に就職するまでの半年間だけなら付き合っても良いよ。どう?思ってたような良い人じゃないでしょ?」

ありふれた恋の終わりを踏みにじる、くだらない冗談から俺とりな先輩の交際は始まった。

週に2、3回集まって、デートとは到底呼べないような安い居酒屋での飲み歩き。

酔った勢いでヤッて、冷めたらタバコに火を灯す。
快楽と虚無が自分の中でぐちゃぐちゃになるけど、
恥ずかしげもなく俺の横で裸でタバコを吸う彼女を見て、
これで良かったんだって、勝手に自己肯定をする。
それでも少しだけ寂しくなる。

「俺たちってセフレなんすか?恋人ですか?」

ふと、寂しくなって聞いてしまった。

「恋人だよ。あの時それでも良いから付き合いたいって言ったのは君でしょ?」

「でも、やってる事セフレと変わんないっすよ。」

「目に見えないところで努力してるのになぁ〜。」

ニヤッと笑う彼女の顔は小悪魔で、もうそこからは何も聞けなかった。

最初は満たされなかったこの関係も4ヶ月が経つ頃には何も思わなくなっていた。

「君との付き合いももう4ヶ月経ったね。」

いつも通りの居酒屋デートのあとのラブホテル。
いつも通りヤッた後タバコを吸いながら、彼女はいつもと違うことを言った。

「どうしたんすか急に。」

「セフレと変わんないとか言いながらよくずっと付き合ってくれるなぁって。」

「そりゃ好きなんで。」

「君もなかなかの変わり者だね。」

いつも通りの小悪魔な笑顔にまた俺は何も言えなくなる。

「そういえば、いつまで敬語でいるの?私たちもう付き合って4ヶ月だよ?」

「出会って2年も敬語だったんすから4ヶ月じゃ抜けないっす。」

それもそうだね。って言いながら彼女は笑った。

「りなさんこそ、いつになったら俺の名前呼んでくれるんすか?」

ふーっとタバコの煙を吐きながら、思いついたように彼女は答える。

「君が敬語をなくせたときか、私が心の底から君を好きになった時かな。まぁあと2ヶ月しかないけど。」

「めちゃくちゃ無理難題じゃないっすか!」

あははっと笑う彼女を見ると、これが幸せなんだと思った。身体を交わらせることよりも、このくだらない会話が幸せで、
彼女と恋人でいる意味なんだという事を、気付かないようにした。
気付いてしまうと、きっと俺たちのセフレみたいな恋人関係の意味を否定してしまうから。


でも半年という期間はあっという間で、
あのくだらない冗談から始まった、恋とは到底呼べないこの関係も終わりが来た。

最後まで普通のデートじゃなく、居酒屋デートだった。
まぁでもそっちの方が俺たちにはお似合いかと受け入れられた。

「じゃあ半年間、こんな私を好きで居続けてくれた君に乾杯。」

最後まで彼女はふざけていた。
今日で半年記念日だ。

みんなが祝うはずの日が俺たちにとっては終わりで、
少しずつ少しずつ過ごした日が思い出になっていくのが寂しくてたまらなかった。

「帰りに公園で少しだけ話そっか。」

「はい。」

いつもと同じく、ほろ酔いになるくらいまで飲んで俺たちは店を出た。

いつもならいくラブホテルも、今日で恋人じゃなくなる俺たちには必要なかった。

公園のベンチにつくと、彼女は手を繋いできた。

「最後まで居酒屋デートだったね。ごめんね普通のデートじゃなくて。」

「良いっすよ。俺たちらしいと言うか、嫌いじゃなかったっす。」

「普通のカップルになってたら普通のデートして、遠距離になっても好きでいれたのかな。」

「らしくないっすね。別に俺のことも少し好きくらいでしょ。
遠距離とか無理なタイプだから半年って決めたんでしょ。」

「あはは、そうだね。ありがとね。私を好きになってくれて。」

「こちらこそ付き合ってくれてありがとうございます。」

「あと1分で12時だね。」

「そうっすね。」

まだ外は少しだけ寒く、俺たち以外には誰もいなかった。
まるでこの世界が俺たちだけのもののようだった。

「私実はこうきのこと好きだったよ。ずっと我慢してたんだよ。
でも遠距離になるし、そうなるとお互い辛くなると思ったからこれ以上踏み込めなかった。いつも何も出来なかったんだ。」


彼女の瞳から涙が流れた。
俺はそれを見るのを拒むように彼女にキスをした。

12時になった時、世界で1番純愛だった俺たちは他人になった。
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